「わかんないよね新型コロナ ここでいったん振り返ろう」

ニコ生で放送中! 6/7放送分の振り返り

皆さん、こんにちは。
科学コミュニケーター綾塚達郎です。

緊急事態宣言が全国で解除され、私たちの活動も少しずつ再開されつつあります。一方、新型コロナウイルス感染症の流行は終息したわけではありません。活動再開には感染症対策が必須です。しかし、いざ対策しようとすると具体的な方法がわからない、という方も多いのではないでしょうか。

そんな疑問にお答えすべく、感染症対策のプロ・堀成美さん(国立国際医療研究センター 国際感染症センター)に、現場での対策方法や考え方をニコニコ生放送でお伺いしました。

この記事では、6月7日日曜日の14:00から放送された内容を振り返ります。

ニコニコ生放送「わかんないよね新型コロナ~ここでいったん振り返ろう~」
6月の毎週日曜日(7日、14日、21日、28日)14:00から約1時間の生放送予定

現場の数だけ感染症対策は異なる

堀さんがアドバイスをしている現場の1つ、映画の撮影現場について考えてみましょう。映画の撮影現場といっても状況は様々です。撮影は屋内か屋外か、役者が叫ぶといった飛沫が飛びやすいシーンはあるか、エキストラの人数は多いかなど、現場によって違う条件がたくさん挙げられます。まったく同じ現場はほぼない、というのが感染症対策の難しさでもあります。

堀さんは、感染症対策の手順となる考え方について、5つの項目に整理してくださいました。

1、全員が共通して必ずやることは何か決める
頻繁に手を洗う、咳エチケットをするなど基本的なことは全員共通で行いたいですね。また、食事をビュッフェ形式から個別のランチボックスに変えるのも効果があります。

2、スタッフの仕事内容や場面によって足すことは何か決める(ふつうは減らさない)
たとえばメイク担当のように、接触や近距離での会話が発生する役割の方は、場合によってはマスクやフェイスシールドなど追加の対策が必要になるかもしれません。

3、現実的にやれないことはやらない
感染症対策が必要と言っても、資金や物品、人手などの条件が厳しい場合、完璧にはできないこともあります。

4、過剰なことはやらない
例えばマスクを2枚重ねにするなど、過剰なことはやるべきではありません。気持ちはわかりますが、結果的にコストが高くなり対策しづらくなってしまうと本末転倒です。

5、マイナスなことはやらない
次亜塩素酸水の噴霧など、効果が認められていない上に人体への健康被害の可能性があるものはやるべきではないでしょう。

また、感染症対策の現場では、いかに納得感をもって行動してもらえるか、という心理面も大切だと言います。アドバイスの際、行うべき感染症対策をいきなり伝えることはしません。不安や疑問などをまず聞いて、それに答える形で具体的な対策内容を練っていくのがポイントです。

感染症リスクをゼロにできない場合、全体でより減らすことを考える

新型コロナウイルスの主な感染ルートに飛沫感染があります。そうするとたとえば、飛沫が飛ぶ可能性が高い合唱の場面ではどのような対策をするべきでしょうか。

合唱では、マスクやフェイスシールドをつけると音がこもるため、なるべく着けたくはありません。そうすると飛沫は飛びますが、横並びで合唱をすれば飛沫が直接かかることはおさえられます。円になってお互いの表情を見ながら合唱する場合でも、ある程度の距離をとれば少し改善できるでしょう。リスクをゼロにできなくても、減らすことを考えるのが大切です。

また、合唱の練習という、いかにも飛沫が飛びそうな状況以外が実は盲点になっていることがあります。合唱などの活動では合間のおやつタイムも楽しみの1つですよね。こうした場面で密を防ぐ、手洗いをすることで、活動全体での感染リスクを減らすことに繋がります。

さらに、万が一感染したときのために、周りの人と連絡がとれるようにしておくと事後対応がしやすくなります。誰でもかかるかもしれない感染症だからこそ、かかった後の対応も含めて準備が必要です。

あまりに厳しい感染症対策では現場は続きません。現場ごとの価値観を捉えながら、無理なく続けられる感染症対策の落としどころを見つけましょう。

現場が自立して感染症対策を進めるのに必要なことは?

