わかんないよね新型コロナ ここで一緒に考えよう

ニコ生で放送!6月19日の振り返り(後半) ワクチン接種の状況と接種後の行動について

こんにちは。科学コミュニケーターの山川です。

梅雨のじめじめした日からブログを書き始めたのですが、すっかり梅雨が明けて夏が来てしまいました。遅くなりすみません。そして、マスクをして外出するようになって二度目の夏ですが、今年も熱中症にならないよう気を付けましょうね。

この記事では、619日にニコニコ生放送で配信した「わかんないよね 新型コロナ」の後半の放送内容を紹介します。ワクチンの接種対象が少しずつ広がってきたので接種方法と状況の整理、接種後の行動を中心にお話ししました。

これらの状況と情報は刻々と変わっておりますので、6月19日現在の情報やデータであることに注意して読み進めていただければと思います。

ニコニコ生放送「わかんないよね新型コロナ」
https://www.miraikan.jst.go.jp/resources/COVID-19/nicovideo/index.html

一般接種、大規模接種、職域接種 その違いは?

621日から自治体が主導する一般接種や国の大規模接種に加え、職域接種が本格的にスタートしました。接種対象の違い、接種間隔の違い、接種券の必要・不要など、一般接種、大規模接種、職域接種ではそれぞれ少しずつ違いがみられるので、予約時には注意が必要です。ワクチン・打ち手・場所の確保に関しては、国や自治体、医療機関などが協力して、スピーディーなワクチン接種に向けて努力してくださっています。

一般接種、大規模接種、職域接種が始まっています。接種間隔は目安なので、多少の日にちのずれは問題ないそうです。
ワクチン、打ち手、場所の確保 医療従事者の皆さんや、様々な調整をいただいている皆さんに感謝ですね!堀さんもオンラインセミナーでノウハウの共有をされています。

6/21に職域接種を始める東京国際大学にインタビュー

621日からさっそく職域接種を開始する予定の東京国際大学に、接種に向けた準備についてお話を伺いました。この大学は学生数約6300人のうち約1300人が87の国と地域から集まった留学生という、国際色豊かな大学です。教職員や学生など7000人のワクチン接種に向け、教職員の皆様が一丸となって試行錯誤しながら体制を整えたそうです。たくさんの苦労を乗り越えながらの体制整備だったかと思いますが、早い対応をしてくださる大学には感謝ですね。

東京国際大学にお聞きした職域接種の状況

個人がワクチン接種前にできること

ここまでは、ワクチン接種に向けた国や自治体、そして企業の取り組みを紹介しましたが、私たち一人一人はなにができるでしょうか。スムーズ接種に向けた行動として、腕を出しやすい服装で接種に行くこと、接種を相談したい持病がある方は体を一番理解している主治医に事前相談しておくこと、体調を整えて接種に行くこと、厚生労働省のQAサイトなどで不明点を解消したり聞きたいことを整理しておくことなどが挙げられると思います。また、ワクチン接種後に痛みや発熱などの副反応が起こる可能性がありますので、お子様のお世話をされている方などは、事前に準備をし、ご家族やご友人に協力をお願いしておくとよいかもしれません。

ワクチン接種後の過ごし方

皆さんは以前のような日常が戻ったらやりたいことはありますか?私はたくさんあります。友人や家族にも会いたいし、大好きな旅行にも行きたい…。しかし、それはワクチンを打ってすぐにできるわけではなく、様子を見ながら少しずつ日常を取り戻すことになるかと思います。その理由を個人と社会の2つに分けてお話しします。

