協力してください!銀河のナゾに挑みましょう!

銀河のナゾを解き明かす研究の仲間になりませんか。

国立天文台のすばる望遠鏡で観測された銀河の画像を見て、どんな形をした銀河なのかを分類する──市民天文学サイト「GALAXY CRUISE」(ギャラクシークルーズ)が11月1日にオープンしました!皆さんの分類が銀河の研究を進めることになります。銀河の形とは?研究の仲間になるとは?実は、制作の一部に私たち未来館も協力したこのサイト、早速ご紹介していきます。

国立天文台 市民天文学プロジェクト

銀河はたくさんの星が集まった星の集団です。私たちの今いる地球も「天の川銀河」という銀河の一部です。天の川銀河の中には数千億個の恒星(太陽のように自ら輝く星)が集まっていると考えられています。

マウナケアの上に傾く天の川
天の川は私たちのいる「天の川銀河」を中から見ている姿です。
Photo by Dr. Hideaki Fujiwara - Subaru Telescope, NAOJ.

天の川銀河のような銀河が宇宙には数えきれないほど存在しています。国立天文台では、ハワイ島マウナケア山頂に建設されたすばる望遠鏡に搭載された、世界最高性能の超高視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam(HSC;ハイパー・シュプリーム・カム)を使って、広い空の領域をこれまでになく深く観測しています。

HSCで観測された渦巻銀河
© NAOJ and HSC Project

銀河の成長を調べる研究

銀河がどのように生まれ、成長してきたのか、は天文学の大きなナゾの1つです。これまでの研究から銀河同士が、衝突や合体を繰り返しながら成長してきたと考えられていますが、くわしいことははっきりとわかっていません。

研究を進めていく中でのひとつの問題が、数えきれないほどの銀河のなかから、うまく研究のヒントになる合体した銀河、あるいは今まさに衝突している銀河を見つけるのが難しいことです。

近くの銀河との重力相互作用で形が歪められている銀河
©NAOJ and HSC Project

そこで、みなさんの出番です!

HSCではこれまでにないほどたくさんの銀河を詳細に観測した画像が得られています。そのHSCで観測された画像の中から、衝突・合体する銀河を探し出す協力をお願いするのが、このGALAXY CRUISEです。

みなさんが衝突する銀河を見つけ出し、天文学者がそれらの観測画像を比較・分析して、一緒に研究を進めていくのです。

HSCで観測された画像のほんのごくごく一部。この中に銀河がいくつ見えているのかさえ、数えるのは少し骨が折れそうです......。
©NAOJ and HSC Project

でも、わたしに銀河の分類なんてできるの?

協力したいけど、天文学なんて学んだこともないし、協力できるのかな?と思ったそこのあなた!ご心配には及びません、GALAXY CRUISEではクルーズに参加するためのトレーニングが用意されています。

初級編・中級編・上級編の3つの段階で銀河の形を分類するための基礎を身につけることができます。銀河をじっくり観察したことが無い方も、上級編を終える頃には「この銀河はきっと衝突銀河、しっぽが見えるな...」なんてつぶやいているハズ!

衝突銀河、しっぽが見えるタイプ ©NAOJ and HSC Project
筆者もはじめは全くわかりませんでした。ですが、トレーニングを体験しているうちにだんだん、これはもしかして......、と見えてきたような気がします。

トレーニングもみなさんと一緒に作りました!

GALAXY CRUISEは、ふだんはあまり天文になじみがないという方にも、研究に協力してもらいたい、天文学の魅力を味わっていただきたい、という想いで作られています。
このトレーニングメニューは、普段、銀河に慣れ親しんでいるわけではない多くの方とともに、未来館の科学コミュニケーターも協力しながら作成しました。

多くの方に実際に銀河の写真を見て、分類にチャレンジしていただきました。

未来館に来てくださったみなさんに参加してもらい、銀河の見分け方を直接伝えながら、みなさんに分類にチャレンジしてもらいます。ここでは、あらかじめ天文学者が分類をした銀河を使って、参加した人が上手く分類できたかどうかを評価しました。

常設展示オピニオンバンク、来館者のみなさんが意見を発信する展示です。
みなさんからの回答を参考にトレーニングの内容を改善していきました。

どうやって伝えたら難しい銀河の分類にも挑戦してくれるだろうか?ここを変えてみたらどうだろうか?と試行錯誤をくり返した結果がGALAXY CRUISEのトレーニングとして完成しました。

さあ、研究の仲間に加わろう!

トレーニングの話はこれくらいにして、さっそく挑戦してみましょう!わからなくても大丈夫、悩んだらあり得ると思うものを複数選択してください。さまざまな特徴が同時に見えることもあります。なにより、正解はまだ研究者にもわからないのです。

ところで、研究に参加すると何があるの?

銀河の分類を進めていくと、おみやげがもらえる仕組みになっています。ぜひ、たくさんの銀河を分類して、銀河のナゾを解き明かすクルーズを進めていってください。

この分類の結果は銀河の成り立ちを明らかにする研究につながっていきます。銀河がどうやって生まれてきたのか、成長するのか、研究が進んで今よりも少しわかった未来がやってきたら、私たちはどう感じるのでしょう?

想像するのはむずかしいかもしれませんが、それを知る前と後では、きっと世界の見え方は違ったものになるのではないでしょうか。

カモのイラスト。一度ウサギに見えることに気づいてしまうと、気づく前の自分には戻れません。
出典:The Fliegende Blätter(the 23 October 1892) より

研究とは、そんな風に私たちの世界の見え方や感じ方が変わる未来を、作っていくことです。GALAXY CRUISEは自分の手で、ほんの少しだけかもしれませんが、新しい未来をつくるチャンスです。ぜひ乗船券をゲットして、一緒に銀河のナゾを解き明かしていきましょう!

年末年始にぜひチャレンジしてみてください!
https://galaxycruise.mtk.nao.ac.jp/

それでは、2019年も科学コミュニケーターブログをご愛読いただきありがとうございました。
2020年もよろしくおねがいいたします。 

謝辞

本プロジェクトでご一緒させていただきました、GALAXY CRUISEの船長でもある国立天文台の田中賢幸准教授、並びに国立天文台・天文情報センターとハワイ観測所の皆様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

研究者の方へ

未来館では本記事でご紹介したような、市民の意見や視点を反映した研究活動の推進を図るため、実証実験や研究調査を行う市民参加型実験の企画提案募集を行っています。分野を問わず公募しておりますので、ご興味ございましたらぜひご検討ください。

詳細は下記URLをご覧ください。
https://www.miraikan.jst.go.jp/info/1911281325268.html

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