未来の研究を一緒につくる! 研究エリアのオンラインイベントが始まります!

こんにちは、科学コミュニケーターの田中です。未来館は休館が続いていますが、いかがお過ごしですか? そろそろ未来館が恋しくなってきた......という未来館ファンのあなた。そして、未来館(東京・お台場)は遠くて行けないよ......というあなた。みなさんにきっと楽しんでいただける、未来館「研究エリア」のオンラインイベントをまもなく開始します! 私たち科学コミュニケーターはワクワクしながら準備中です。この記事では、イベントをみなさんに楽しんでいただくためのウォーミングアップとして、「研究エリア」ってなに? そしてこれから始めるオンラインイベントってなに? についてお伝えします。

未来館の「研究エリア」ってなに?

未来館といえば、訪れたことがある方ならあの大きな地球「ジオ・コスモス」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか? ロボットのASIMOを思い出す方もいらっしゃるかもしれませんね(ASIMOは2022年3月31日に未来館を卒業いたしました。現在は実演は行っておりません)。また常設展のフロアでは、私たち科学コミュニケーターが来館者のみなさんと科学・技術や未来のことをお話ししています。このように、ほかの科学館にはないさまざまな特色のある未来館ですが、実は館内にはもうひとつ未来館ならではの大事な場所があります。それが、展示エリアの隣にある、「研究エリア」です。

未来館で見られる大きな地球ジオ・コスモス(上)とASIMO(下、ASIMOは2022年3月31日に未来館を卒業いたしました)
展示エリアに私たち科学コミュニケーターがいるのも未来館の特徴です。来館された際はぜひお話ししましょう!
展示エリアの隣には研究エリアがあります

研究エリアには最先端の科学技術研究を進める12の外部プロジェクトチームが常駐しています。化学、生命科学、ロボット工学、情報学、認知科学、心理学など多様なプロジェクトチームが、日々研究にとりくんでいます。ですがここは、研究者だけのための場所ではありません。来館者のみなさんが最先端の研究に参加する場所でもあるのです。研究者たちは、ともに研究を進め、未来をつくっていくために、みなさんをお待ちしています。

そんな研究者と来館者のみなさんをつなぐため、研究エリアではこれまでにたくさんのイベントを開催してきました。それぞれの研究室を自由に見てまわり研究者と直接お話しできるフリーウォークや、みなさんに実験に参加してもらう実証実験のイベントなどなど。ですがこれまではイベントに参加するためには、未来館に来館していただくほかありませんでした。

2018年のフリーウォークの様子
心理学の実験の様子(左のお子さんが実験参加者、右が研究者)
研究者と意見を交わす実験参加者のみなさん

まもなく開始! オンラインイベント

今年度から、もっとたくさんの方にこの活動に参加していただくため、研究エリアのオンラインイベントを開催します! お家にいながら最先端の科学技術研究に触れたり、研究者たちに素朴な疑問をぶつけてみたり、意見を交わしたり。オンラインならでは、研究エリアならではのイベントになる予定です。未来館はちょっと遠くて行けないな......という方も、ぜひご参加ください!

記念すべき第1回は5/23(土)。今年度から未来館の研究エリアにやってきた筑波大学・落合陽一先生が率いる「xDiversity(クロス・ダイバーシティ)プロジェクト」のシンポジウムをニコニコ生放送で配信します(無料でご覧いただけます)。

xDiversityは、私たち一人ひとりの身体的・能力的な「ちがい」から生まれるさまざまな課題に対し、人工知能(AI)やロボット技術などコンピュータ技術を使って挑んでいる気鋭のプロジェクトです。プロジェクトが目指しているのは、「できないことをできるようにする」だけでなく、その先にある新たな可能性をつくりだすこと。その一例が、音の情報を振動と光に換えるデバイス「Ontenna」です。耳の聞こえない人が振動と光によって音を"感じられる"ようになるだけでなく、耳が聞こえる人にとっても"耳で聞く"以外の新たな方法で音を感じる可能性が開かれます。さらに、このようなテクノロジーをAIと組み合わせることで、より一人ひとりのニーズに合った「できる」を実現することが可能になるでしょう。未来館でも、こうした活動をみなさんを巻き込みながら行っていく予定です。

音の情報を振動と光に換えるデバイス「Ontenna」。髪の毛や服の襟元などにつけて使用する(画像提供:富士通株式会社)

そんなxDiversityと未来館が初めてタッグを組んで行うシンポジウムでは、いまコロナ禍を受けて大きく変化するコミュニケーションや情報アクセスの課題について、5人の研究者と考えます。症状がなくてもマスクをする、対面を避けてオンラインで会議や授業をする、人との間隔を空けるなど、私たちの生活様式は大きく変化しつつあります。このようななかで、たとえば耳が聞こえず口を見てコミュニケーションをとっている人は、マスクで相手の口が見えずに困っているかもしれません。現在、口の部分が透明になっているマスクが考案されていますが、ほかにテクノロジーを使ってできることはないでしょうか? また、同じ耳が聞こえない人でも、ふだんのコミュニケーションがオンラインに変わったことについては、むしろメリットを感じているかもしれません。パソコンなどのデバイスを通して話しているため、音声認識技術を噛ませれば相手の発言が文字になり、読めるようになるからです。今回のシンポジウムでは、さまざまな「ちがい」をもつ私たちそれぞれが、いま直面している課題や、逆に広がった可能性、そして課題を乗り越えるためのテクノロジーについて探っていきます。ニコ生のコメント機能を生かし、視聴者のみなさんの意見をできるだけ拾って研究者にぶつけていくスタイルです。活発な探究の場にしたいと思いますので、たくさんのコメント・ご意見をお待ちしています!


ニコニコ生放送「【JST CREST xDiversity × 日本科学未来館】いま研究者と考える、「ちがい」を乗り越えるテクノロジー」
放送日時:2020年5月23日(土) 16:30~17:30
番組視聴URL:https://live2.nicovideo.jp/watch/lv325952567
※コメントの投稿には、ニコニコ生放送へのアカウントの登録(無料)が必要です。
番組詳細: https://www.miraikan.jst.go.jp/info/2005180725817.html


このほかにも、すでにいくつかのイベントの開催に向けて科学コミュニケーターがそれぞれ準備を進めています。準備が整い次第お知らせしますので、ぜひお楽しみに! 研究のことを知り、研究に参加し、研究者と意見を交わし、一緒に活動していきましょう!

【関連リンク】
未来館の研究エリアと入居プロジェクト
https://www.miraikan.jst.go.jp/aboutus/facilities/

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