まずは、個人のワクチン接種のゴールのお話です。現在日本で使用されている新型コロナワクチンは2回の接種後、ファイザー社の場合1週間後、武田/モデルナ社の場合2週間後のデータがそれぞれ9495%の有効性を示しています。つまり、2回目接種12週間後までは十分な効果が証明されていないので、その期間はこれまでと同様にしっかりとした対策をする必要があります。SNS等で、接種数日後に安心して帰省や旅行に行かれている方を見かけますが、抗体ができるまでもう少しだけ待つ必要がありますね。また、有効性のデータは変異株の流行前の臨床試験データであることも考えると、まだ日常生活に戻るのは早いかもしれません。(7月からのいわゆる第5波はデルタ株の広がりが大きな要因になっています。mRNAワクチンはデルタ株に対しても、重症化を防ぐには大きな効果がありますが、感染を防ぐ効果は従来の株よりも少し落ちるようです。ワクチン接種をまだ終えていない方もいます。接種をした方ももう少し、感染対策を続けましょう)。

次に、社会規模でワクチンの効果と接種後の対策を考えてみましょう。ワクチン接種が進んで多くの人が抗体をもつようになると、私たちの生活はどうなるのでしょうか。元に戻すことはできるのでしょうか。その答えはまだ世界中の誰にもわかりません。ですので、状況が違うとはいえ、ワクチン接種が進んでいる国の事例を参考に考えることが有効かと思います。

ワクチン接種率と新型コロナウイルス新規感染症者の推移

こちらは札幌医科大学の井戸川先生から提供いただいたグラフです。2021年6月15日時点までのワクチン部分接種率を横軸、人口100万人あたりの新規感染者数を縦軸で表したグラフです。このグラフから、全体的にはワクチン接種が進むと感染者数が緩やかに減少していっているような傾向が見てとれます。一方でチリのようにワクチン接種が進んでも感染者数が増え続けている国や、イギリスのように途中で感染者増加に転じている国もあり、ワクチンさえあれば全てが解決するわけでもないということがわかります。(※グラフはワクチンの種類や、各国で広まっているウイルス株の違いにも注意して見る必要があります。)

そこでいくつかの国や地域について、感染者数の推移、ワクチン接種率、行った規制や対策を合わせて見てみました。※実際には、これ以外の要素(人口、検査数、地域のイベントなど)も含めて考える必要があることにご注意ください。

ニューヨーク州 地域やコミュニティによって感染者数やワクチン接種率の偏りが大きいという特徴もあるそうです。ワクチンの接種率が上がるにつれて感染者数が減少しているように見え、ワクチンの効果を期待できるデータかなと思います。
イングランド ロックダウンという強力な規制が有効にはたらいている様子が見てとれます。2021年に入りロックダウンとワクチン接種の2つの対策で、さらに強い効果をみせているようです。※イングランドのワクチン接種率の分母は18歳以上
韓国 最近ワクチン接種が進み始めた国です。しかし、細かな行動制限などによって感染者数をこれまでも抑えてくることができました。行動によって感染者数を抑えることができた事例だと思います。

3つの地域のデータをみてみると、ニューヨーク州のようにワクチン接種が感染者数の抑え込みにはたいているようにみえる地域、イングランドのように規制とワクチンの両輪で強い抑え込みができた地域、韓国のように細やかな対策や規制で感染者数の増加を防ぐことができた国など、さまざまな状況が見えてきました。これらのデータからも、ワクチン接種と規制や対策が両輪となって進むことが新型コロナウイルスの蔓延防止には重要であることがうかがえます。私たちもワクチン接種が進んでも様子を見ながら少しずつ日常を取り戻していったほうがよさそうです。

6月の放送のあと、ここで上げている国々ではデルタ株の影響か、新規感染者の増加が生じています。イスラエルでは、3回目のワクチン接種が始まっています)

ワクチン接種が不安で迷っている人、どうしよう?

