先日、国立国際医療研究センターの堀成美氏を未来館にお招きし、「エボラ出血熱から身を守る方法」というテーマで、ニコニコ生放送の収録が行われました。日本科学未来館からは、古澤輝由、詫摩雅子が出演。
WHO(世界保健機構)によると、エボラ出血熱の感染者数は15935人、死亡者は5689人と報告さています。(11月26日時点)。いまだに西アフリカでは蔓延は続いており、予断を許さない状況です。人の移動がある以上、日本に感染者がはいってくる可能性も考えられます。
その時、我々はどのように行動したらいいのでしょうか?
番組の冒頭で、堀先生が
「感染病対策で一番重要なことは一次予防」
と述べていました。
一次予防とはどのようなことなのでしょうか?
堀先生がおしゃっていたことは、
1. ワクチン接種を受けること
2. ウイルスに関する正しい知識を持つこと
残念ながら、エボラ出血熱に効くワクチンはまだありません。
すると、私たちができることは、2.のウイルスに関する正しい知識を持つことになります。前回のブログでもお伝えしましたが、エボラ出血熱は正しい知識を持って対応すれば、必要以上に怖がらなくてもいい病気です。堀先生のお話をきけばきくほど、その意味がよくわかりました。番組であげられた堀先生のお話をもとに、エボラ出血熱に関するQ&Aをご紹介させていただきます。
エボラウイルス基本情報Q&A
Index
Q1. エボラ出血熱ってどんな病気?
Q2. これまでもエボラウイルス病の発生はあった。どうして今年は大流行した?
Q3. どのような症状か?
Q4. どのようにして感染するのか?
Q5. エボラは蚊でうつるか?
Q6. エボラウイルスの対策とは?
Q7. 感染者が日本にはいってくる可能性は?
Q8. 感染者がでた場合どのように対応すべきか?
Q9. 保健所ってどこにあるの?
Q10. エボラウイルス病に関する情報はどこで集めればいいか?
Q11. 旅行者ができる対策は?
Q1. エボラ出血熱ってどんな病気?
エボラウイルスによりひきおこされる感染症。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)によると、コウモリなどの野生動物がエボラウイルスを保有しており、感染した動物の血液などに触れることで人に感染します。そこから人から人への感染が起こります。出血熱という名前から、血が大量にでるようなイメージですが、今回のケースでは出血しないことも多く、現在では、エボラウイルス病と言われているようです(以下、エボラウイルス病と表記)。
Q2. これまでもエボラウイルス病の発生はあった。どうして今年は大流行した?
諸説あるため、詳細は今後わかってくるようです。可能性としてあげられることは、これまでの流行はアフリカの中央部であったが、今回は西アフリカで発生したため、住民も医療関係者もエボラウイルス病だと思わなかったという点が挙げられています(アフリカ大陸は、私たち日本人が漠然とイメージするよりもはるかに広いのです!)。 また、都市部でも広がってしまったことが一因とされています。エボラについて知られていなかったために医療従事者が支援にいったとしても、流行地域に医療支援が受け入れられないこともありました。そのため、エボラウイルス病で必要な対策をとることが難しく、今回のような大流行となってしまったことも原因にあげられています。
Q3. どのような症状か?
高熱、下痢、嘔吐といった症状がまず現れ、進行すると発疹、吐血といった症状があらわれます。
Q4. どのようにして感染するのか?
症状のでている人の体液から感染します。体液とは、排泄物、血液、汗、母乳、吐物などを指します。その体液に含まれるエボラウイルスが、粘膜や傷口にはいりこむことで感染します。インフルエンザウイルスのように空気感染はしません。また、発熱の症状だけならば、まわりの人にうつる心配はまずありません(採血や点滴をする医療関係者は注意が必要です)。堀先生のお話によると、「汗や唾液にもエボラウイルスが含まれているが、汗や唾液から感染が広がったという報告はされていない。普通に生活している分には、感染する可能性は低い」とのことでした。電車の手すりやつり革など、大勢の人が触る物からの感染を気にする方が多いようでしたが、エボラの場合はそれほど心配なさそうです(とはいえ、感染症はエボラだけではないので、小まめに手を洗い、汚い手で目をこすったり、鼻をほじったりするようなことがないようにしましょう)。一方で、症状のでている人の血液や排泄物に触れることは非常に危険であるとされています。アメリカの例では、アフリカで感染した人がアメリカで発症し、この人からの感染 (国内二次感染)が起きました。しかし、新たな感染者はいずれも医療従事者で、家族や友人などは無事でした。
Q5. エボラは蚊でうつるか?
CDCによると、蚊を介してエボラウイルスに感染することはありません。
Q6. エボラウイルスの対策とは?
感染している人を隔離し、点滴や解熱剤などで体力が落ちないような処置がとられます。セネガルやナイジェリアなどの国でもエボラウイルス病の感染者が発生しましたが、感染者と感染が疑われる人をいち早く隔離し、対策を行なったことでエボラウイルス被害を拡大させずにしました。ナイジェリアは20人の感染者が現れましたが、新しい感染者は出ないまま1カ月が経過し、終息しました(ただし、いつまた、流行している国から持ち込まれるかわからない状況です)。
Q7. 感染者が日本にはいってくる可能性は?
