霜柱実験① ~そうだったのか!霜柱!~

こんにちは!梶井です!

すっかり寒くなり、朝起きるのがつらい季節になりましたね。

最近の私のブログは少々マニアックな話が続きましたが、今回は身近な話で季節の変化を科学的に感じてみましょう! 私が選んだ今年の冬の主役はこちら!

踏むと「ザクザクッ!」という音が楽しい、冬の風物詩の「霜柱」です!

なぜ、今さら霜柱の話をしようかと思ったか。 それは、先日、雪の研究で有名な 中谷宇吉郎の本の一文で思わず叫びそうになったくらい驚いたからです!

「霜柱は~(中略)~ドイツなどではできないというので(後略)」

梶井「(なんてことだ!!!)」

正確には「ドイツなどでは霜柱はできにくい」だとは思うのですが、自分にとって、冬になればできて当然の存在であった霜柱が「できない」ところがあるなんて!

いてもたってもいられず、調べてみたところ、金光達太郎氏による「霜柱の生長に関する研究」(千葉大学園芸学部学術報告(第30号, 61-86 (1982))に出会いました。

この報告の中にも、「1870年頃から1880年頃にかけて、霜柱を見たというような断片的な報告が、(英国の学術論文誌)Natureの寄書欄に盛んに掲載されたことがある。しかしそれらは、英国では珍しい現象だったために興味を持たれただけで(後略)」とあります。イギリスでも霜柱はできにくいようです。

この報告では、霜柱の生長の条件や生長の様子を、数式を使いながらで扱っていて、そういう科学があったこと自体も驚きでしたが、特に以下の2つの文が衝撃的でした。

「霜柱は、冬の最低気温が、しばしば0 ℃~-10 ℃になるという気象現象と、火山灰を含むという土壌条件の両方をそなえ、しかも雪の少ない地方の地表によく見られる現象である。わが国では関東平野がその代表的な地域で、これに中部地方、東北地方南部の平野地域が加えられる。」

「霜柱は、農業、土木、造園の分野で大きな問題を提起している。すなわち冬作物の根を押上げて生育を妨げ、運動場の長期にわたる霜どけのぬかるみをもたらし、道路を破壊し、場合によっては山腹や法面の崩壊をもたらすこともある。」

25年間も茨城という首都圏に引きこもっていた自分の世界の狭さを痛感しました。

そして、小さい頃から踏んで楽しんでいた冬の風物詩が、一方では害をもたらす存在であったことに驚きを隠せませんでした。

霜柱で農家の方々がどのような被害を受けているかにも興味はありますが、今回は、霜柱ができる条件に焦点を当ててお話します。

霜柱は以下のように生まれます。

① 冬の冷えた夜・・・
② 水分が地表で凍る。
③ 地中の水分が毛細管現象によって地表方向に移動。
④ 地表で凍っている部分を押上げながら、ニョキニョキと柱状に凍結。

ポイントは、空気中の水蒸気が凍ってできるのではなく、地中の水分が凍ってできる点です(空気中の水蒸気が凍ったものは"霜")。
なので、霜柱の表面には一番初めに凍ったところの土が付いているんですね。ふむふむ。

さて、先程の千葉大・金光氏の報告書によれば、霜柱の生長に欠かせない因子は二つあるそうです。

(a) 気象条件
(b) 土壌条件

(a)に関しては、水が凍るために地表面温度が0℃以下になる必要があることを指します。
外気温だけでなく、地面の冷却に影響を及ぼす夜間の放射や対流などといった気象条件が重要となります。

ここまでをまとめると、晴れて冷え込むような夜は霜柱ができやすいわけですね。
「霜柱の立ちたる日は天気が良い」という観天望気もあるようですが、「昔の人は自然を良く観察していたんだなあ」と改めて感心します!

そして、温度さえ適切ならばどこでも霜柱はできる!というわけではなく、(b)の土壌条件が必要となります。

まず、土壌水分が地表に氷として析出するためには、土の表面に微粒子が含まれている 必要があります。
その後、毛細管現象によって地中からの水分補給が行われます。これがきちんと起こるために、土壌中に細かい隙間のあることが重要となるわけです。
土がフワッフワの畑だと霜柱が良く立って、踏み固められた地面だと霜柱が立たない秘密はこのあたりにありそうです。
もちろん、適度な水分も必要です。カラカラに乾いていてはダメなだけでなく、地中の水分が多すぎても、隙間が埋まってしまって逆効果らしいです。難しいですね。

関東地方は、関東ロームという火山灰由来の土に覆われています。これが霜柱に適した土壌条件を満たしているので、関東では霜柱をよく見ることができるわけです。

「今まで気付いてあげられなくてごめんよー!」と、霜柱たちに対して謝罪したい気持ちでいっぱいです。

と、ここまで霜柱ができる条件についてお話してきたのですが、梶井にはある信念があります。

「科学は実験をしてこそ!!」

ということで次回のブログは、
霜柱実験②~霜柱をつくってみたよ!~ → Coming Soon!
です!お楽しみに!

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