【YouTube動画公開】未来館ってどんな場所? 日本手話と日本語でご紹介します

未来館に来たことがある人もない人も、こんにちは! 科学コミュニケーターの田中です。

……と名乗ってはみたものの、みなさん「科学コミュニケーター」って知っていますか? 未来館に来たことがあっても、そんな人たちが働いているなんて知らなかった!という人もいるかもしれません。ですが、科学コミュニケーターがいつも展示フロアにいることは、未来館の特徴のひとつなのです。

未来館は、予備知識がなく遊びに来ていただいてももちろん楽しめます。でも、未来館の中にはなにがある? どんな人がいる? どんなことができる? など事前に知っておけば、未来館をもっと楽しめるのではないでしょうか。

加えて、私たち未来館スタッフは常々「未来館をもっといろんな人に楽しんでもらいたい」と考えてきました。未来館がどんな人にも開かれた場であることを知ってほしい。

そんな想いで、未来館について日本手話と日本語で紹介する動画をつくりました。

耳がきこえない・きこえづらい人が動画を見るときに必要なのは、日本手話や日本語字幕などの視覚情報。一方、目が見えない・見えづらい人の場合、動画を耳できいて情報を得ていることが多いでしょう。こうした多様な人たちに未来館のことを伝えるために、動画は日本手話と日本語の字幕、日本語のナレーションでお届けします(英語の字幕をつけたバージョンも、後日公開を予定しています)。

ろう者の言語である日本手話で

日本語字幕があるのに日本手話も必要なの? と思った人もいるかもしれません。でも、字幕と日本手話の両方を入れることは、とても大切なのです。それは、日本手話は日本語とは異なる言語だからです。耳がきこえない人の中でも手話で生きる人のことを「ろう者」といいますが、ろう者にとっての第一言語は手話で、日本語は第二言語。つまり、日本語の字幕は、外国語の字幕のようなものです。たとえば私は日本語が第一言語なので、英語の字幕をネイティブと同じスピードで読むことはできませんし、理解するために集中力も必要です。それと同様に、ろう者が日本語字幕を聴者と同じように読むのはかなりハードルが高いことだといえます(それができるろう者も、もちろんいます)。日本語の字幕さえつければろう者にも充分に伝えられるわけではなく、日本手話による情報提供も重要なのです。

ろう者とつくった手話動画

この動画のこだわりポイントは、なんといってもろう者と一緒につくったこと。ろう者やそのまわりの人たちに楽しくわかりやすく未来館を知ってもらうためには、やっぱり当事者にお願いするしかない!と考えたからです。動画の構想段階でろう者と相談するところからはじめ、すべてのステップにおいてろう者と協力して完成させた動画です。

先述のとおり、日本手話は日本語とは異なる言語。英語や中国語などの外国語を勉強しても、文法や言い回しなど完璧に身につけるのは難しいですよね。それは日本手話も同じ。ろう者が自然に楽しめる動画にするためには、やはり手話で生きてきたろう者の手話表現が重要だと考え、日本語の原稿から手話への翻訳と手話監修、手話での案内(動画出演)は、ろう者にお願いしました。

また、日本手話だけでなく日本語の原稿についても、ろうの子どもたちにもわかりやすいようにとアドバイスをいただきました。たとえば、「科学にまつわる」という表現よりも「科学に関する」の方がわかりやすい、漢字にはすべてふりがなを振るとよい、など。ろうの子どもたちをよく知るろう者の立場からの視点も踏まえて、字幕を完成させることができました。

さらに、撮影や編集、監督もろう者。どのような画角で手話を撮影したら手話が見やすい? 目で情報を得るのにわかりやすい構図は? など、信頼してお任せしました。

具体的には、以下の役割をそれぞれのろう者に担当していただきました。

撮影・編集・監督:今井ミカさん(株式会社サンドプラス)
手話翻訳・出演:寺澤英弥さん(株式会社OSBS)
手話監修:森田明さん

未来館で1日みっちり撮影した後に撮った集合写真。前列左から2番目が寺澤さん、右端が今井さん。手話通訳者のみなさんやメイクさんにもご協力いただき、がんばって撮影した1日でした! ポーズは、「未来館」の「未来」を手話で表現しています。静止画だとなかなか伝わりづらいので、「未来」がどんな手話なのか気になる方は、動画でチェックしてみてください!
手話監修の森田さんは、未来館での撮影に立ち会えなかったため集合写真に写っておりません……かわりに、とある撮影日の様子をお届け。ろう者3人のチームワークがとてもいい感じ!

手話動画制作ならではの苦労も……

未来館の担当スタッフはみんな耳がきこえる聴者。第一言語は日本語です。そして、手話動画の制作は初めて。想定外のことが起きたり、書記言語をもたない言語ならではのやり方に出会ったり(たとえば、手話の“原稿”は文字で書くことができないので動画でつくり、手話表現を修正したときには動画を撮り直します)、たくさんのことを学ぶ機会になりました。詳しくは、また別の記事でご紹介する予定です。
撮影した動画の手話表現と、事前に手話監修・森田さんと合意した手話表現にズレがないかを確認する今井さんと田中。手話を勉強中の田中には気づけない表現のちがいもあり、学ぶことばかり。素敵なろう者のみなさんと取り組んだ動画制作は、最高に楽しかったです。奥に映っている動画確認待ちの寺澤さんは、なんとこの日の台詞をすべて暗記してくれていました……! おかげでスムーズに撮影が進行しました。ありがとうございます!
画角について確認する今井さんと未来館スタッフの相川、佐藤。そして手話通訳者の方たち。相川は、ろう者とも手話通訳者とも一緒に仕事をするのは初めてでしたが、この仕事を通して手話やろう者への興味が増したようです。

手話やろう文化に興味をもつきっかけに

ろう者と聴者は異なる言語で生きています。そして、目で情報を得て手話で生きるろう者には、聴者の文化とは異なる「ろう文化」があります。聴者はふだんあまり意識しないかもしれませんが、きこえないからわからないことがあるのと同じように、きこえるからわからないことも、たくさんあるはずです。たとえば、きこえるからこそ、音だけで判断して見るべきモノが目に入らないこともあるかもしれません。きこえる人がこうした点を見つめ直し、いまの社会においてマイノリティであるろう者や彼らの言語である手話、ろう文化を、もっと尊重する社会になってほしいと、私は考えています。

今回の動画は、手話で生きるろう者のみなさんに、日本語ではなく日本手話で情報を届けたいという想いを込めてつくりました。ですが、最初にも述べたとおり、この動画はきこえる人、きこえない人も含めてより多くのみなさんに未来館のことを知ってもらうための動画です。聴者のみなさんには、この動画で未来館を知るだけでなく、日本手話やろう文化に興味を持つきっかけになればうれしいです。さらに、目の見えない・見えづらいみなさんにも見てもらえたら、なにか素敵なことにつながりそう! たとえば、今回の動画は映像を見なくても音声だけも未来館のことを理解できるようにつくりましたが、動画に映っている手話の表現を、見えない・見えづらい人にどう伝えるかというのも、ひとつの奥深いトピックだと思います。

なにはともあれ、みなさんぜひご覧ください!

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