適度なスルー・・・そして散乱!!!植物の光合成戦略!(イベント結果発表もあるよ!)

先日武田が紹介していた5月の大型連休のみどりイベント、

今日はその中の一つ「光合成」をテーマにしたワークショップについて、

その内容と、皆さんに挑戦してもらった「あるチャレンジ」の結果を詳しく紹介したいと思います。

あ・・・タイトルの謎が知りたい方は一気に4.に飛ぶことをオススメします!

1.光合成ってなぁに?

私たちは食べることで生きていくエネルギーを確保していますが、植物は光、水、二酸化炭素を使ってエネルギーをつくり出すことができます。

これこそが「光合成」!今回はこの光合成に必要な要素の中でも「光」に注目しました。

2.光合成への工夫を探れ!

植物の部位の中でも光合成を活発に行っているのは「葉っぱ」。つまり、この葉っぱをどのようにつけるかが、植物の生存にとってはかなり重要なのです。

私たちも食のこととなると目の輝きが変わりますが、植物にとってはそれが光になるわけです。

ですから、光を手に入れるために、それはもう必死なわけです。

工夫その1

例えば、ひまわりの葉っぱはどうなっているでしょう?

葉っぱは互い違いに生えていて、重なりを防いでいます。

写真提供:(株)サカタのタネ

工夫その2

では、もっと大きな木はどうでしょうか。

茶色い幹に緑の葉っぱがモリモリ!!木のイラストでも、そんな姿をよく見かけますよね。

でも、内側を覗いたことはありますか?

外から見るとあんなに葉っぱがあったのに、中は・・・スカスカっ!!!

ひまわりにしても木にしても、光が届かなければ、せっかくエネルギーを費やして作った葉っぱが無駄になってしまうので、効率良く葉っぱを付けているんですね。(すごいなぁ・・・)

3.ワークショップの「あるチャレンジ」とは!?

植物が光を手に入れる工夫を知った上で、光合成の効率を最大限に上げた植物を「デザイン」してもらいました。これがこのワークショップのタイトルでもある「光合成チャレンジ」の全貌です。

使うのは幹に見立てた発泡スチロールと造花の葉っぱ。

ルールは簡単。制限時間3分で、真上から見た時に枠内(30cm×30cm)の葉っぱの面積が一番大きい植物をデザインした人が勝者となります。

こちらのお客様は親子で真剣勝負!

皆さんの作品を真上から撮影し、イベント終了後に画像解析ソフトを使って面積を出しました。

期間中の参加者は150名!

見事、150名の頂点に輝いたのは・・・・・・(ドキドキ)

こちらの作品です!

しょっちさん、おめでとうございます!!!!!!

・・・え?比較対象が欲しい??

そうですよね、そうですよね。

ではここで、同僚の科学コミュニケーター大渕の作品を見てみましょう。

これだと86位でした。(ぶっちーなかなかの健闘。)

これにて結果発表は終了ですが、このワークショップに参加していただいた全ての皆さんに改めて御礼申し上げます。

4.イチオシ!葉っぱ中での工夫!!

実は今年度のみどりの学術賞受賞者のお一人、寺島一郎先生の研究でも「光合成」がキーワードになっていました。

今回のワークショップでは植物の工夫として「葉っぱの付き方」に焦点を当てましたが、東京大学の寺島先生は「葉っぱの中」でどのような工夫が行われているのかを明らかにしてきました。

ここで、寺島先生の研究から一枚の写真を紹介します。

写真提供:矢野覚士 博士

これは葉っぱの断面図。よく見ると写真の上半分(葉の表面側)と、下半分(葉の裏面側)で細胞の形が違うのが見えますか?

細長い細胞が規則正しく並んだ上の部分を「柵状組織」、不定形の細胞が不規則に並んだ下の組織を「海綿状組織」といいます。言葉は分かりましたが、この構造がなぜ光合成の効率UPにつながるのでしょうか???

先ほどの写真をイラストにした図を見ながらお話していきましょう。

日光は上から降り注ぐので、1枚の葉の中で、表面に近い部分ほどたっぷりと光を受け、内部に進んで裏面に近づく程、届く光の量は少なるのです。もし、葉の細胞が規則正しく並んでいるとすると、図の左のようになります。

光合成の担い手である葉緑体は、葉の表面から裏面まで、まんべんなく散らばっているので、上層の葉緑体が日光を吸収すればするほど、下層に届く日光はさらに減ってしまいます(図左側を参照)。

こうなると、上層の葉緑体はフルで働き、下層には働かない葉緑体ができてしまいます。それでも、上層の葉緑体が吸収した光を全て使ってくれればいいのですが、残念ながらそうはいきません...。

光合成は二酸化炭素の濃度や気温などの条件も整わないとフル稼働はできないので、光だけが豊富にあっても使い切ることができずに、熱として捨ててしまうのです。

さらにいうと、上述の環境条件が揃っていても、光合成をするために働く「酵素の量」などによって葉緑体の光合成能力には限界があるので、条件さえ揃えば光の量に応じて無限に光合成量が上がる、というわけではないのです。

これでは、せっかくキャッチした光を活用しきれず、葉っぱ全体の光合成効率も下がってしまいます・・・。

大切なのはどこの葉緑体にもまんべんなく光があたることなのですが・・・

うーん、どうしたものか・・・

こんな悩みを解消するのが、先ほどの表裏での構造の違いなのです!

「柵状組織」はまっすぐに並んでいるため光を下層へ通しやすいのです。その下に不規則に並ぶ「海綿状組織」は、内部で光を散乱させることで、より多くの葉緑体が光を受けられるようになっています(図右側)。こうすることで、上層で使い切らない光は下層に下ろし、下層でも無駄なく光を使うことができ、どの部分でも葉緑体が無駄なく働いて光合成を行っています。

これぞ「適度なスルー・・・からの、散乱!!!」こうして、巧みに光合成効率をUPさせていたのです。

さいごに

私は学生時代「サンゴ」を使って研究していました。

サンゴみたいに移動しない(固着性)動物を扱っていた私が言うのもなんですが、個人的には目に見えて動き回る動物に比べて、植物って動きがなくて「なんだか地味だなー」と思っていました...。

ですが、みどりの科学コミュニケーター (リンクは削除されました)として活動するうちに、今日紹介したような植物の巧みな能力が次から次へと見えてきました。移動できないからこその戦略的な生き方に驚きの連続!!地味とか言ってごめんなさい...。

未来館で開催する「みどりの学術賞関連イベント」では、今後もみどりの機能を知り、私たちとみどりの関係を一緒に考えていけるような機会を作っていきたいと思っています。みなさんもみどりにまつわるトリビアがあったらぜひ教えて下さいね!

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