見極めろ!宇宙からの淡い光(前編) 東京もたくさんの星に囲まれている!

まずは、この写真をご覧ください。

山本勝也さん撮影(イベントとは別の日の作品です。
未来館の上空に、たくさんの星の軌跡が写っています。

東京は街明かりが多くて星があまりよく見えないのに、なぜこんなに星が写っているのでしょうか?

未来館は1月24日に、画像処理の仕組みを学ぶワークショップ「見極めろ!宇宙からの淡い光 -画像処理の体験から最先端へ」(協力:株式会社リコー、リコーイメージング株式会社)をおこないました。

15組のクラブMiraikan会員にご参加いただき、東京の夜空で星を写す方法を学んだ後、画像処理機能を内蔵したGRというカメラで実際の星空撮影も体験しました。

開催から4ヶ月以上経ってしまいました(ごめんなさい)が、報告の記事を前後編でまとめます。イベントのダイジェストを前編(この記事)で紹介し、後編では「宇宙の光を見極める」カギとなる画像処理を詳しく説明します。

ドームシアターで撮影練習

まずはドームシアターへ。リコーさんから画像処理機能を内蔵したコンパクトカメラ「GR」を1組で1台ずつお借りし、開発者・山本勝也さん(株式会社リコー)の指導で操作を学びます。

山本さん(左)の指導でカメラの使い方をマスター

撮影練習では、シアターの照明をわずかに点灯。未来館付近の"明るい"夜空を再現しておこないました。

夜空が明るく、少し露出時間を延ばすと写真全体が白くなってしまいます。そこで登場するのが、GRに内蔵されている比較明合成という画像処理の手法(GRの「インターバル合成機能」で行っている画像処理)。空を明るくすることなく、星の日周運動をしっかりと写すことができるのです。

東京の夜空を再現し、冬の大三角を比較明合成で撮影。(参加者の作例より)

プラネタリウムの星は実際の15~20倍速で動かしたので、2分程度の撮影で20~30分も星が動いたような写真ができあがりました。続いて、人工の光がない理想的な空での撮影も体験。実際の夜空はこの時、曇っていました。さまざまな条件で効率的に撮影の練習ができる、プラネタリウムのありがたみを感じました。

天文学の現場でも

講義形式で、宇宙からの淡い光を見極める画像処理「比較明合成」の仕組みを学びました。ひとことで言うと、「たくさん撮って重ねることで、星の動きの軌跡を鮮明にする」ということ。(ここがこのイベントのカギなので、後編で詳しく説明します)。これを応用したような画像処理が、天文学の現場でも実際に使われているのです。

講義形式で、画像処理について学習

多数決で屋上へ行くと

最後は実践。ただ、直前にスタッフが確認した空は曇りでした。「一か八かで屋上での撮影にチャレンジ」するか「ドームでもう一度撮る」のか。参加者に多数決を取ると、ほとんど全員が「屋上」に手を上げてくれました。そして屋上へ行くと...

何と晴れ間が増え、西の空の月やオリオン座が見えています。本当に嬉しかったですね。「曇り男」の異名を持つ(?)私が企画・実施したイベントで大逆転の晴れですから、これはもう本当に、参加したみなさんの日頃の行いが良かったのでしょう。さっそく、撮影開始です。

屋上で撮影大会

星を撮って感じたこと

GRでは撮影中に、画像が重なっていく途中経過を確認することができます。せっかくなので、参加者の作例をお借りして、一緒に撮影気分を味わってみましょう。(ここからの3枚はクリックすると、別ウインドウで拡大します)

西に浮かぶ月を中心にした構図。夜空に露出を合わせて撮った1枚では、目立つ星がほとんどありません。

西の空には月しかないように見えるけど...

しかし、枚数を重ねるごとに星の線(飛行機も)が伸びていきます。

画像が重なっていく様子を、実際の8倍速でgifアニメーションにしてあります

最終形がこちら。4秒露出の55枚を比較明合成すると、ずいぶんとたくさんの星が写りました。

たくさんの星が!

時間になったところで、みんなが撮った力作を紹介し、質問や感想を話し合って終了しました。ここで、アンケートでいただいた中から、興味深かった感想をシェアします。

「東京の夜空は、キャンプで見るものとまた違って魅力的」

「目に見えないがたくさんの星に囲まれていることに感動した」

星の淡い光を画像処理で「見極めた」からこそ、感じることができたのではないでしょうか。

宇宙の中に浮かぶ地球

私は20年以上も前から趣味として、星の写真を、特に星空と景色を一緒に写す「星景写真」を撮り続けています。

遥か遠くで輝く宇宙の星を背景に、地球の風景を写す。

時には、月明かりや星明かりを頼りにする。

星がよく見える場所に出かけて写真を撮っている間、そしてできあがった写真を眺める時、少し大げさかもしれませんが、地球が宇宙に浮かんでいて、地球に宇宙からの光が降り注いでいることを感じられるような気がするのです。

デジタル化と画像処理の技術によって、人工光が多い都市部でもさまざまな表現ができるようになってきました。そして、その技術をより簡単に使うことができるGRのようなカメラも今、増えています。みなさんが撮影や画像処理に挑戦し、地球がたくさんの星に囲まれていることを実感する機会がどんどん増えていけば良いな、と思っています。


「見極めろ!宇宙からの淡い光 画像処理の体験から最先端へ」
(クラブMiraikan会員向けイベント)
日時:2015年1月24日 17:30~19:30
場所:未来館ドームシアター、屋上など
参加者:31人
協力:株式会社リコー、リコーイメージング株式会社

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