ダメージ=ハザード×(曝露×脆弱性) =リスクとの向き合い方の詳細補足①=

災害で社会が受けるダメージの内容や大きさは、「ハザード」と「社会システム」によって決まります。

「ハザード」とは、脅威となり得る現象そのものです。

「社会システム」は、さらに、受ける側である社会の「曝露(ばくろ)」と「脆弱性(ぜいじゃくせい)」で考えます。

どんな現象に、何がどの程度さらされ(曝露)、その現象に対してどのくらい弱いか(脆弱性)──によって、ダメージの大きさや内容が変わってくるのです。

個人や組織などにも適用できるように一般化すると、

「ダメージ」=「ハザード」×「(それを受ける側の)曝露 ×脆弱性」。

例:「個人への紫外線ダメージ」=「紫外線の強さ」×「個人の状況(=紫外線を浴びる時間と面積×紫外線に対する肌の弱さ)」

自然現象以外に、「人の悪意、過失」などもハザードに含むことができます。

東日本大震災で考えるならば、地震や津波といった「ハザード」が、そのままダメージというわけではありません。現象と被害は別物です。

※本記事は、3月6日に行ったサイエンティスト・トーク「未知の災害ダメージを『想定外』といわないために」報告記事の項目別の詳細(4本中1本目)です。リスク評価の研究がご専門の岸本充生教授(東京大学公共政策大学院)に伺った話の全体像については、「『想定外』と言わないための、リスクとの向き合い方」をご参照ください。 https://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/20160325st.html(リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)

東日本の居住域や工業地帯が広い範囲にわたって、地震や津波といった「ハザード」に「曝露」されました。

そして、「脆弱性」を考えると、特に「津波」に対して、東北地方沿岸部の居住域や、浸水で非常用電源が機能しなかった福島第一原子力発電所は「脆弱」でした。

(女川原子力発電所は、同じ東北地方の沿岸部にありながら標高が少し高かったため、津波に対する「曝露」を抑えることができました)。

このとき「地震」に対しては、首都圏で考えても、建物の多くは耐震化が進んでいて脆弱ではありませんでしたが、長距離通勤者が多い都市システムはやや脆弱で、多くの帰宅困難者が発生しました。

ハザード自体は現象なので、止めることは困難です。しかし、社会システムは変えることができますし、実際に日々、変わり続けています。

ということは、歴史的に何度か経験があるハザードでも、時代によって、受けるダメージが変わってくることが考えられます。

たとえば、太陽フレア。記録に残る最も大きなものは1859年に発生した「キャリントン・フレア」ですが、当時はまだ電力網、通信網ともに未発達でした。太陽面爆発の影響で、電力網や通信網が壊滅した場合に、現代社会ではどのようなダメージが発生するでしょうか。

現代社会を襲ったら...

イベント参加者も、未知のダメージを考えました

イベントでは、現代において依存度が高い「インターネット」「上下水道」「車社会」など7つの社会システムに対し、「太陽フレア」をはじめとするいくつかのハザードが掛け合わさったときにどんなダメージが生じるのか、グループワークで想像しました。

未知のダメージについて想像するグループワークの様子

また、「ハザード」と「社会システム」を自由に掛け合わせ、「未知のダメージ」を個人で考える時間もつくりました。

出てきた例を、いくつか紹介いたします。

  • 感染症×インターネット=デマがものすごい勢いで拡散して混乱する。
  • 太陽フレア×車社会=車は停電には強いかもしれないが、信号が動作せず、カーナビの不調による道迷いも発生し、混乱する。
  • 火山灰×車社会=自動車による人と物の移動ができなくなる。車依存の社会は大きな滞りを発生する。
  • 悪意×車の自動運転=誤作動をさせることによる重大事故の発生
グループワークで想像した未知のダメージ。3つの表を1枚にまとめてあります(クリックで拡大)。

社会システムが高度化、複雑化するこれからの社会。私たちは、多種多様なダメージを受ける可能性をはらんでいるようです。

起こり得る「未知のダメージ」をまず、想像する──。その姿勢が、「もう『想定外』といわないため」の第一歩になるはずです。


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ダメージ=ハザード×(曝露×脆弱性) =詳細補足①=
→この記事
ダメージの「大きさ」と「発生可能性」を見える化 =詳細補足②=
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