続報!冥王星!

© NASA-JHUAPL-SWRI

1930年の冥王星の発見から85年かかって、やっとこのように冥王星のはっきりした全体像を把握することができました。

この話題はニュースにもたくさん取り上げられ、おかげさまで展示フロアでの冥王星ミニトークにも多くのみなさまにお集まりいただいております。ありがとうございます!

「冥王星ってこんな色をしていたんだ!」「ニューホライズンズはこのあとどこへ向かうのか?」など、コメントもたくさんいただいています。

(最接近の少し前までは、ニューホライズンズについてあまり知られていなかったようので、こんなに関心を持っていただけるとはと本当に驚いています!)

現状、わかってきたことをまとめてみましょう。

標高3500メートル級の氷の山脈がある!

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ハート型の地域(スプートニク平原)の一部を拡大した画像から、このような氷でできた山脈があることが確認されました。月より小さな冥王星に、富士山並みの高い山があるとは!これは近くまで行って解像度の高い画像を撮ったからこそ、わかったことですね。

また、この山脈は1億年前くらいにできたそうです(地球惑星科学では1億年前は最近です笑)。冥王星は太陽から遠くて寒いので、凍りついた化石のような天体だと考えられていましたが、最近まで造山活動があったということは大発見です!

表層が新しい!

また、全体的にクレーターがとても少ないのも特徴です。特にハート型の地域には1つもクレーターが見当たりません。これはどういうことでしょうか?冥王星の 周囲には小さな天体もたくさんあり、それらの衝突によってクレーターができているはずです。クレーターがないのは、たとえば内側から噴いてきた氷などの新 しい物質でクレーターごと覆われるなど、何かしらの理由でその地域の表面が新しくなったからだと考えられます(これを「表層の更新」と呼びます)。

冥王星は最近まで造山活動や表層の更新が起こっていた、つまり地質学的に活動していたらしいということがいえます。もしかすると現在も活動しているかもしれません。これは非常に驚きです!

そして、地質学的な活動が起こるためには、何らかの熱源が必要です。そのため、冥王星でそうした活動を起こす熱源は何か?という謎が新たに生まれます。考えられている主な仮説は3つあります。

①内部の放射性元素

地 球の場合は、中心にある熱いコアからの熱が、マントルの対流を引き起こし、地震や造山運動、火山活動のエネルギー源となっています。一方で、サイズの小さ い月はすでに冷え切ってしまって、地質学的な活動はありません。冥王星も、大きさから考えて、地球のような熱いコアや、熱源となるような放射性元素が十分 にあるとは考えにくいのです。

②他の天体からの潮汐加熱

地 球以外で、火山が見つかった天体としては、木星の衛星イオがあります。地球の月とほぼ同じ小ささですが、イオはすぐ近くに巨大な木星があるので、その引力 (潮汐力)でイオが周期的に変形することが、エネルギー源になっているとみられています。でも、冥王星には、近くにそれほど大きな天体はありません。

③過去の衝突時の熱を保持

冥 王星の衛星カロンは、地球の月の場合と同様、冥王星に他の天体が衝突(ジャイアントインパクト)してできた可能性があると言われていますが、その衝突時に 生じた熱がまだ保たれているのでしょうか?でもその衝突が起こったのが46億年前に太陽系ができたころの話だとしたら、その時の熱がまだ保たれているとい うのも考えにくいですね。

これについてはまだ議論が必要です。

氷河が流れている!

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これもハート型の地域の画像ですが、地球の氷河に似た地形を確認しました。表層を窒素を主成分とする氷河が流れているようです。表層は現在進行形で変化しているのかもしれません。

大気があることを確認した!

ニューホライズンズは冥王星の大気についても詳しく調べています。

こ のように、太陽とニューホライズンズの間にちょうど冥王星が入って、日食のような状態になった画像も撮れました。なんだか神秘的ですね。ちょうど影になっ ている冥王星の周りに白く見えるのが大気のもやです。ちゃんと大気があるということがわかります。また、大気成分の分析結果から、もや状になっているのは 大気中の炭化水素(エチレン、アセチレンなど)が凍ったものと考えられています。

ニューホライズンズはこのあとも2020年まで観測を続けます。通信が遅いので、データも16カ月かけて少しずつ送ってきます(いったん9月まで通信をストップして、データをとるのに専念するそうですが)。

ということは、冥王星を通り過ぎて終わりではなくて、あと16カ月楽しめるわけです!さらに冥王星の真の姿が明らかになっていくのを、引き続き楽しみに待ちましょう!

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