30歳のA子は、付き合って3年になるパートナーとの結婚を考えている。既婚者である姉のすすめで婦人科検診を受けたところ、医師から『早発閉経の疑いがある』と告げられた・・・
40歳未満で閉経する「早発閉経」。女性の100人に1人の割合で発症する疾患です。あなたや、あなたのパートナーもA子さんのような告知を受ける可能性があります。
7月12日(土)~7月27日(日)の間、未来館の5階「エンドクサ」で掲載している設問です。7/18(金)までの6日間で、すでに70名を超える来館者の方からご回答をいただきました。
途中結果では、
(a) 知っている(聞いたことがある) 20人
(b) 知らなかった 51人
コメントでは「発症率の高さに驚いた」という声が多い印象です。寄せられたご意見をいくつかご紹介します。
まずは「(a)知っていた」と回答された方では、
「だから早く子供を産みました」 36歳・女性(①)
「自分もこの病気と診断を受けた。あと一人子供ほしかったなー!」 41歳・女性(②)
「不妊は女性にとって大変つらい問題なので、男性にも知ってほしい」 22歳・女性(③)
また、「(b) 知らなかった」という方からも、
「自分の身近でも起こりうるので、考える必要がある」 22歳・男性(④)
「子供の教育の中で、そういうことも教えてほしかった」 34歳・女性(⑤)
「防げるのか?治療できるのか?原因は?」 22歳・女性(⑥)
ここでは、簡単ではありますが「早発閉経」という疾患についてご紹介したいと思います。まず、前提として3つ
(1)卵子は「原始卵胞」の中に入っている。原始卵胞が成熟すると,排卵される。
(2)原始卵胞は、胎児期につくられ、卵巣に保存されている。
(3)原始卵胞は、年齢とともに減少していく。
つい最近まで、卵子は毎月、0からつくられていると思っていた私。卵胞はすでにつくり終えられていることが、まず驚きでした。精子は新たにつくられていますが、卵子には限りがあるのです・・・
まだ30代なのに、もう閉経!? 「早発閉経」とは?
早発卵巣不全、通称「早発閉経」は40歳未満で原始卵胞が急激に減少し、無月経となる疾患です。( 混同されやすいですが、45歳未満の閉経を指す早期閉経とは異なる疾患です。)
不妊症の中でも患者数は多く、発症率は女性100人に1人といわれています。初期症状は月経不順で、ストレス性との区別がつきにくいため、軽視されがちです。
「自分も早発閉経になるのかと思うくらい生理不順なので心配。妊娠はしたが・・・」 25歳・女性(⑦)
卵子は減る一方・・・問題は、そのスピード
卵子の源である原始卵胞は、胎児期につくられ、出生時の数は約200万個。しかし、新たにつくられることはなく、減少の一途を辿ります。原始卵胞の残数が1,000個程度になると、卵胞が成育しなくなるので、排卵がなくなります。このときが閉経となり、日本人の平均年齢は51歳。しかし、早発閉経が進行すると40歳未満で閉経し、自然には自らの卵子で妊娠することが難しくなります。早発閉経(早発卵巣不全)は、卵巣機能の低下、すなわち、卵巣の老化と言い換えることもできるのです・・・
「自分もそうではないかと非常に心配している」 25歳・女性(⑧)
「自分もいつかそうなる可能性もあるのだと思うと怖い」 16歳・女性(⑨)
私も初めて早発閉経を知ったとき「自分は大丈夫」と根拠もなく思いたい反面、自分の身体の中に、いつ落ちきるか分からない砂時計があるような、不安感が募りました。なにか手立てはないのでしょうか。
血液検査で卵巣年齢を知る!
