11/17(木)から、メディアラボの第17期展示がオープンしました。
今期は「数理の国の錯視研究所」ということで錯視をテーマにした展示です。
東京大学大学院数理科学研究科の新井仁之 教授と明治大学先端数理科学インスティテュートの杉原厚吉 特任教授の2人に出展して頂きました。
視覚の錯覚、錯視がテーマですので、まずは目で見てもらいましょう。
ひとつめは新井先生らの作品です。
(注:画像をクリックすると9cm×9cmのサイズの画像が表示されます。これより小さなサイズで見ると錯視成分の減少などが起こる可能性があります。なるべく、PCなどの大きな画面でご覧下さい。)
渦を巻いているように見えましたか?でも、本当は渦を巻いてはいません。
(画像を見ていて気分が悪くなったときは、見るのをやめましょう。なお、錯視が見えるかどうかには個人差があり、作品によっては、錯視が起こらない人もいます。)
続いて杉原先生の作品
あれ?丸い形が、鏡に映ると別の形に!?
直接見る姿と鏡に映った姿で全く違って見えますね!
もちろん画像に細工はありません。鏡もごくごく普通のものです。
新井先生・杉原先生は数理モデリングという手法を用いて、こんな風に不思議に見える錯視を研究しています。
新井先生は脳内の神経細胞による情報処理をコンピューター上で再現するモデルの研究を行っています。錯視は実際の画像(原画像)と脳内で処理されたイメージ(処理画像)が異なってしまうために起こります。人間の脳は原画像≠処理画像となってしまう、つまり目に入ってきた情報を脳内で完全に再構成することが出来ないのです。
ここで行われている視覚の情報処理がどんなものか。理解するためには、視覚の基本法則をとらえることが大事になってきます。例えば、人間の感覚では「大きい刺激が周囲にあると、同種の刺激は弱められ、周囲に同種の刺激がなければ、小さい刺激でも強調される」ということは下の図で実感できるのではないでしょうか。
暗い(大きい刺激)背景では灰色は白っぽく見え(=弱められ)、明るい(刺激がない)背景の中では灰色は暗く(=強調されて)見えますが、それぞれ灰色は同じ色です。こんな人間の感覚の基本法則を数学的なモデルにすることを新井先生は実現しました。
その結果、錯視を強めたり弱めたりすることも可能になり、最初の作品から錯視成分を取り除いた画像(a)やより錯視を強くした画像(b)を作ることができます。
杉原先生は立体を使って、形の情報が光に乗って目に届くまでの仕組みを研究しています。ある視点から見える平面の画像情報から元の立体を復元する方程式を立てて、その解を求めることで、不思議な立体を作り出すことができます。
どういうことなのか、図で説明しましょう。視点Aから見る(赤い点線のルート)と正三角形のように見える立体は、BだけではなくCかも、Dかもしれません。しかし、同時に視点Aから鏡を通して見る(青い点線のルート)と、正方形に見える立体、それはCということになります。こうやって考えると、直接見ると正三角形、鏡から見ると正方形に見える不思議な立体Cを作り出すことができる、というわけです。
いかがでしたでしょうか、見ているだけでも不思議で楽しい錯視の世界を数学によって理解できる仕組みの一端をご紹介しました。
とは、言ってもやはり直に見てみると、とっても不思議です。
「仕組みがわかっていても、やっぱりそう見えてしまいます」とは杉原先生の言葉です。
ぜひ、この不思議な錯視の世界を体験しに来て下さい!お待ちしています!!