ここまではワクチン接種の状況や接種後の行動について考えてきましたが、新型コロナワクチン接種は最終的には個人の判断となります。法律的には「努力義務」となっており「推奨」はしますが強制はしません。ですので、しっかりと正しい知識をもって、個人の状況とあわせてワクチン接種の判断をすることが必要です。このような時に重要なのが、コミュニケーションの取り方だと考えます。職域接種も始まり、予想以上にワクチン接種の順番が早く回ってきて戸惑っている人もいるかと思いますし、状況的に今は打てない・打たないと判断する人もいるかと思います。社会的には多くの人がワクチン接種をして、集団免疫を獲得することが、感染症の収束のための一つの大きな武器になるかと思いますが、置かれている状況も人それぞれですので、自分と異なる選択をした人に攻撃的になったり、差別的な行動をとったりしないよう心掛けることが大切ですね。また、まだ迷っている方も多くいらっしゃるかと思いますので、そういった方々に寄り添って一緒に不明点を明らかにしていくようなコミュニケーションが重要です。

視聴者の方からの質問

①少し様子を見たいのですが、3年後とかにワクチン接種をすることは可能ですか?

3年後どうなっているかはわからないけれども、その時の自分のベストの判断をしていくことが大切だと堀さんは仰っています。その時にはワクチンの種類やカタチも個別接種に対応しやすいように変わっているかもしれませんし、定期的に接種するようなワクチンとされているかもしれません。また、個人の状況や感情も変わっていると思うので、そこに柔軟に対応できる社会でありたいですね。

②事前に相談するかかりつけ医がいないのですが…

かかりつけ医がいない方はワクチン接種に支障ある疾患をお持ちではない方だろうと思うので、事前にお薬や疾患に関する相談は必要ないかと思います。当日も医師に質問をすることは可能ですが、細かい質問には対応できない可能性があるため、細かい個別の質問をしたい方は事前に病院にかかるか、産業医などに相談しておくとよいかもしれません。

医師、看護師以外も打ち手になり接種するとのことですが、筋肉注射の難易度はどうなのでしょうか?

看護大で手技を教えている堀さん曰く、難易度は高くないそうです。血管に針を入れなければいけない採血に比べると、筋肉注射は狙う範囲が広いため簡単だとのことです。しかし、安全に接種を進めるため、しっかりと講習を受けたうえで他の医療従事者にも参加していただいています。

おわりに

当ブログで紹介しきれなかった内容やメッセージもございます。全編が気になる方はぜひ放送アーカイブをご覧ください。また、当番組は過去回すべてが無料で見られます。皆さまの感染症対策に少しでもお役に立てますと嬉しいです。

また、文末に今回の放送の話題をリストアップします。
こちらを参考にぜひ放送内容をご覧ください。

「わかんないよね新型コロナ 6月19日(土)放送内容」

https://live.nicovideo.jp/watch/lv332297128

1:40 堀さんの近況~ワクチン打ちました

5:14 緊急事態宣言のお話~データの見方のポイント

16:02 第三波、第四波で変わってきた病院での工夫

18:53 蔓延防止法ってなんだっけ~これからのコロナ対策について

27:41 日本でのワクチン接種状況は?

32:52 ワクチンの違いおさらい

35:04 ワクチンの優先接種、うまくいった?~港区の接種のようす

40:46 ワクチンの副反応について

47:41 休憩コンテンツ

1:05:38 一般接種、大規模接種、職域接種について

1:11:58 ワクチン供給量、打ち手、場所の確保について

1:16:08 大規模接種のノウハウ研修会のようす

1:17:54 職域接種の事例紹介~東京国際大学インタビュー

1:24:04 スムーズなワクチン接種のために、私たち個人にできることは?

1:34:21 接種の後の過ごし方

1:39:46 ワクチン接種の効果、その他感染予防の効果~「ワクチン接種率と感染者数の推移」札幌医科大学

1:42:53 各国の感染者数の推移とワクチン、そのほか政策のデータ

1:53:24 ワクチン接種が不安で迷っている人、どうしよう?

1:59:01 視聴者からの質問:ワクチン、今は接種を見送って3年後に打つなどは可能?

2:01:38 ワクチン相談窓口

2:05:26 視聴者からの質問:筋注って難易度は高いの?

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