突然ですが、皆さんは道を歩くとき、どんなことに気をつけながら歩いていますか?
正面から車や自転車がやってこないか
数メートル先に電柱があるから避けなくちゃ
後ろから何か音が近づいてきている……
強く意識していなくても、自然とこのような周囲の情報に気を配っていますよね。状況に合わせて立ち止まったり、障害物を避けたりすることで、私たちは無事に目的地まで歩くことができます。
では、ロボットが人に指示されることなく、ひとりで目的地へ移動しようとする場合、ロボットにはどのような情報が必要になるでしょうか。
目的地までの地図だけでなく、周囲の人や物の位置とその動き、音。
常に変化するこれらの環境情報を取得しながら、障害物を避けて、今いる場所と目的地を見失わず、移動する必要があります。
展示フロアをロボットが走行します!
未来館の研究エリアにある「知能機械の生活空間モデリング」プロジェクトでは、産業技術総合研究所の持丸正明先生を筆頭に、私たちの身のまわりで活躍する自律移動型ロボットや、視覚障害者の移動・活動支援システムの実現を目指して、研究を行っています。
2016年から行っているのは「ピーコック(Peacock)」というロボットを用いた実証実験。3階展示フロア内を走行させながら、来館者の人混みを抜けて目的地へ到達できるかを実験しています。
初めに挙げたように、人間は「目的地まで移動する」過程で、さまざまな感覚を使って周囲の環境を把握し、判断して体を動かすという一連の動きを行っています。ロボットに同じようなことをさせるには、周囲の障害物や音を認識するためのセンサー、認識した情報から判断して動くためのプログラムが必要となります。ピーコックはまさにこれらの機能を搭載したロボットで、周囲の人や物を感知する赤外線センサーの「目」と、周りの音を拾う16個のマイクからなる「耳」をもっています。さらにこの「目」と「耳」から入ってきた情報と、事前に与えられている地図を合わせて情報処理を行うのがピーコックの「脳」であるコンピュータです。これらの機能を使い、動くべき方向や道を判断し、展示フロア内に設定された目的地へ移動していくのです。
実際、人があまりいない場所を移動するのはさほど難しくないですが、大勢の人が行き交う駅やイベント会場、未来館の展示フロアなど人混みの中を、人や物にぶつからず移動するとなると大変です。人間でも慣れない場所での移動は人の流れが読めず、スイスイと抜けていくのは難しいですよね。そのため、ピーコックはただ障害物を避けるだけでなく、周囲にいる人の移動データを収集し、ピーコックの動きに対して人がどのように反応するかを学習する機能を備えています。また環境の変化に対応できるよう、自分のもっている地図をアップデートしていく機能もあります。未来館での実証実験を通してピーコックはたくさん学習し、さらに効率的な移動ができるようバージョンアップし続けているのです。その研究成果がIEEE IRISというロボットとインテリジェントセンサーの国際会議でベスト論文賞を受賞しています!
みなさんのアイデアが将来身のまわりで活躍するロボットになるかも⁉
ピーコックが未来館のような実環境でちゃんと動くことが検証されれば、将来、ショッピングモールや科学館、行楽地を走行しながら、案内や掃除をしてくれるロボットの実現につながるかもしれません。そんな未来を想像すると、わくわくしませんか?
未来館の実証実験では、走行実験だけではなく、どんなところでピーコックのようなロボットが活躍できそうか、近い将来ロボットと暮らすことになるかもしれないみなさんのアイデアも募集しています!
「走りながら周りの地図を作成する」「人の動きを覚えて予測する」「周囲の音を聞き取り判別する」……このようなことができるロボットに、どんなことをしてほしいですか?みなさんのアイデアを通して、研究者はこのようなロボットの活躍ぶりを具体的にイメージしながら研究を進めることができます。佐々木洋子主任研究員、坂東宜昭研究員はじめ、プロジェクトの研究者たちは今後の実証実験で皆さんとお話しするのを楽しみにしています。
研究者が作りだす技術が私たちの毎日をどのように変えるのか……一歩先の未来を一緒に考えてみませんか?
今までのイベントの様子はこちらのブログ記事でも紹介しています。
「ともにつくるサイセンタン!結果報告-その1- ~ロボットは自分で人混みを抜けられたのか~」
https://blog.miraikan.jst.go.jp/event/20170720--1-.html