「この週末は、未来館に行くのがオススメだよ!」
いきなり、自動販売機にこう話しかけられたら…。なんでだろう?何かの宣伝かな?って思いますよね。
でも、「先週出た宿題で、ロボットについて調べようと思っていたよね。未来館に行ってみたら何かヒントが見つかるんじゃない?次の週末にはロボットの研究者が来るイベントがあるみたいだよ。それに、お台場で買い物もしたいって言っていたし、ちょうどいいんじゃない?」と言われたら、どうでしょう?自分にぴったりだ、と思ったら行ってみようかな、と思いませんか。
今、未来館では、そんなあなたにぴったりのオススメができて、あなたに寄り添う優しい人工知能をつくる実証実験が進められています!
未来館では、研究者とみなさんが一緒に実証実験を進めるプロジェクト「オープンラボ」を行っています。今回ご紹介する「優しい人工知能“reco!” –タッチでキヅク、キミとのキズナ」は、未来館の中に設置したreco!(リコ)と未来館の常設展を楽しんでもらいながら、人工知能が使うデータを集める実証実験で、産業技術総合研究所が実施しています。このブログでは、実験の様子や仕組みを紹介します。
入口付近にあるスタートreco!とそれぞれの展示の近くにあるオススメreco!、さらにはゴールreco!の3タイプとお話ししながら、ぜひ実験に参加してください。
どんなふうに実験に参加する?
① 最初に3階展示場入口付近にある、スタート“reco!”にタッチ!
参加に同意して、お手持ちの交通系ICカードを登録したら、実験開始です。
年代や性別、あなたについての質問に答えると、“reco!"が未来館の常設展示の中から、あなたにまずは3つオススメします。オススメから選んでいただいても、好きに回ってもらってもかまいません。ICカードを使ってはいますが、もちろん無料です!
② 常設展を見たら、オススメ“reco!”にタッチ
常設展内で、展示を体験したら、それぞれ展示の近くにある端末、オススメ“reco!"にタッチします。体験するのは、スタート“reco!”にオススメされた展示でなくてもOKです!ここでは、体験した展示を楽しめたかどうかを“reco!”に答えてあげてください。
さらに、「好きな季節は?」のような簡単な質問をやりとりして、展示のオススメを繰り返していきます。いくつか展示を巡っているうちに、少しずつ“reco!”がみなさんのことを知っていきます。
③ 展示を巡ったら、ゴール“reco!”にタッチしよう!
ゴールは3階常設展の外に設置された自動販売機型のゴール“reco!”です。
ここでは、今日1日体験してもらった振り返りや、あなたと少し仲良くなった“reco!”が気付いたあなたのタイプを伝えます。
“reco!”はあなたのこと、よくわかってくれたでしょうか?それとも、あなた自身も気付いていなかった意外な一面をみつけてくれるでしょうか?
まだまだ“reco!”は開発途中!
こんな風に“reco!”とお話しながら未来館を巡ると、きっとより一層未来館の展示も楽しんでいただけるでしょう。そして、そんなみなさんとのやり取りで人工知能“reco!”はもっと賢くなっていきます。みなさんが参加したデータが十分集まったら“reco!”のオススメの精度は改善されていくので、1度体験した方もしばらくしてから来ていただくと、また違ったオススメをしてくれるようになるでしょう。
では、人工知能“reco!”がオススメする仕組みとは?“reco!”にはどんな特徴があるのか?この実験の代表研究者であり、ゴール“reco!”のところでお子さんと一緒にモデルになってくれた産業技術総合研究所の髙岡 昂太氏と“reco!”プロジェクトを担当する科学コミュニケーターの1人松島の会話をのぞいてみましょう。
松島:髙岡さん、リコは、どうやって私に一番オススメの展示を考えているんですか?
