クローン人間?いいえ。クローン病

麻酔が切れ始め、意識がぼんやりと戻ってくる。

目の前に現れた青い手術着を着た医師が、突然こう告げる。

「あなたはクローン病かもしれません」。

え!自分はクローン人間だったの!?

どうも、はじめまして。10月から科学コミュニケーターになりました、福田大展と申します。今回は自己紹介も兼ねて、私が患っている難病「クローン病」を紹介したいと思います。

穴から汁!壮絶な検査入院

ことの発端は、2009年10月。当時、痔に悩まされていた私は(いきなり、すいません・・・)、ついにお尻の激痛で歩くのもままならなくなり、名古屋市のとある病院に駆け込みました。お尻に溜まった膿を出す手術を受ければ、日帰りできるだろうと、軽い気持ちで。(痔とかお尻とか、連発してすいません・・・)

しかし、実際には冒頭のような場面で病気を宣告され、10日間も検査のために入院する羽目に。小腸のレントゲン写真を撮るために、大量の下剤を飲んでトイレにこもる。鼻から胃を通り過ぎて小腸の入り口まで管を入れて造影剤や空気を注入。(これが地獄)さらに肛門からも、エアガンのようなものを刺され・・・。涙、鼻水、よだれ・・・。本能的な拒否反応なのか穴という穴から、いろんな汁があふれ出しました。「煮るなり焼くなり、好きにしてください」。私はすべての検査を、だまって素直に受け入れました。

クローン病ってどんな病気?

クローン病は、一言でいうと、「小腸や大腸などの消化管に潰瘍ができる病気」です。病気を発見したアメリカの内科医クローン(Burrill B. Crohn)博士が、名前の由来。決してクローン羊「ドリー」のクローン(clone)とは関係ありません!「Crohn」と「Clone」。スペルも発音も違いますが、カタカナで書くと混同してしまいます。

日本での患者の登録数は2009年現在で3万2000人ほど。過去30年間で急激に増えました。主な初期症状は、腹痛や下痢、血便、体重減少、痔ろうなど。炎症が激しくなると、口から食べられなくなり、鼻からチューブを入れてゼリー状の栄養剤を流し込みます。(私はまだやったことはありません)

原因はわからない なぜか免疫が暴走!

原因は、まだ正確には分かりません。中でも有力なのは、動物性脂肪をたくさん食べる欧米型の食生活やストレスなどの環境要因を引き金に、クローン病になりやすい遺伝子を持つ人が、免疫に異常をきたす説です。

人の体には、ウイルスや細菌から体を守る「免疫」という防御システムが備わっています。クローン病の場合、腸の免疫が暴走して過剰に反応。攻撃に歯止めがきかなくなり、自分の腸さえも傷つけてしまうと考えられています。

対策は食生活! 何を食べてるの?

私はまだ初期症状なので薬に頼らず、日々の食事の改善を心がけています。食事の基本は「低脂質・低残渣」。つまり脂肪と食物繊維を抑えること。最近のお気に入りレシピは、「鳥のささみとカブのペンネトマトソース」です。

おいしそうでしょ?他にも、いろいろ気をつけています。

タンパク源は肉より魚!
やむなく肉を買うときは、鳥肉のムネかささみ
調理の基本は、煮る、蒸す、あえる。揚げ物は食べない
ビール、コーラ、サイダーなど炭酸の飲み物を避ける
世間のお酒は炭酸ばかり。焼酎、ワイン、ウイスキーは良しとしよう!

対策は、挙げればきりがありません。

若者に多い病気 可能性を大切に

最後にひとつ。クローン病は10~30歳ほどの、若者に多く発症する病気です。この時期といえば、受験に就職、結婚、出産と人生の転機が多い時期。クローン病だと宣告されたことで、自ら夢をあきらめてしまう人や、社会により可能性を閉ざされてしまう人がいるかもしれません。かくいう私も、受験と就職は経験しましたが、結婚はまだです。結婚できるのでしょうか?

しかし!クローン病は難病とはいえ、炎症が激しくないときは普通の人と同じ生活ができ、何ら変わりません。「どこが病気なの?」と言われかねないほど、見た目では分かりません。子どもは可能性の塊。クローン病を理由に夢を閉ざしてしまってはもったいない!「より多くの人にクローン病を知ってもらい、若いクローン病患者が夢をあきらめずに活躍できる世の中になってほしい!」と、願っています。

私は今後も、クローン病の最新の研究動向を注目します。クローン病の人で、もし未来館に来てくださったときは、ぜひ声をかけてくださいね!それでは、また!

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