現在、西アフリカから日本への直行便はありません。しかし、欧米やアジア等の第三国を経由して日本に入国する可能性はありえます。日本の空港では、具合の悪い人は検疫で申告することになっています。また、西アフリカに渡航歴のある人は、ウイルスの潜伏期間である21日間は毎日体温を測り、報告するようにお願いされています。
Q8. 感染者がでた場合どのように対応すべきか?
厚生労働省が感染の疑いがあった場合の対応フローを発表しています。空港で感染の疑いがあることがわかった場合、患者の同意のもと第一種感染症指定医療機関に搬送されます。エボラウイルス病が発生している国から帰国した後、自宅で具合が悪くなった場合は、各地にある保健所に連絡することになっています。
Q9. 保健所ってどこにあるの?
全国各地にあります。保健所の開庁時間は日中のみとなっているため、夜間の場合は各自治体にある医療ネットを使い、受け入れ可能な病院をお探しください(医療ネットの一覧は厚生労働省のHPに記載されています)。東京都の場合、「ひまわり」が該当します(ひまわりの場合、24時間コールセンターで対応しています。)
Q10. エボラウイルス病に関する情報はどこで集めればいいか?
厚生労働省のHPで、エボラウイルス病に関する情報がまとめられています。また、WHOやCDCのHPにも情報が掲載されています。
厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/ebola.html(リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)
WHO: https://www.who.int/csr/disease/ebola/en/(リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)
CDC: https://www.cdc.gov/vhf/ebola/(リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)
Q11. 旅行者ができる対策は?
流行している地域には、どうしても急ぎでいかなければならないというわけでなければ、行かないようにすることをオススメします。現地で具合が悪くなった場合は、すぐに医療機関にかかるようにしましょう。またエボラウイルスに限らず、感染症に関する情報は、厚生労働省検疫所FORTHと外務省の海外安全情報をご参照ください。堀先生は「向こうでのレストランやお買い物の情報をチェックするように、安全情報に関してもチェックしてくださいね」と呼びかけていました。
厚生労働省検疫所FORTH: https://www.forth.go.jp/(リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)
外務省の安全情報:https://www.anzen.mofa.go.jp/(リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)
以上、エボラウイルスQ&Aについて紹介させていただきました。
Q3でも紹介しましたが、エボラウイルスは症状がでている人の体液に直接触れることがなければ感染することはなく、普通に生活しているだけでは感染する可能性が低いのです。また、メディアによると、アメリカで治療うけたケースでは、11人中9人が助かっています。彼らのほとんどが医療従事者で、早期に適切な治療を行なったことが功を奏したと考えられています。感染したとしても、早期に治療を行なえば治る見込みが高い病気だともいえます。
ここまでの情報をまとめると、
感染する可能性が低いこと、
感染したとしても適切な治療を行うことで助かる見込みが高くなる病気であるということです。
それでも、やはり怖い感染症ではあります。
番組で古澤がいっていたように、
「状況を知った上で、正しく恐れること」
が必要なのではないのでしょうか。
もちろん、油断は大敵です。
番組の終盤では、堀先生が
「普段から感染症対策を行っておくことが、いざという時のために重要」
とおっしゃっていました。エボラウイルスに限らず、冬にはインフルエンザとノロウイルスが猛威をふるいます。これらの感染症にかからないためにも、堀先生がおっしゃっていた3ポイントをお伝えします。
1. ワクチンがあるものはワクチン接種を受ける
2. 手洗いを徹底する
3. ウイルスがたくさんいるような人通りの多いところには極力いかない。
基本的なことに見えるかも知れませんが、感染症対策に一番効果的なことは予防になります。いざというときのためにも、この冬をのりこえるためにも、しっかり予防を行っていきましょう。
島国の日本の場合、新しい感染症は外国から入ってくる、または、動物から感染するという例が多いのです。このことを考えると、とくに外国では「むやみに野生動物には触らない」も重要でしょう。また、外国からの人が集まる空港などで、誰かがいきなり吐いた場合にはどうすれば良いでしょう? 堀先生のお話では「高熱や嘔吐は、心筋梗塞などと違い、1分1秒を争うことはない。自分で助けようとせず、空港スタッフを呼ぶなど、専門家に任せましょう」ともお話ししていました。親切心から、つい寄り添ってしまいそうですが、すぐにスタッフを呼び、今、人が来るので安心してくださいと、お声がけをするのが良いのかも知れません。
これから寒い冬がやってきますが、
上記のことに気をつけることで、感染症のリスクをグっと減らしていきましょう。
もっと、感染症のお話が聞きたいという方は、ぜひ未来館までお越しください。
科学コミュニケーターの古澤と樋江井がお待ちしております。