どうして日本は火山が多いのだろう? ~最近の火山噴火や兆候を受けて~

 今年の5月29日9時59分に、鹿児島県の屋久島の西側12キロに位置する、口永良部島の新岳にて爆発的噴火が発生しました。この噴火によって噴出した火砕流は海岸まで達しており、今後も規模の大きな噴火が発生する可能性があるそうです。この島には、約80世帯、130人あまりが暮らしていて、火砕流の熱風で火傷を負った男性がいるとの報道がありましたが、この方を含め、皆さんが隣の屋久島へと避難しました。総務省消防庁から「全島民の方の無事が確認された」という発表が早い段階であったので、胸をなで下ろしました方も多かったのではないでしょうか。

 最近は本当に火山に関するニュースが多く、つい先日も箱根山の活動が活発になったため、警戒レベルが2に引きあげられ、観光業がダメージを受けています。昨年の御嶽山も記憶に新しいところです。このような話に触れるたび、日本はつくづく火山が多い国だなと実感させられませんか。

 火山ができる場所というのは決まっています。その「火山ができる場所」に日本は存在しているため、我々は火山と上手くつきあっていかなければなりません。それには、「火山はどこにできるのか、どうして噴火するのか」ということを知る必要があるのではないでしょうか。これらのことを知るためには、地球システムという切り口で見ていく必要があります。それでは早速、この切り口で見ていきましょう。

 

 そもそも地球システムとは何でしょう。様々な捉え方がありますが、「熱および熱をともなった物質の移動、循環のこと」と言うことができます。火山の噴火は地球システムの中で発生する一つの現象、地球内部のエネルギーを地表に放出する現象です。先ほど、「火山ができる場所というのは決まっています」と述べましたが、火山は「ホットスポット」「海嶺」「沈み込み帯」の3ヶ所にできます。日本は沈み込み帯に位置していますが、一つ一つ、どのような場所かをご紹介しましょう。

 火山が放出している地球の熱とはどこから来るのでしょうか。地球の熱は大きく2つ、地球が誕生する時に衝突した微惑星の運動エネルギーが熱に変わったもの、岩石に含まれるウランなどの放射性物質が別のものに変わるときに放出される熱です。地球はこの2種類の熱を持っており、その分布を見ると地表は低温で、中心に向かうに従って高温になっています。私達のいる地球はよく卵に例えられるのですが、卵の殻、白身、黄身にあたる部分を地球ではそれぞれ地殻、マントル、核とよびます(図1参照)。

図1 たまごと地球を比べてみる

 地球はこの内部の熱によってマントルで対流が起きていると言われています。そしてこのマントルの上昇流をホットプルームと呼ぶのですが、地球には地殻を突き破って地表付近にホットスポットと呼ばれるマグマのたまりやすい場所がつくられることがあります。これが、火山ができる場所のひとつ目であるホットスポットです(図2参照)。

 卵に置き換えると、黄身が熱くて、その熱を受け取る周囲の白身はゆっくり動いています。そして卵の表面の小さい領域でとくに熱くなっている部分がある、といえます。

 残り二つの火山ができる場所、海嶺と沈み込み帯についてお話しするには、プレートというものを紹介しなければなりません。マントルの表層部と地殻をプレートと呼び、現在の地球表面は十数枚のプレートでおおわれています。プレートは運動していて、このことをプレートテクトニクスと言うのですが、どこかで耳にしたことはありませんか。

 またもや卵で置き換えると、殻にひびが入っていて、さらにはその殻がゆっくりと動いているのです。想像してみてください、なんだか凄くないですか。

 このプレートがお互い離れるところ、いわゆる新しいプレートが生まれているところを海嶺といいます。海嶺は、離れたプレートをマントルが上昇して埋めることでつくられ、ここにもマグマの溜まりやすい場所ができます。この海嶺が火山活動の起こる場所のふたつ目になります(図2参照)。

