藻でお肉を育てる?研究者に培養肉について聞いてきた!(前編)

「培養肉」を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?

「培養肉」とは牛などの動物の細胞を人工的に育ててつくるお肉のこと。近い将来おとずれるかもしれない食料危機に備え、またお肉を育てるときの環境負荷を少なくするサステナブルフードとして研究されています。

でも、培養肉っていったいどんな風に培養されているんだろう、食べても大丈夫なのかな、おいしいのかな、などなどいろいろ気になることだらけです。

そこで、科学コミュニケーターの増田・平井・片岡が、早稲田大学先進理工学研究科(で培養肉を研究している准教授の坂口勝久さんにお話を伺ってきました!

その様子を私増田が、前編、後編に分けてご紹介していきます。この記事は前編になります。

後編はこちらです。

藻でお肉を育てる?研究者に培養肉について聞いてきた!(後編)

https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20230224post-485.html

培養の楽しさを語る、早稲田大学の坂口さん

培養肉ってどんな肉?

培養肉を見たことがある方はほとんどいないのではないでしょうか。もちろん私も見たことも、食べたこともありませんでした。

百聞は一見にしかず、ということで坂口さんに本物の培養肉を見せてもらいました!

約5gの培養肉(緑色の葉や赤い実、白いクラッカーは付け合わせ)

「うわ、うまそう」

赤身に一部サシも入り、脂がのっていて率直においしそうな見た目です。

いったいどんな味がするんでしょうか……。 

坂口さん「(安全か試験していないため)実はまだ食べたことはありません。自己責任で食べたことがある人の話によると、不思議なくらいお肉に近いらしいです。いずれはお肉のプロの方にチェックしてもらって、牛肉だって言ってもらえたら私たちの勝ちですね」 

日本ではまだ培養肉は販売されていませんが、シンガポールでは販売されているところもあるといいます。早く食べてみたい!

 

 

そして消費者としてはお値段も気になるところ。

この培養肉、約5gのとても小さな肉片ですが、なんとこれ一つをつくるのに40万円かかっているのだとか。40万円のサイコロステーキ、神戸牛越えです。これはまだまだ手がでません。

 

培養肉の開発には様々な課題があるそうですが、この生産にかかるコストが大きな課題とのこと。いったいどうしてこんなに高くなってしまうのでしょうか。

どうやってつくる?

培養肉のつくり方

牛や豚といった家畜の細胞を取り出し、それを培養液に入れ、増やします。増やして大きくなった細胞は組織化され、最終的に一つのお肉になる、というのがざっくりとした培養肉のつくり方です。

 

さて、これらの工程のなかで、どこにコストがかかっているんでしょうか。

坂口さん「まず培養液が非常に高いんです。培養液は今のところ穀物や血清成分からできていますから、その材料にコストがかかります。それと実は電気代もすごくかかります。細胞を育てるには培養液をあたためて、混ぜ続けなければいけない(攪拌培養)ので、これを数千リットルの培養液やろうとするとものすごいエネルギーが必要になります」

 

細胞もほっとけば育つというわけではないんですね。しかし、このままではとても買えないので、どうにか安くなってほしいところです……。

培養肉を受け入れられる?

消費者に受け入れてもらえるか、という課題もあるそうです。新しい技術でコストを下げようとすると、この課題はさらに大きくなる可能性があります。

坂口さん「普通の細胞は無限に増やせるわけではなく限界があります。ゲノム編集を使って不死化させ、細胞を無限に増やせられればコストを減らすことができますが、みなさんが『ゲノム編集』や『不死化』をどう考えるかはとても重要です。ですので、研究者が安全性をしっかりと証明する必要があります。」

ゲノム編集によって効率的に培養肉がつくれるかもしれない

坂口さん「コストはかかりますが、ゲノム編集をつかわず、さらに全部食品として認可されたものを使ってつくった培養液でどれくらい増殖できるか、といった研究もしています」

食べるものですから培養肉も当然安全で、安心できるものであってほしいですね……。

私たちが不安に感じるポイントがあるとしたら、それはなんなのか、私たち市民も関心をもって研究者と話し合っていくこと、ルールづくりに参加していくことが重要だと改めて感じました。

 

後編では坂口さんが考える培養肉研究の未来像を探っていきます。

ぜひ後編もご覧ください。

「環境・エネルギー」の記事一覧