みなさん、こんにちは。
今日もいいうんこ、でましたか?
今回はうんこの移植、「糞便移植」をご紹介します。
その名の通り「他人のうんこを患者の腸内に移植」する技術です。
げっ!他人のうんこを体内に入れるの!?
人間、自分のうんこを眺めることはできても、
他人のうんこともなると、相当ハードルが高いのではないでしょうか。
しかもそれを体内にいれるなんて!!
…なぜ、そんなことをするのでしょう?
ポイントは腸内細菌です。
ここでうんこブログ2回目の記事「うんこのなかみ」 (リンクは削除されました)のおさらいです。
うんこのほとんどは水分ですが、その次に多いのが腸壁細胞の死骸、ついで腸内細菌の死骸で10~15%を占めています。
死骸といいつつも、まだ生きている腸内細菌も多く、
コアラやウサギは自分のうんこを赤ちゃんに食べさせることで、
親の腸内細菌を子どもに与えているともいわれています。
みなさんがよく知っている腸内細菌といえば、大腸菌でしょうか。
プールでもよく大腸菌検査をしていますし、一方で、遺伝子の研究ではよく使われている細菌です。
でも、私たちの腸内に住んでいる細菌はそれだけではありません。
大腸菌以外にも、ビフィズス菌の仲間、乳酸菌の仲間など、1000種ほどの菌が暮らしています。
この菌のグループをおおざっぱに分けると、免疫力を高めたりビタミンをつくったりする善玉菌、発がん物質や有害な毒素をだす悪玉菌、優勢な菌の味方をする日和見菌の3つのグループになります。
どの菌の勢力が一番強いかで、私たちの健康状態は左右されてしまうのです。
いま、ここに慢性的な下痢で苦しんでいる人がいます。
便を調べてみると、善玉菌がほとんどいなくて、悪玉菌とその尻馬ににった日和見菌が優勢です。この勢力を塗り替えることが治療に必要だとわかっていますが、なかなかうまくいきません。
そこで糞便移植です。
健康な人の便にいる腸内細菌グループを患者の腸に移植し、
腸内細菌の勢力を塗り替えてしまおうというというのがこの治療の狙いです。
実際やってみると…特定の疾患の患者には高い効果があることがわかりました。
たとえば、クロストリジウム-ディフィシル感染症という病気があります。
クロストリジウム-ディフィシルは抗生物質が効きにくい腸内細菌です。
他の感染症治療の抗生物質投与により、善玉菌、悪玉菌ひっくるめて手薄となってしまった腸内でどんどん増え、毒素を出し、下痢を引き起こします。
この病気に対しての糞便微生物移植実験がアメリカで行われ、米国消化器学会は有効だとして、早期承認を求めています。
でも、日本ではまだこの治療が行われていません。
何故でしょう?
それは、うんこは一方で、感染症の原因でもあるからです。
うんこの処理を適切にしなかったばかりに、感染症が広まり、ばたばたと人が亡くなっていった例はたくさんあります。いくら健康な人のうんこといえども、感染症のリスクはゼロではありません。
このリスクを回避するためには、腸内細菌についてきちんと調べて、有効な菌だけを取り出したり、あるいは菌がつくる有効物質だけを取り出したりする技術が必要になります。
しかし、腸内細菌が体内で何をやっているか、実はまだほとんどわかっていません。
何しろ腸内には1000種近い菌がいます。
さらに、腸内細菌は「偏性嫌気性菌」という、空気があると培養できない菌がほとんど。
さらにさらに、腸内細菌はお互いに助け合いながら生きているような面もあり、単一種だけをとりだしても本来の活動の様子を見せてくれなかったりします。
しかし、この腸内細菌の様子が一気にわかる技術が開発され、現在つぎつぎと腸内細菌の世界が明らかになってきました。その技術とは…
てれれれってれーーー
次世代シークエンサー!
これは、うんこの中に含まれているDNAをまるっと解析し、ゲノム比較によって菌の分布や役割を調べる技術。もちろん、細菌が生きていようが死んでいようが、DNAさえとれれば大丈夫です。
この技術により、日本人と欧米人の腸内細菌の違いや、福田さんが苦しんでいるクローン病 (リンクは削除されました)やアレルギー疾患のカギも腸内細菌が握っているかも?という事がわかってきました。
また、人種やくらし方によっても住んでいる腸内細菌がちがうということもわかってきたのです。
道理でアメリカで大絶賛のダイエット法が効かないはずだわ…
このことによって、糞便移植がより安全で有効な、うんこをもとにしたテーラーメイド医療が可能になるかもしれませんし、あるいは日本人にあったダイエット法が開発されるかもしれません。
あなたが毎日だしているうんこ。実は人類の未来をかえる可能性を大いに秘めているのです。
それでは明日もいいうんこがでますように!
さようなら