「わかんないよね新型コロナ~だからプロにきいてみよう2021春~」

ニコ生で放送中! 2/13放送分の振り返り ワクチンについて

こんにちは! 科学コミュニケーターの田中沙紀子です。2/10から、ニコニコ生放送「わかんないよね新型コロナ~だからプロにきいてみよう2021春~」がはじまりました。水曜と土曜の週2回、気になる新型コロナの話題を、ときには新型コロナと無関係な科学トピックもはさみながら放送していきます。

この記事では、「ワクチン」をテーマにお届けした2/13(土)放送回の内容を、一部ピックアップしてご紹介します。番組は今からでも無料で視聴いただけます。扱ったトピックは末尾にリストでお示ししていますので、詳しく知りたい項目があればぜひ見に行ってください。なお、カッコ内の数字は放送開始からの経過時間です。ご視聴の際の目安にお使いください。

ワクチンってなに?

新型コロナのワクチンの前に、一般的なワクチンのお話から入りましょう。ワクチンは、病気を引き起こすウイルスなどの異物が体の中に侵入してきたらすぐさまやっつけるべく、予行練習をしておくためのものです。私たちの体は、異物をやっつける力を持っているので、これをうまく使います。予行練習に適したウイルスの代わりのものを体に入れることで、それをやっつけるための武器となる抗体の作り方を覚えます。すると、本物のウイルスがやってきたときに、その抗体を使ってすぐに攻撃ができるというわけです。これにより、感染予防、発症予防、重症化予防ができる可能性があります。さらに、ワクチンをたくさんの人が打っておけば、その集団の中にウイルスが入り込めなくなるという集団免疫の効果も期待されます。

ですが、こうした予防の効果は、ワクチンを打った本人にはなかなか実感しにくいもの。堀さんからは、「ワクチンがうまく社会を守ってくれているときほど、(みんなが病気にならず健康を保てるので)その効果は見えにくいけれど、私たちはワクチンによっていろいろな病気から守られている」ということをお話しいただきました。

ワクチンは、ウイルスなどの異物の代替品を体の中に入れることで、本物のウイルスをやっつける予行練習をするためのもの。武器になる抗体の作り方を覚えておくことで、本物のウイルスがやってきたら、すぐに攻撃できるようになる
一般的に、ワクチンを接種することで、感染予防、発症予防、重症化予防、集団免疫が期待される

新型コロナのワクチン

ここからは、新型コロナのワクチンについて見ていきましょう。番組中では、日本で実用化が近そうな4つについてご紹介しました。ファイザーとビオンテック、アストラゼネカとオックスフォード大学のワクチンは日本で承認申請がされており承認審査中(ファイザーとビオンテックのワクチンは放送翌日の2/14に承認)、モデルナ、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンは日本での治験が行われている段階です。これらのワクチンは、発症予防と重症化予防(ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンは、中等症~重症の予防)について効果が確認されています。一方で、感染予防や集団免疫については、まだはっきりと確認できるデータは集まっていません。新しいワクチンなのでまだわからないこともありますが、それでも発症や重症化を予防できるメリットが大きいという判断で、多くの国で接種が進んでいる状態といえます。

いまのところ、コロナのワクチンは発症予防と重症化予防の効果が確認されている

副反応とは限らない、ワクチン接種後の有害事象

そんな中、ワクチンを打つかどうかを決めるうえでみなさんが気になることのひとつが、副反応ですよね。この副反応について考える上では、「有害事象」というワードが重要です。有害事象というのは、ワクチンを打った後に起きたあらゆる好ましくないできごとのこと。有害事象の中でも、ワクチンを打った影響で起きたことが間違いないだろうといえるものだけを、副反応と呼びます。だから、ワクチンを打った後にたまたま雷に打たれて心不全に! というのも有害事象です。この場合、ワクチンの影響ではない有害事象であることは明らかでしょう。ですが、たとえば階段から落ちて大けがをした! という場合はどうでしょうか? たまたま寒さで凍った階段でつるっと滑って落ちたのかもしれないし、ワクチンの影響でめまいがして階段で倒れてしまったのかもしれません。このように、副反応なのか、そうではないたまたま起きた有害事象なのか、すぐに判断するのが難しい例もあります。

また副反応には、数百万人、数千万人のうち1人しか起きないような稀な症状もあり得ます。これはどんな医薬品にも共通です。承認前に数万人規模のしっかりとした試験を行っても把握しきれないことがあるのです。たくさんの人にワクチンを接種していく中で、きちんと有害事象を把握し、そのうち副反応といえるものはどの症状で、どの程度の頻度であるのか、調査が続きます。

ワクチン接種後の有害事象のうち、ワクチンの影響で起きたものを副反応と呼ぶ

今後、日本での新型コロナのワクチン接種が始まるにあたり有害事象に関する情報が増えると考えられますが、今回の重要なポイントのひとつは、海外でも日本でも、医療従事者の次は高齢者が優先的に打たれるということ。堀さんからは「どんな人たちに打つワクチンなのか、その人たちにどんな特徴があるのかを知っておくことは大切」ということをお話しいただきました。高齢の方がワクチンを打った1週間後に亡くなった場合、それはワクチンの影響なのか、そうでないのか――これは簡単にはわかりません。ですが、ワクチンの影響である可能性も、たまたまそのタイミングだった可能性もあるときちんと知っておくことは、情報に振り回されないために大切なのではないでしょうか。