実は、採血を調べてもらうだけで、自分の卵巣にあとどのくらいの余力があるのか(卵巣予備能)を知ることができます。それがAMH検査で、近年、卵巣年齢の指標として注目されている評価法のひとつです。
AMHは、アンチミュラー管ホルモンの略称。成育の初期段階の卵胞から分泌されるホルモンであることから、AMHの値が高ければ、卵巣内にある卵胞数が多く、値が低ければ、卵胞数は少ないと推測されます。年齢とともに卵胞数は減少するので、減少傾向から卵巣年齢を予測することができるのです。
AMHの値は、月経周期によらず、いつでも血液検査で調べることができます(周期によって数値は異なります)。費用は自己負担で、産婦人科の医院によりますが、7,000円~1万円前後が相場のようです。私も受けてみましたが、採血のみで結果は約1週間後にわかりました。
ただしAMH値で、直接的に卵巣に残る卵胞の正確な数がわかるわけではありません。また、妊娠する上では、卵子の「質」も重要となるため、AMHの値が低くても(卵胞の数が少なくても)、卵子の質が良ければ妊娠に結びつくこともあります。AMH値の解釈には注意が必要です。
AMH値が高すぎる場合は、排卵されずに卵巣内に卵胞が溜まってしまう「多のう胞性卵巣症候群」が疑われます。いずれにしても、AMH検査は、簡便に、卵巣の状態を知る手段といえます。
「自分もそうではないかと不安になった。検査をうけたい」 21歳・女性(⑩)
「自分もなる可能性があると知り、驚きました。20歳になったら検査をうけたい」 15歳・女性(⑪)
治療法はあるの?
すでに卵巣機能不全が進んでいる場合、病気そのものを完治することは難しく、いの妊娠をあきらめるか、提供卵子を受けるのに踏み切るか......(ただし提供卵子の使用に関しては、法の整備が進んでいないのが現状です)。こうした状況のなかで、新たな治療法としてが注目を集めているのが、卵巣内にわずかに残る卵胞を薬剤により活性化する方法です。2013年に開発されたこの方法で、すでに赤ちゃんが誕生しています。
(管理人注:小島さまよりいただいたコメントを受け、8月1日に直前の段落の表現を改めました)。
【参考】2013年度 科研費NEWS VOL.4
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/22_letter/data/news_2013_vol4/p16.pdf (リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)
8月2日(土)、日本科学未来館では、この新たな不妊治療法を開発された、聖マリアンナ医科大学の河村和彦先生をお招きし、早発閉経を中心に生殖医療について、直接お話を伺うイベントを開催します。このブログでは書き切れないことや、皆さんの疑問や思いを共有する場にしたいと考えています。また、ニコニコ生放送でのライブ中継や、イベント後にYouTubeでアーカイブ映像を公開する予定です。
「早発閉経によって妊娠できなくなる可能性があること、調べる方法があることをより多くの人が知るべき」 29歳・女性(⑫)
「多くの人に知ってもらうことで、それぞれが新しい考えが生まれればと思う」 29歳・女性(⑬)
「不妊治療の経験者です。卵子凍結の技術も発展途上ですし、早発閉経の予防などの研究がすすむことを望みます」 41歳・女性(⑭)
子どもを産む・産まないは個人の判断です。ですが、知らずに選択することと、知った上で選択することの意味合いは大きく変わると思います。ひとりでも多くの方のご参加をお待ちしております。
「娘がいるので、早く解決策がみつかるといいです」 52歳・女性(⑮)
「人口減少ぎみの世の中。原因をつきとめて、産みたい人に希望をもってもらいたいですね」 66歳(⑯)
ご紹介したご意見の直筆 (文中の番号と対応)
コメントをお寄せくださった皆様に、この場を借りて心よりお礼申し上げます。引き続き、7/27(日)まで、弊館5階「エンドクサ」にて、皆さまのご意見を募集しております。
イベント案内
サイエンティスト・トーク 『女性100人に1人!意外と知らない「早発閉経」 ~私と、家族のために、今知っておきたいこと~』
講師: 聖マリアンナ医科大学病院 生殖医療センター長 河村 和弘 先生
日時:8月2日(土)14:30~16:00(15:30~16:00 質疑応答)
場所:日本科学未来館 1階コミュニケーションロビー
参加方法:参加費無料、直接会場にお越し下さい。
詳細はこちらをご覧ください。https://www.miraikan.jst.go.jp/event/1407151617017.html (リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)
■ 参考資料
・i-wish.. 「ママになりたい 妊娠しやすいからだづくり2012」
・マイナビニュース コラム「妊娠を科学する! - 男も知っておくべき高齢出産時代の妊娠のための基礎知識」
https://news.mynavi.jp/column/miraikan_ninshin/001/ (リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)