科学コミュニケーターと楽しむノーベル賞2021

科学コミュニケーター竹下の推し研究~知られざるmRNAワクチン開発までの道のり

日本科学未来館では今年もノーベル賞イベントを行います!

科学コミュニケーターと発表の瞬間を迎えよう! ノーベル○○賞
https://www.miraikan.jst.go.jp/events/202110062125.html

今年のノーベル賞はどのような研究に贈られるのでしょうか。
生理学・医学賞チームメンバーの竹下が考える、今年の推し研究について聞いてみました!

生理学・医学賞チーム 竹下あすか

mRNAワクチンは、mRNAへの深い理解の結果として開発された

新型コロナ流行で一躍有名になったmRNAワクチン。これまでのワクチンはウイルスそのものやウイルスのタンパク質を使っていましたが、タンパク質の設計図であるmRNAを使う新しいタイプのワクチンです。急に現れた新技術のように見えますが、実は開発に至るまでには長い道のりがありました。

竹下:現在のmRNAワクチンの基礎となる研究は、カタリン・カリコ氏とドリュー・ワイスマン氏によって行われました(Kariko et al., 2005)。さらに、カリコ氏は自身が学位をとる1980年代前後からRNAの研究に従事していました。

mRNAワクチンの実現までに苦節40年。研究内容がなかなか認められなかったこともあったのでしょうか。

竹下:1990年に初めてmRNAを生体細胞に入れる治療が報告されました。しかし、炎症反応が強く出るうえに、せっかく入れたmRNAが免疫反応で排除され、期待するほどの効果は得られませんでした。その後、様々な生物を比較する中で、mRNAの構造が少しずつ異なっていることに気づきました。生物はこの違いを見て自分のmRNAか、他の生物のmRNAかを判断していたのです。ワクチンとしてmRNAが働くには、過剰な炎症反応を抑えつつ、免疫反応で排除されにくい状態にしなくてはなりません。生物によってmRNAの構造が少しずつ違うという発見は、mRNAワクチン開発に向けた重要な研究成果でした。

地道な研究の積み重ねがついに花開いたのですね。

竹下:mRNAワクチンは急に出てきた技術のように見えます。ですが、mRNAに対するこうした深い理解の積み重ねが、結果としてmRNAワクチンの実用化につながったのです。

竹下は他にも、カール・ダイセロス氏による光遺伝学の研究や竹市雅俊氏によるカドヘリンの研究も気になるとのことでした。今年のノーベル賞はどんな研究が受賞するのでしょうか。ぜひ私たちと一緒にノーベル賞を楽しみましょう!

<関連リンク>
●ニコニコ生放送
10月4日(月)17:30~19:00
【生理学・医学賞】ノーベル賞発表の瞬間をみんなで迎えよう@日本科学未来館
https://live.nicovideo.jp/watch/lv333364180
※登録等無しで即視聴可能

●Yahoo! THE PAGEの竹下の記事
「新型コロナ「mRNAワクチン」生んだ2つの発見 30年来の研究がつながる」
https://news.yahoo.co.jp/articles/1df271e9eeda3e3e5edbb2066d94ffa0393dbf78

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