東京スカイツリー®のつくりかた

皆さんが建築デザイナーだったら、どんな建築物をつくりたいですか?

ちょっと想像してみてください。

どんなに大きな建築物でも、設計図や模型から始まります。

どんなデザインで、それを丈夫なものにするにはどんな構造にすればいいのか──。これを考えなければ建物は建ちません。そして、それを考えるのが設計のお仕事。

7月10日のイベント「企画展『メイキング・オブ・東京スカイツリー®』関連イベント

つくりてからの生の声 第1回「設計」 ~東京スカイツリーのつくりかた~」では、東京スカイツリー®のデザインをされた日建設計の吉野繁氏、同じく構造設計をされた小西厚夫氏を迎えて、東京スカイツリー®の設計を体験するワークショップを行いました。参加者はおよそ100名。

ちなみに、東京スカイツリー®の100以上あるデザイン案の中で、現在のデザインをされたのが吉野氏。一方、東京スカイツリー®の世界初の制震構造として心柱を考案されたのが小西氏です(現在未来館では企画展の東京スカイツリー®ミニトークで心柱を紹介しています)。

ワークショップでは、竹ひご、ボール紙、発泡スチロール、輪ゴム、セロハンテープを組み合わせグループ毎にオリジナルタワーを作ります。

タワーの条件は3つ

  • 63.4cm以上の高さがあること
  • 他にはないようなオリジナルのデザインであること
  • 少々揺らしても倒れないこと

実際の設計の仕事では、タワーのデザインや構造を、模型を作って確かめます。例えば、あるデザインで模型を作ってみてそれが安定だと分かれば、そこから初めて具体的な構造を設計する段階に進めるのだそうです。

ワークショップ中、吉野氏と小西氏が参加者アドバイスをして回ります。上部に行くほど幅広くなる花火のようなタワー、星の形をしたタワー、インドの寺院のようなタワー・・・出来上がっていくそれぞれのタワーの斬新さにプロのおふたりも驚かれていました。

実はこのイベントの前に何人かの科学コミュニケーターでタワーを作ってみたのですが、これが難しい。30分の格闘の末に完成したのはぐらぐらのおでんタワーと斜めの砂時計タワーでした。参加者の作品は、デザイン的にも構造的にも私たちのものをはるかに上回っていたと思います。

完成したタワーの中から、吉野氏がデザイナーの目から見て3作品、小西氏が構造家の目から見て3作品、私が科学コミュニケーターの目から見て1作品を選び出しました。

デザイナーの吉野氏が選んだ作品は丸や曲線が特徴的なもの。非対称なかたちをした、柔らかな印象というのをポイントに選ばれたそう。

一方の構造家の小西氏が選んだ3作品は、ダイナミックなかたちのタワーや紙の素材の使い方が優れているなど、構造的発想の豊かなものでした。

そして私が選んだのは上部に輪のオブジェがついたタワー。飾りがついている建築物という発想が新しいと思い、選びました。

実際にこれらの作品を加震器で揺らし試してみましたが、1mを超える高さのものも含め全て倒れることなく安定である事が確かめられました。

吉野氏と小西氏の作品もお披露目。写真で左側が吉野氏作品、右側が小西氏作品。吉野氏はデザイン、小西氏は構造、おふたりのそれぞれの目の付け所がそのまま表れている作品だと思いませんか?

今から6年前、東京スカイツリー®は60cmの高さの模型から始まり、何度も何度も議論と試行錯誤を重ねて、今ではその1000倍もの高さを持つ実物のタワーが作られている。この過程を経てできた東京スカイツリー®を、今日はちょっと身近に感じてもらえたと思う。来年完成を楽しみにしていてください。――おふたりからこんなメッセージをいただいてイベントは終了しました。

完成した作品の数々。今まで見た事もない斬新なタワーを見ながら、「今日の参加者の中から、もしかして将来の建築デザイナーが生まれるかもしれない」と胸をふくらませた私でした。

皆さんが建築デザイナーだったら、どんな建築物をつくりたいですか?

ちょっと想像してみてください。

動画(MiraikanChannel)

イベントの模様はこちらでご覧ください。

関連サイト
イベントの報告(未来館のホームページ) (リンクは削除されました)

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