科学コミュニケーターと楽しむノーベル賞2021

科学コミュニケーター竹腰の推し研究~光るってカッコいい!有機EL開発までの長い道のり

日本科学未来館では今年もノーベル賞イベントを行います!

科学コミュニケーターと発表の瞬間を迎えよう! ノーベル○○賞
https://www.miraikan.jst.go.jp/events/202110062125.html

今年のノーベル賞はどのような研究に贈られるのでしょうか。
化学賞チームメンバーの竹腰が考える、今年の推し研究について聞いてみました!

化学賞チーム 竹腰麻由

有機EL開発の道のりとブレイクスルーになった研究

スマートフォンやテレビのディスプレイなどで身近になりつつある有機EL。有機 Electro Luminescenceの略で、電界発光と翻訳されます。電圧をかけて有機分子を光らせる技術です。今でこそ、この技術は当たり前になりつつあります。しかし、その技術開発は決して簡単な道のりではありませんでした。

まず、そもそも有機分子はほとんど電気を通さないと考えられていました。有機分子とは、炭素原子を多く含む分子のことです。砂糖やゴム、プラスチックなどが一例です。1970年代に導電性プラスチックの製造方法を確立した白川秀樹氏は、2000年にノーベル物理学賞を受賞しました。それ以前は、プラスチックのような有機分子はほとんど電気を通さないということが常識だったのです。

また、たとえ電気を通したとしても、有機分子が強く光ることはありませんでした。1960年代前後、アントラセンという有機分子に高い電圧をかけることで光ることが知られていましたが、まだまだ弱い光でした。

アントラセン

こうした状況を変えたのが、1987年に発表されたチン・ワン・タン氏の研究でした。タン氏は有機分子がある場所でマイナスの電気とプラスの電気がうまく出会うように設計された積層型デバイス開発を行いました。この開発のおかげで、10ボルト以下の電圧で十分な発光が得られたのでした(一般的な乾電池の電圧が約1.5ボルト)。1990年代以降、有機ELに関する研究は飛躍的に進歩し、現在に至っています。

チン・ワン・タン氏が開発した積層型デバイスを筆者が簡略化して作図したもの。有機分子がある層(黄色)を、電極の層や、マイナスの電気とプラスの電気を通しやすい層で挟んでいる。有機分子がある層でマイナスの電気とプラスの電気がうまく出会うように設計されている

竹腰:私は大学時代、アントラセンを含む光る分子の研究をしていました。それだけに、光る分子の塊、有機ELの開発にも大きな魅力を感じます。そのブレイクスルーとなったタン氏の研究が今年の推し研究の一つです。光るってカッコいい!

また、竹腰は他にも、ルイ・ブラス氏による量子ドット(コロイド状半導体ナノ結晶)の発見についても話題として気になるとのことでした。今年のノーベル化学賞はどんな研究が受賞するのか、10月6日(水)17:30からの放送でぜひ私たちと一緒にノーベル賞を楽しみましょう!

<関連リンク>
●ニコニコ生放送
10月6日(水)17:30~19:00
【化学賞】ノーベル賞発表の瞬間をみんなで迎えよう@日本科学未来館
https://live.nicovideo.jp/watch/lv333369217
※登録等無しで視聴可能

●有機ELに関する過去のブログ記事はこちら
科学コミュニケーター竹腰麻由
光るってかっこいい! 未来をかえる?有機EL研究の最先端
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20190624el.html

●Yahoo! THE PAGEの竹腰の記事
「私たちの生活にどう役立っている? ノーベル化学賞 過去の受賞研究」
https://news.yahoo.co.jp/articles/fea18729e61709690944a88b43f543799ebf1234

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