ここまでは、現場の関係者と堀さんが直接コミュニケーションをとりながら感染症対策を進める場合について見てきました。一方で、堀さんのようなアドバイザーがいつもいてくれるとは限りません。現場自ら対策を考える状況こそ多くあるでしょう。

例えば学校は、生徒や保護者の皆さまも含め、たくさんの人が関わり状況も複雑です。学校の対策として、マスクとフェイスシールドの両方が必要か、という話題を最近ニュースでよく見かけます。この話題を例に、感染症対策の手順と考え方を見てみましょう。ここでは3つの項目に分けて整理しました。

1、共通設定を決める
まずは行動の前提となる共通設定を決めることです。マスクとフェイスシールド両方を着用するか、マスクまたはフェイスシールドどちらか着用でよしとするか決めます。どちらが正しいかという話ではなく、まずは対策方針を決める上での土台作りです。

2、いつ着けるべきか、外すべきかを理解する
その上で、マスクやフェイスシールドを着ける意味や、それぞれの利点欠点を理解します。たとえばマスクは口元が見えないため、難聴の方にとって、唇の動きで言葉を理解するのが難しくなります。また、知覚過敏の方にとってはマスクやフェイスシールドなど身につけるものが増えると大きな苦痛になることもあります。状況に合わせて使い分けられるようにしておくのが良いでしょう。

3、使いたい人のために用意はしておく
仮に、マスクのみで大丈夫と決めても、状況に合わせて使えるようにいくつかフェイスシールドを用意しておくと安心です。生徒のマスクやフェイスシールドを外して健康観察をしなければいけない保健の先生が、顔を飛沫から守るのにフェイスシールドは有効かもしれません。また、気持ちの問題も大事なので、その他の状況でも着けたいという強い希望があれば貸し出しても良いでしょう。

また、公共性の高い場所では強い意見やクレームを受けることがあります。電話や対面での対応は難しい場合があるので、対応窓口としてメールを用意しておくと良いそうです。そして、たとえば「感染症対策をこれから適宜改善していくために、残る形でメールをお願いしております」という文言を説明文書等に書いておくことがおすすめだといいます。もちろん、いただく意見の中には、良い意見もたくさんあります。意見はオープンに受け付け、必要に応じて公開すると良いかもしれません。

現場のことになると感染症対策の専門家だけでは対策が成り立たないと堀さんは言います。何が正しいかを決めつけずに対話を進め、ときに変更も加えながら段階的に感染症対策を進めていきましょう。対策マニュアルは作成して終わりではなく、活かすために変えていくものなのです。

過去の番組は無料で視聴できます!

いかがでしたでしょうか。今回の記事では書ききれなかった内容もたくさんあります。当番組はニコニコ動画を通して過去回を登録なし、無料で見ることが出来ます。見逃した方、もっと詳しく知りたい方はぜひご覧ください!

ニコニコ動画タイムシフト視聴:https://ch.nicovideo.jp/miraikan
※2020年の4月1日から5月29日の平日に放送してきた番組内容もご覧いただけます。

6月7日放送回のトピック一覧

【今週のニュースをプロはどう見る?】
・北九州市の感染者数増加について(06:30~)
・北九州市のPCR検査戦略(07:40 ~)
・野球選手の抗体検査・PCR検査結果(12:15~)
・「東京アラート」について(18:50~)
・感染者数が増加した際の対応@韓国(20:00~)
・緊急事態宣言はまた出ますか?(22:00~)

【各現場の感染対策の考え方:映画撮影】
・映画撮影現場の感染対策は?(28:20~)
・やること、やらないことのポイント整理①(37:20 ~)

【各現場の感染対策の考え方:合唱】
・合唱する時の感染対策は?(41:40~)
・指揮者は飛沫を浴びやすい?(44:10~)
・マスクをして歌うのはどう?(45:00~)

【各現場の感染対策の考え方:学校】
・学校の感染対策、どう考える?(50:20~)
・マスクとフェイスシールドは両方いる?(54:30~)
・やること、やらないことのポイント整理②(55:05~)
・教室のエアコンは感染拡大に影響ある?(1:00:25~)
・学童保育での感染対策は?(1:04:10~)

【各現場の感染対策】
・ご意見やクレームへの対応について(1:06:05~)

6月は毎週日曜日14:00から放送します!

当番組「わかんないよね新型コロナ ここでいったん振り返ろう」は、6月14日、6月21日、6月28日と放送予定です。
放送内容:https://www.miraikan.jst.go.jp/resources/COVID-19/nicovideo/

・7日「私たちが本当に困ったこと」
担当科学コミュニケーター:綾塚

・14日「新型コロナの症状・治療のこと」
担当科学コミュニケーター:髙橋

・21日「不要不急ってどんなこと」
担当科学コミュニケーター:田中、山本

・28日「日本のこと、世界のこと」
担当科学コミュニケーター:伊達、小林

その他、Twitter、slidoでご質問やご意見を随時募集しております。皆さまのご投稿お待ちしております。

アンケートサービス「slido」:https://www.sli.do/jp
※アクセスコード「#97984」をご入力の上、コメントをお寄せください。

番組ツイッター(わかんないよね新型コロナ@ニコ生):https://twitter.com/channel_covid

おまけ

5月までの番組は自宅から配信しておりましたが、6月7日(日)は試しに未来館から配信いたしました。以下は配信現場の様子です。(今後の配信場所は未定です)

司会進行担当の綾塚と運営コメント担当の伊達。堀さんは別会場からオンライン参加
資料出し担当の毛利は館内別室で参加
番組が始まる前、日本科学未来館のコ・スタジオで山本が関連トークを実施

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