ワクチンを打っても打たなくても、変わらぬ対策を

日本で接種が始まる新型コロナのワクチン。すでに打った方の声や接種が始まった社会のようすも気になるところです。こうしたお話を伺うべく、アメリカの病院で「チャプレン」として働く関野和寛さんをゲストにお呼びしました。

チャプレンとは、病院で働く聖職者。患者さんの心に寄り添ったり、看取ったりというケアを行います。コロナ病棟で働く関野さんが担当しているのは、家族でも面会のできない新型コロナの患者さんたち。死にゆく患者さんのご家族から「父を一人にしないで、手を握ってあげてください」と頼まれて最期を見届けることもあるそうです。

コロナ病棟で毎日患者さんと接している関野さんは、すでにファイザーのワクチン接種(2回接種)を済ませています。関野さんの場合、2回目の接種翌日はだるくなって寝込み、その次の日から回復したものの、1週間くらいだるさが続いたそうです。今は治まってお元気です。ですが、ワクチンを打ち終わって元気なのだから感染対策はもういらない! というわけではありません。むしろ、病院からは「ワクチンを打っても、もしかするとウイルスが体の中にあれば他の人に運んでしまうかもしれない。これまで以上にマスクや手洗い・消毒はしっかりと」と打つ前から繰り返し言われているそうです。打ったことによる解放感は、まったくないとおっしゃっていました。ワクチンを打っても打たなくても、新型コロナの流行が続く限りは、変わらぬ対策を続けましょう。

総合的に情報を見ることや、自分と異なる人を差別しないことが大切

最後に、これから接種が始まる日本のみなさんに伝えたいことを伺いました。関野さんが大切だとおっしゃっていたのは、「メディアの情報に振り回されず、情報を総合的に見て自分で決めること」、そして「ワクチンを打っていない人を差別しないこと」。人にはさまざまな背景があります。ワクチンを打っていないという事実だけで差別してしまう心が自分に生まれていないか、と冷静でいることが大切だと感じました。

もっと詳しく知りたい方、気になる話題がある方は

このほかにも、番組では日本でのこれからのワクチン接種の見込みや、話題になったワクチンに関連したトピックをお伝えしました。新型コロナとは関係なくお送りした休憩コンテンツ、科学コミュニケーターの小林による「推し蚊」もおすすめです! そのほか気になる項目があれば、ぜひ番組アーカイブをご覧ください。
視聴URL:https://live2.nicovideo.jp/watch/lv330412907

また、当番組ではみなさんからのご質問をSlidoやツイッターにて随時募集中です。なるべくたくさんのご質問を番組で取り上げたいと思いますので、ぜひご投稿ください。
Slido:https://www.sli.do/jp (アクセスコード「#97984」をご入力の上、ご記入ください)
番組ツイッター: わかんないよね新型コロナ@ニコ生(https://twitter.com/channel_covid

それでは、次回の放送もお楽しみに!

各回の内容一覧

視聴URL:https://live2.nicovideo.jp/watch/lv330412907

ワクチンってなに?(3:30)

  • ワクチンとは?(3:44)
  • ヒトや社会のレベルでワクチンをみると?(5:30)
  • ワクチンの効果は、うまく行っているときほどわかりにくい(7:35)
  • ワクチンにはどんな種類がある?(10:00)
  • 承認され始めたコロナのワクチン(15:25)
  • ワクチンの効果90%以上ってどういうこと?(18:12)
  • ワクチンには、感染を防ぐ効果はあるの?(27:23)
  • ワクチンはどれくらい効果が残るの?(30:35)
  • 「副反応」と「有害事象」について(32:55)
  • ワクチンのアナフィラキシー(強いアレルギー反応)について(37:57)
  • 新型コロナのワクチン、打つ時の注意事項は?(40:40)
  • 変異ウイルスにもワクチンは効くの?(42:36)

本日のゲスト:アメリカのコロナ病棟や精神科つきの牧師 関野和寛さん(47:00)

  • 「チャプレン」って? コロナ禍で果たす役割は?(47:50)
  • 打ったワクチンは? 打ってみていかがでしたか?(52:53)
  • 周囲の方のワクチンに対する不安や期待は?(58:45)
  • 接種前後に、どんな説明をうけた?(1:02:00)
  • これから接種が始まる日本のみなさんへ伝えたいことは?(1:03:55)

休憩タイム:科学コミュニケーター小林の「推し蚊」(1:07:43)

日本でのワクチン接種はどうなっていく?(1:15:24)

  • 新型コロナワクチン接種の順番は?(1:16:15)
  • 原則として住民票があるところにクーポンが届くのでご注意(1:17:45)

ワクチンについての最近のニュース・話題など(1:18:25)

  • マイナンバーと紐づけるってどういうこと?(1:18:35)
  • ワクチン担当大臣に期待することは?(1:25:40)
  • 乳がん検診直前に新型コロナワクチン接種は良くない?(1:27:35)

質問タイム!(1:30:30)

  • ワクチンは、自分を守るため? 感染させないため?(1:30:52)
  • ワクチンは選べるの?(1:32:35)
  • 開発期間たった1年で安全確認は十分されている?(1:35:01)
  • いろいろなワクチンを打ったらどうなる?(1:38:05)

まとめ:100%の効果は望めない、打てるまで時間もかかる。冷静に状況を見ましょう。(1:40:00)

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