そうだ!川の流れに沿って、石の形がどう変わるか調べよう!
小学校5年生の夏休み、家族で山に遊びに行った帰り道のことです。私は両親に頼んで川の上流、中流、下流で車を止めてもらい、石を拾い集め、それをまとめて自由研究にしました。
この頃は自由研究といっても何をしたらいいかさっぱり分からず、家族の外出に合わせて1日でできるものを考えました。結果は予想通り上流ではゴツゴツした石が多く、下流に行くほど丸く小さくなっていました。これらを模造紙にまとめ、「川の流れと石の関係」というタイトルで提出しました。結果は「科学研究物・発明工夫展」という地元の科学展の優賞。成果が認められたのがうれしくて、それ以降中学2年生まで毎年出展し、賞を頂くことができました。
山口県秋吉台の鍾乳洞で水を採取し、この年は水質検査をテーマにした
今思えば、自由研究の成功体験が科学の道に進む大きなきっかけになったのだと思います。
一方で、この頃の自由研究をもっと本格的にやっていればよかったのにと今は思います。
私は大学で研究を志しましたが、実際の研究は小中学校の自由研究と違い、本当に苦労の連続でした。高校までに勉強してきたもののほとんどは答えのある問題ばかりでした。答えのない・分かっていない問題にチャレンジすることがこれほど大変なことだとは思いもしませんでした。自由研究では答えのない問題に小さいころからチャレンジできるチャンスだったのに、私は答えが予想できているものや、調べれば何かしら成果が出るものばかりやっていたように思います。
それでも科学コミュニケーターになった今、大学や企業で研究をやっていた経験が役に立っていると思うことがあります。それは研究を通して得た専門知識ではなく、研究の考え方です。
展示フロアでの日々のお客様との対話にも、イベントの企画・実施にも正解はありません。少しでもよいものにするためには仮説を立てて実践し、結果からまた考えるという試行錯誤の繰り返しが必要です。実はこれ、研究のプロセスと全く同じなのです。研究を通してこのやり方が身についたことが、生きる上で大切な土台となっているように思います。
ビジネスではPlan・Do・Check・Act(PDCA)が重要と言われますが、これも研究のやり方と共通していますし、仕事以外でも応用できます。例えば誰かが悲しそうにしていたら、その人が悲しんでいる理由を考えます。そして励ますための手段を考えて実行に移します。励ましてもまだ悲しんでいるという結果になったら、悲しむ理由が別のものだったかもしれないと考え、また次の手段を考えます。仮説を立てて検証し、得られた結果から考察する。このやり方は仕事でもプライベートでも欠かせないものではないかと感じています。
実は教育の現場でも近年このような取り組みが重要視されるようになっています。文部科学省が出す学習指導要領には、総合的な学習の時間において、「自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育成すること」が目標の一つとされ、そのために探求的な学習が繰り返される必要性が謳われています。
夏休みの自由研究は、子どもの自由な発想で探求活動ができる絶好の機会で、夏休みならでは時間的な余裕もあります。これを読んで下さっているお子さんをお持ちの皆さま、お子さんに自由研究で答えのない課題にチャレンジさせてみるのはいかがでしょうか?
未来館ではクラブMiraikanの小学校5・6年生の会員を対象に、今夏「自由研究から学ぶ研究のキホン」 (リンクは削除されました)というプログラムを試行的に実施します。これまでの多くのイベントでは、私たちスタッフが予め設計した道に沿って参加者に画一的な体験を提供してきました。しかし今回のイベントではそれぞれの個性と興味をもとに、参加者自身が道を作り出していく作業のお手伝いをしていく予定です。まだ定員に若干の余裕があり、募集期間を7/11(木)までに延期しました。お子さんに興味があるようでしたらぜひご応募ください。
また、これには参加できないという方も、ほかの科学館や博物館、NPOなどがさまざまな自由研究のイベントを実施しています。ぜひ探してみてください。NPO法人日本サイエンスサービス (リンクは削除されました)が提供する以下のサイトでは自由研究のやり方や成果の発表先など詳しく知ることができます。
科学自由研究.info (リンクは削除されました)
この夏、たくさんの子どもたちが一生懸命自由研究に取り組んでくれることを願っています!
関連リンク
モニター募集! 自由研究から学ぶ研究のキホン (リンクは削除されました)
科学自由研究.info (リンクは削除されました)