髙岡氏:松島さんがリコに教えてくれた答え、例えば「女性です」とか、「活発で外向的なタイプです」とか、答えが返ってきたときに、未来館の「アンドロイド」の展示や、「100億人でサバイバル」の展示を「とても楽しかった」と答える確率をそれぞれ計算しています。
ある条件(「活発で外向的である」など)が決まった時に、別の事象(「アンドロイド」で「とても楽しかった」と答える確率)が起きる確率、ということで「条件付き確率」と呼ばれるものです。
松島:展示を楽しめるかどうかとは、全然関係ないように思える質問もリコはしてくるんですけど、それってどんなつながりがあるんですか?たとえば「いつもどんなカバンを使ってる?」っていう質問と「国際宇宙ステーション」の展示が楽しめるかどうかは関係ないような気がします……。
髙岡氏:たしかに、私たち人間には一見すると関係が無いように見えますよね。ですが、データが集まってきたら、「リュックをいつも使っている」と答えた人は「国際宇宙ステーション」の展示がとても好きと答える確率が高い、とリコが分析するかもしれません。
松島:考えたことない関係を見つけてくれる可能性があるってことですね。当てはまりそうなお客さんを見つけたら、本当にそうかな、って思いながらお話しちゃいそうです。確率が高いということなので、100%そうではないですけど、今までよりたくさんお話するきっかけになりそうです。
髙岡氏:リコは他にも質問をしていて、こうした関係を見つけていきます。「リュックを使っている」人が他には、「運動するのが好き」だったり、「新しいものが好き」と答える確率が高い、という関係が見えてきたらどうでしょう?
松島:自分も宇宙に行ってみたい!って、思うような活発な人が多いのかもしれないですね。それだったら、お客さんの様子を見て、宇宙に行ったらどんなことしてみたいか、とか、宇宙飛行士は宇宙ステーションの中で、毎日筋力トレーニングをしないといけないんですよ、なんて話が盛り上がるかもしれませんね。
髙岡氏:松島さんたち科学コミュニケーターとお客さんのお話を盛り上げるきっかけをリコが見つけられるといいですね。リコに使われている人工知能はベイジアンネットワークという仕組みを持っています。複雑な関係の中から因果関係があるかを推論して、条件付き確率で表現する仕組みです。今の例で言うと、「リュックを使っている」と答える原因に対して、「国際宇宙ステーションの展示が好き」と答える結果の確率が高いと分析していて、反対に「国際宇宙ステーションの展示が好き」と答える人が、「リュックを使っている」可能性が高いというわけではありません。
松島:これからの実験で、どんな関係が見つかるのか楽しみですね。わかってきたことも、科学コミュニケーターブログなどで紹介していきたいので、みなさんにぜひ実験に参加してもらいたいですね。
髙岡氏:はい、みなさんお願いします。僕たちがこれから人工知能と上手くつきあっていくには、人工知能に僕たちを理解してもらうことと、僕たちも人工知能が判断したことを理解できることの2つが大事だと考えています。なので、未来館に来てくださるみなさんがリコにいろんなことを答えてもらうこと、そして集まったデータからオススメの理由を僕たちが見つけること、この両方を未来館の実験で進めています。
松島:そうすると、リコがだんだん優しい人工知能になっていくんですね。みなさんには、データを集めるだけじゃなくて、どんな人工知能だったら一緒に暮らせそう、とか、優しい人工知能ってどんなの?っていう色んな意見も一緒にリコに届けてあげてほしいですね!もちろん私たち科学コミュニケーターにも聞かせもらいたいです。
オープンラボ「優しい人工知能“reco!”-タッチでキヅク、キミとのキズナ」は2月から開始しましたが、臨時休館もあり、実験が滞ってしまいました。
みなさん一緒に人工知能“reco!”を優しくしていきましょう!7月1日から再開していますので、ぜひともご参加ください!!
「この週末は、再開館した未来館に行くのがオススメだよ!」
オープンラボ「優しい人工知能“reco!”―タッチでキヅク、キミとのキズナ」
担当科学コミュニケーター 白石 泉、松島 聡子、片平 圭貴