こんにちは、科学コミュニケーターの中島です。今回は、大人になってはじめて購入した絵本のお話です。
絵本と聞くと、子どもの読み物というイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか。少し前まで、私もその1人でした。でも実は、いくつになっても楽しめる本でもあります。幼い頃に読んだ絵本を大人になって読み返してみると、新たなことに気づいたり、これまでの経験から違った見方で楽しんだりすることもできます。私は、甥に読み聞かせをする中で絵本の魅力に気づき、すっかり絵本の虜になってしまいました。
今回紹介するのは、『地球のことをおしえてあげる』という絵本です。長らく暮らしている地球のことをじっくりと想いかえしたくなる、そんな一冊です。
私たちが暮らす地球は、どんな星なのだろう
「宇宙からくる、だれかさんへ。地球がどんなところかしってる?ぼくがきみに、おしえてあげる。」
この物語は、主人公であるクインの言葉から始まります。クインは、宇宙から遊びにやってくる誰かに向けて、お手紙をしたためます。その内容は、地球のことを紹介するというものです。宇宙のどこに地球があるのか、地球にはなにがあって、どんな生き物が暮らしているのかなど、地球のことをいろいろな切り口から記します。
それでは、全73ページにわたるクインのお手紙のほんの一部を、のぞいてみましょう。
「地球は、大きな太陽のちかくにあって、すぐそばには月がある。たくさん星があるなかで、緑と青に見える星が地球だよ。」
「地球には70億よりたくさんの人がいる。みんな体があるよ。でも見た目は、ひとりずつちがう。」
「いろんな家族がいるよ。」
「ほとんどの陸の生きものは、あるけて、およげて、はしれて、とびはねられるけど、空はとべない。」
「地球には、いろんな天気がある。人をうれしくする天気もあれば、こまらせる天気もある。」
「もともと自然にあるものも、人がつくりだしたものもある。」
クインはほかにもたくさんのことを書いているのですが、最後は、「地球にきたら、ぼくのへやにとまっていいよ」という可愛らしい言葉で締めくくられています。まだ見ぬ誰かに向けた、地球のことがよくわかるとてもあたたかなお手紙です。
はじめて絵本を読み終えた時、地球という星の見方が少し変わったように感じました。ふだん、自分が暮らすこの地球はどんな星なのかと考えることは、ほとんどありません。しかし、地球の特徴がていねいに描かれたこの絵本を読んだことで、この地球や、ありふれた日常の姿を俯瞰的にとらえ直すことができ、世界の見方を広げることができました。この絵本をとおして気づいたことの1つは、この地球はさまざまな「違い」にあふれている、ということです。
たとえば、天気。同じ「晴れ」の日でも、気温や風の吹き方は違いますし、空はいろんな表情を見せてくれます。これまで「晴れ」というひとくくりにしていた天気も、実は少しずつ違っている。そのことに気づいてから、天気や空の見え方がこれまでとちょっと変わったように思います。
人間についても、そうです。絵本では、人によって見た目や食べ物を食べる量が違うこと、着る服や暮らしている場所などもさまざまであることが描かれています。どれも当たり前なことではあるものの、人間というものを客観的にとらえてみると、想像以上にみな違っているということに気づかされました。暮らし方も考え方も、得意不得意もみんな違っていて、違っているからこそその人の個性や魅力にもつながってくる。そう思うと、人と自分を比較する必要などないですし、自分の苦手なことや弱さも個性の1つとして受け止められそうです。
これらをはじめとして、地球にはたくさんの「違い」があふれている、ということは私にとって大きな気づきであり、日々の生活の中でいろんな違いを探す楽しみにもなりました。
そうそう、カバーを外した表紙には、地球にやってくる“だれか”をイメージした絵も描かれているので、絵本を手に取った方はそちらもお見逃しなく!
科学コミュニケーターが、地球のことを紹介するとしたら…?
もし、この絵本にもう1ページ増やすとしたら、どんな地球の説明を加えるだろう…地球はどんな星って伝えるのだろう…。この絵本に出会ってから、ふと、そんなことを考えるようになりました。
きっと人によって地球に対する見方やとらえ方は違うはず!ということで、この疑問を同僚の科学コミュニケーターに投げかけてみました。すると、いろいろなユニークな答えが…!
せっかくなので、ここでその一部をご紹介したいと思います。
\あなたが住んでいる地球って、どんな星?/
地球は、太陽系の中でハビタブルゾーンに位置する唯一の天体です。ハビタブルゾーンとは、液体の水が天体の表面に安定して存在しうる領域で、生命が生存可能であるとされています。まさに地球は、いろんな生き物にとってちょうどいい場所にある星なのです!
地球という閉じられた空間の中で、いろんな生き物や環境がそれぞれ複雑につながりあってこの世界ができています。そのつながりの深さは、この地球で暮らす上で忘れてはいけませんね。
自然が織りなす美しい景色も、人によって作られた建築物も、どことして同じ風景はありません。ちなみに、花井さんオススメの風景はカナダにある「ドラムヘラー」だそうです。谷底にある田舎町で、恐竜の化石が多く見られる中生代の地層があり、河川の浸食によるダイナミックな地形も楽しめるのだそう。
最近、色彩の勉強をしていたこともあり、地球の彩りの多様さに改めて気づいたそうです。身近な人工物や自然の中から、色集めをしてみるのも良いかもしれません。「お気に入りのボタンの色」や「蝉の羽の色」などをカメラに収め、みんなで見せ合いっこするのも楽しそうです。
地球が誕生してから約46億年。生き物がいなかった時代も含め、長い歴史がつながりあって今があります。今この瞬間、最新の思い出が地球に刻まれているということですね。
この他には、「支配したと勘違いしている生物が生きる星」や「あわただしい星」などもありました。人によって地球のとらえ方に違いがみられ、とても興味深いです。
みなさんの目には、この地球はどんなふうに映っていますか?
科学コミュニケーターの見ている世界を少しのぞき見したところで、もう少しいろんな方々の地球のとらえ方も知りたいな…なんて思いはじめてきたのではないでしょうか?少なくとも、私は知りたい!
ということで、このブログをご覧のみなさん、地球のことを教えてください!みなさんの目には、この地球や世界はどんなふうに映っていますか?地球ってどんな星ですか?
投稿いただいたものは、後編ブログでご紹介させていただきたいと思います。
この夏、のんびりと地球のことを想いおこしながら、みなさんの目に映る地球やこの世界の姿を、自由に言葉でつづっていただけたらと思います。投稿、お待ちしております!
投稿フォームはこちら(募集期間:9月30日まで)
【関連リンク】
鈴木出版公式チャンネル 「地球のことをおしえてあげる」の紹介動画
https://www.youtube.com/watch?v=5oWGgzjpQLM
【関連図書】
ソフィー・ブラッコール (作・絵) 横山和江 (訳),地球のことをおしえてあげる,鈴木出版,2021.