日本科学未来館では今年もノーベル賞イベントを行います!
科学コミュニケーターと発表の瞬間を迎えよう! ノーベル○○賞
https://www.miraikan.jst.go.jp/events/202110062125.html
今年のノーベル賞はどのような研究に贈られるのでしょうか。
物理学チームメンバーの上田が考える、今年の推し研究について聞いてみました!
私たち生物も物理現象に支配されていた
健康診断など医療現場で今や当たり前のように使われるようになったMRI検査。身体の輪切り写真を撮影し、体内を詳細に検査することができます。MRIはMagnetic Resonance Imagingの頭文字をとった言葉で、磁気共鳴画像法などと訳されます。
上田:MRIに関する発見については、2003年にポール・ラウターバー氏とピーター・マンスフィールド氏がノーベル物理学賞を受賞しました。また、この技術のもととなっているNMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)法に関する研究は、1944年にイジドール・イザーク・ラービ氏、1952年にフェリックス・ブロッホ氏、エドワード・ミルズ・パーセル氏がノーベル物理学賞を受賞しています。まさに、ノーベル賞級の研究が凝縮された技術といえると思います。
昔から研究が積み重ねられてきた分野なのですね。他のいろんな分野への応用もありそうですね。
上田:MRIの一連の研究は、物理学が生物へ応用された例として面白いと思います。生物の体も細かく見れば分子や原子からできており、物理現象に支配されていることに気づかされ、私自身ハッとしました。ちなみに、これもまた現代の医療に欠かせないX線撮影について見ても、X線を発見した功績として1901年のノーベル物理学賞を受賞しています。生物を物理学の視点から見ると新しい世界観が広がります。
生物も物理現象…。よくよく考えれば当たり前なのかもしれませんが、ふだんは全く考えてこなかった新しい視点です。
上田:MRIの技術はさらに進歩し、今ではfMRI (functional Magnetic Resonance Imaging:機能的MRI、磁気共鳴機能画像法)という技術も当たり前になりつつあります。この分野では小川誠二氏が有名です。この技術を使えば、たとえば脳の活動をより詳しく調べることができます。脳内で活動が活発になっている部位では酸素がより多く消費され、血液が集中します。それによってわずかに変化する磁場をとらえることで、脳の活動部位を可視化することができます。たとえば、この記事を音読しているときと黙読しているとき、あるいは暗算をしているときでは、脳で使われる部位が異なったりします。fMRIではそうしたことも教えてくれます。生物をさらに詳しく知ることを可能にしてくれた物理学として、fMRIが私にとっての推し研究になっています。
上田は他にも、フリッツ・ツビッキー氏、ヴェラ・クーパー・ルービン氏、ピーター・セルレミトス氏による暗黒物質(ダークマター)の実証についても気になる話題とのことでした。今年のノーベル物理学賞はどんな研究が受賞するのか、10月5日(火)17:30からの放送でぜひ私たちと一緒にノーベル賞を楽しみましょう!
<関連リンク>
●ニコニコ生放送
10月5日(火)17:30~19:00
【物理学賞】ノーベル賞発表の瞬間をみんなで迎えよう@日本科学未来館
https://live.nicovideo.jp/watch/lv333369196
※登録等無しで即視聴可能
●科学コミュニケーター金祉希による小川誠二先生の研究紹介の記事
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/201409092014-1.html
●Yahoo! THE PAGEの太田の記事
「実現するか?『量子コンピューター』いったい何がすごいのか」
https://news.yahoo.co.jp/articles/9117110439f3abe08fec6fd974af1d9c811ac3dc?page=1