 そして火山ができる場所の最後の一つ、沈み込み帯はプレートが別のプレートの下に沈み込んでいく場所の事をいいます(図2参照)。沈み込んだプレートはさらにマントルの下へと潜っていきます。沈み込んだプレートは海水によって冷やされること、プレート中の鉱物が圧力などによって別の鉱物に変わることで重くなるため、下に引き込まれていくのです。この動きが、プレートを動かす原動力になっていると言われています。火山活動の原因として見過ごせないのは、この沈む込むときにマントルの中に海水が取り込まれる点です。水の影響によってマントルが融ける温度が下がるため、マグマが溜まりやすい場所ができます。

図2 火山ができる3ヶ所

 ここまでまとめますと、火山ができる場所は、ホットスポット、海嶺、沈み込み帯の三カ所でこれらの場所には、マグマが溜まりやすい場所である、という共通点があります。マグマが溜まることが火山には欠かせないため、逆にマグマが溜まらないところには火山はできません。それでは、どのようにマグマが溜まるか、そして噴火まで至るのか、というところを紹介したいと思います。

 まず、マグマとは何でしょうか?マグマとは、地下の岩石が融けて液体状になったものです。ちなみにこれまで何度も出てきているマントルは固体、いわゆるかたまりです。これまで何度か地球を卵に置き換えてきました。生卵のドロドロの白身をイメージして、マントルは液体だと思われていた方も多いと思いますが、マントルは固体です。

 ホットスポットや海嶺ではマントルが熱いまま上昇してきます。このとき、ほとんど温度は下がりませんが、圧力は下がります。地球の内部から地表に向かえば向かうほど、周りから押される力が弱くなるため、圧力が下がるのです。圧力が下がるとマントルが融ける温度が下がるためマグマができます。

 沈み込み帯では先程述べましたが、水の影響によってマントルが融ける温度が下がり、マグマができます。

 このようにして生まれたマグマは、周囲のマントルより軽いので上昇していきますが、ある程度上昇すると周りの重さと釣り合いそこで止まります。こうして、マグマはある場所に集まり、マグマだまりをつくるのです。

 マグマだまりに集まったマグマはずっと変わらないでいるかというと、そんなことはありません。周囲の岩石と反応することもあれば、何よりマグマだまりでは鉱物の結晶が生成されます。鉱物が生成されるとマグマの成分が変わるため、さらに軽くなってマグマだまりからマグマは浮上します。

 こうして浮上したマグマに溶けていたガスが気体になり、体積が急激に膨張するため起きる爆発現象が噴火です。また、マグマに溶けていたガスが気体にならなくても、マグマが上昇した際に近くの地下水を温め、これが水蒸気になることで爆発することもあります。これを水蒸気爆発と言います。昨年9月に噴火した御嶽山は水蒸気爆発でした。

 ここまで、火山がどこにできるか、どうして火山は噴火するのか、地球システムという切り口でお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか。冒頭で、火山ができる場所に日本は存在していると述べましたが、日本はフィリピン海プレート、太平洋プレート、ユーラシアプレート、北アメリカプレートの4枚のプレートにまたがっています(図3参照)。

図3 日本にまたがるプレート

(こちらは未来館ボランティア力作の模型です。海のプレートが他のプレートの下に沈み込むところのうち、6,000 mより深いところを「海溝」、浅いところを「トラフ」といいます。四国の南には4,000 m級のトラフがあり、南海トラフと呼ばれています。火山フロントとは、海溝にほぼ平行に存在する火山分布の、海溝側の境界線です。この火山フロントからみて海溝側に火山はできません。2ヶ所、「火」の文字がとれてしまい、山フロントになっていますが、こちらも火山フロントを示しています)

 プレートが複雑に沈み込んでいるその真上に日本は存在しており、火山の存在、そしてその噴火は避けられません。地球の熱い内部から冷たい地表に熱をはき出す、その一つの活動が火山の噴火であり、それが起こる場所に我々は住んでいるのです。

 こうした事実を改めて見つめ直し、一人一人が火山に今よりもう少し関心をもって上手につきあっていくこと、例えば普段の生活の中でも時々近くの火山が噴火したときの事を考える、火山近くの温泉を訪れる際にはこれまでの噴火について気にかけることが、大切なのではないではないでしょうか。

 最後に、口永良部島の方をはじめ火山の噴火やその兆候によって不自由な生活を強いられている皆様の生活が、少しでも良くなることを願ってやみません。

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