文化財を科学の目で探る!~「おとなのリアルラボ@東京藝大」報告(前編)~

形あるモノいつかは壊れる...それらを残していくためには?

こんにちは、本田ともみです! 今日のテーマは「文化財」!

「文化財」と言えば、奈良の大仏、モナリザなど、過去の文化・歴史を現在に伝えてくれる様々なものがありますよね。

それらの文化財を残していくには、科学的な調査にもとづく保存や修復作業が必要なことをご存じの方も多いでしょう。

東京・上野にある「東京藝術大学大学院」。ここは創作だけでなく、文化財保存の研究も行われています。今回はクラブMiraikanの中でも18歳以上の"おとな"の皆さんとともに訪問しました。

半日がかりで、5人の先生方にご教授いただく、ぜいたくなプログラム。内容が盛りだくさんでしたので、2回に分けてご紹介しますね。

トップバッターは保存科学研究室教授の桐野文良先生。

先生は、文化財の状況を詳しく分析する、いわば「臨床検査技師」です。文化財がどんな素材で作られているかを分析し、そのデータを復元作業に生かします。

走査型電子顕微鏡や可視光線や赤外線、紫外線、X線...その他にもたくさんの装置を使うそうです。

写真右が桐野先生。ラピスラズリという青っぽい石に紫外光を当てて、石の一部が光る様子を見せてくれています。

桐野先生のお話の後は【銀銭製作を体験!】

助手の大野直志先生が、このイベントのために金型になる定鏨(ジョウタガネ)をお手製で彫ってくださいました!

この定鏨をつかっての体験は、大いに盛り上がりました! どんな銀銭ができたかは後編でたっぷりご紹介します。

いよいよ、研究室見学です!1つは「紙」や「金属」などの材料を分析する研究室、もう1つは修復の研究室です。

【劣化を見守る研究者】
保存科学研究室 教授 稲葉政満先生

(写真中央:稲葉先生)

古文書、絵画などの文化財に「紙」が不可欠。

紙が劣化する時、紙の原料である繊維(セルロース)は切れて短くなっていきます。

これを科学的に言うと「セルロースの分子量が小さくなっていく」ということ。この分子量を測る機器が「ガスクロマトグラフ」です。(写真右、稲葉先生の右手に見えている白い機器)

稲葉先生が目指すのは「500年後にも残る紙」。

温度や湿度をコントロールしながら、どういう環境でどのくらい紙が劣化していくのかを数値化しながら分析し、保存に生かそうとしています。

【文化財のお医者さん】
保存修復油画研究室 教授 木島 隆康先生、助手 西川 龍司先生

写真は、絵画の修復に使う道具を紹介していただいている様子。はさみやペンチなど、大学なのにまさに工房そのもの!

これらの道具を使いながら、アフガニスタンから盗掘され、傷んだ状態で発見された壁画を修復して地元に返すプロジェクトを行なっています。

壁画に使われている素材を調べ、当時と同じ方法で作品を再現する模写を行いまいした。この作業を通して、壁画の色は、当初鮮やかな色彩だったことが検証されたのです。

アフガニスタンの壁画を前に「地域のアイデンティティがここにある」、と木島先生はおっしゃいます。

時代を超えて、地域の文化を伝えてくれる壁画。

「過去の文化を背負った文化財を守る」...このことが、文化そのものを守ることにもつながると言えます。


今回のイベントを通して、「残す」という行為は尊い作業だと思うようになりました。

目の前にモノがあることで、当時の様子、作者の心境、その文化財に秘められたメッセージを考え、想像することができます。

そして「残す」ためには、残す価値や意味が、その作品に込められます。

「残す」...その選択自体が文化や価値をつくっているのかもしれません。

そう考えると、文化財は世代を超えて文化を伝える伝道師のようなものであるのだろうと思いました。

美術館や博物館に足を運んで、その裏側にある科学の力を想像しながら、そこに込められた価値を見つめてみてはいかがでしょうか。

(今回お伝えできなかった部分は後編にてご紹介いたします!)

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