アンニョンハセヨ~!!
今年もやって参りました!ノーベル賞予想隊!!
ブログ初登場、ノーベル予想隊初参戦の科学コミュニケーターの金祉希(きむ じーひー)です。
初めてづくしの私ですが、満を持して予想しちゃいます。
私が予想する今年のノーベル生理学・医学賞の受賞者は、こちらです!!
受賞者:小川誠二(おがわ・せいじ)東北福祉大学教授
受賞テーマ:fMRIの基本原理の発見
この研究のここがスゴイ!!
病院で画像診断する時によく使われている MRI 1) 。
みなさんもこの言葉、一度くらいは耳にしたことあるかと思います。
磁気を利用して、体の輪切り画像を撮影する手法で、解剖学的視点から捉え、
その構造を診断できるものです。
では、fMRI 2) というのは、何でしょうか?
MRIの前に " f " が付いていますね。この "f" は、" functional(機能的)" のfです。
つまり、fMRIとは、MRIで得られた脳の構造の上に、脳のどの領域が活動しているかをリアルタイムで画像化できる手法です。
MRIだけでは難しかった脳の活動様子を直接視覚化できる非常に画期的な手法なのです。
このfMRI開発に大きく貢献したのが、小川誠二先生です!!
先生は、この技術を支える基礎原理を発見しました。
脳の活動を視覚化する
では、脳の活動様子がわかる画像って、どのようなものでしょうか。
はい!
私、このために、自分の脳を撮ってきました!!
母校W大学でfMRIを使って研究している研究室で撮影してもらいました。
この研究室は、fMRI使って運動と脳をテーマにとても面白い研究を行っていますが、その内容は、また別の機会にご紹介するとしましょう。
fMRI装置がこちら。
この装置にドキドキしながら、入ります。
そして、仰向けに寝て、いよいよ脳を撮影。
その結果、撮れた私の脳画像がこちら!!
じゃん!!!
脳画像の中に、色が付いている場所、ありますよね。
脳が活動している部分を表しています。
二つの画像を比較してみて、何か、お気づきでしょうか?
左の画像と右の画像で、色が付いている部位が異なります!
実は、左は、言葉を発している時の脳活動、右は、手を動かしている時の脳活動なのです。
言葉を発している時は、言語中枢であるブローカ野という領域が活動し、
手を動かす時は、運動野という領域が活動します。
ちなみにこの時は、右手の指を動かしていたので、左脳が活動していますね。
私たちの脳は、領域ごとに司っている役割が異なっていて、空間的にはっきり分けられます。
この空間的な区別が画像化にとって、とても好都合なわけですね。
そして、上記のfMRIの画像で示されている活動場所は、神経活動ではなく、
実は、血流の変化を見ています。
その血流変化は、神経活動が起きた部位と空間的にほぼ一致していることがわかっています。
脳内である神経活動が起きると、その部位にピンポイントで血流が増加します。
小川先生は血流の変化に伴ってMRIの画面のコントラストも変わることを発見し、
この現象が脳の活動を可視化するのに役にたつとひらめき、その理論を確立したのです。
偶然のマウスの酸欠から発見した理論
fMRIの基礎原理は、実は、偶然に起こったマウスの酸欠から発見したそうです。
MRIが普及し始めた1980年代後半、先生は「脳の構造だけでなく、
活動自体を捉える方法はないか」と思いながら、
アメリカのベル研究所でMRIの研究をしていました。
そんなある日、MRIを使ってマウスの脳画像を撮影している時に、
マウスが急に酸欠に陥ってしまいました。
先生は、慌てて大量の酸素をマウスに吸わせました。
すると!!
なんと血管を示していた細い黒い線がMRIの画像から消えて、真っ白になりました!!
いったい何が起きたのか??
先生は、ひらめきました。
血液中にあるヘモグロビンが関係しているのではないかと。
動物は酸欠になると、まず脳を守るために、
他の臓器より脳の方にたくさんの酸素を送ろうとします。
なので、脳内の血管に酸素と結合したヘモグロビンが増えます。
この血流量の変化がMRIの信号の強さを変えたと先生は確信しました。
もう少し具体的に説明しましょう。
血液中には、酸素を手放したヘモグロビン(脱酸素ヘモグロビン)と酸素と結合しているヘモグロビン(酸化ヘモグロビン)があります。
脱酸素ヘモグロビンは、磁性を持っていて、酸化ヘモグロビンは、磁性を持っていません。
なので、上の絵に書いてあるように、神経細胞が休止している時は、
脱酸化ヘモグロビンが磁場の不均一をもたらし、
MR信号が弱い状態にあります。
しかし、神経細胞が活動すると、血液流量が増え、
酸化ヘモグロビンがより多く供給されて脱酸化ヘモグロビンの割合が減少します。
それによって、MR信号が強くなります。
このように、血液中の酸素濃度によって、
MR信号の強弱が変わる現象があるとして、
小川先生は、BOLD (Blood Oxygenation Level Dependent) 法と名付けて、
1990年に、アメリカの学術雑誌 (Proceedings of the National Academy of Sciences) に論文を発表しました。
この時は、まだ注目されなかったのですが、
その2年後、先生は、人間でも同じような現象があることを見つけ、
論文で発表すると、世界中から大きな注目を集めるようになりました。
この理論に基づいて、開発されたのが現在のfMRIです。
fMRIが開く未来。
小川誠二先生の基礎原理の発見により、
fMRIは1990年代後半から2000年代初頭にかけて急速に世界中に普及し、
人の脳機能を画像化するのに主力をなしています。
fMRI応用は、医学・神経科学・心理学・社会科学など、いろいろな分野に及んでいます。
たとえば、脳内の動きをみることで、精神の病気を診断したり、
心を読んだりする研究も盛んに行われています。
そして、アルツハイマー病の患者と健康の人で脳活動のパターンが違うことがわかってきたので、
病気の発症前の診断や治療に役にたつ可能性が出てきました。
それだけではありません。
最近では、なんと、夢を解読しようとする動きもあります。
夢を見ている時に活動している脳の場所と、
その夢に関連する画像を見た時の脳活動パターンを調べて、
夢の内容を推定する内容です。
fMRIを使えば、将来は、みなさんが昨日みた夢を可視化できるようになるかもしれません!
ということで、今年のノーベル生理学・医学賞の発表は、10月6日(月)日本時間18時30分から!!
お楽しみに!!
1) MRI:Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像法)
2) fMRI: Functional MRI(機能的共鳴画像法)
今年のノーベル賞関連イベントに関してはこちら。 (リンクは削除されました)
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