わかんないよね新型コロナ ここで一緒に考えよう

ニコ生で放送! 7月17日の振り返り デマとの向き合い方

誰もが気軽に情報を受発信できるようになった時代、大量の情報があの手この手で私たちの注意を惹いてきます。そして、新型コロナウイルスに関する情報も同様、一度も目にしなかった日は流行期間中ほぼ無かったのではないでしょうか。

新しい感染症であった新型コロナについて、当初は特に未解明なことが多く、また、データがそろってくるにつれ、情報がどんどんと更新されていきました。この情報の更新スピードの速さが大きな特徴の一つでした。さらに、ときに人命に関わるとあれば不安を感じやすい情報でもあります。

「(特にSNSにおいて)驚きや恐れ、嫌悪など、感情を刺激する情報は拡散しやすいです。また、情報の拡散量は、『話題の重要さ』と『状況のあいまいさ』のかけ算で表せるという考え方があります」 

このように話すのは、東京工業大学 環境・社会理工学院 イノベーション科学系 准教授の笹原和俊先生です。

【補足】話題の重要さ:新型コロナは健康、ときには命にかかわる話題です
状況のあいまいさ:ワクチンの効果、変異株の感染力など、まだわからないことが多いです


こうした背景の中、新型コロナに関するデマの拡散が多く見受けられました。デマに惑わされないため、私たちはどんな準備をすればよいのでしょうか。笹原先生へインタビューし、その内容を2021年7月17日(土)ニコニコ生放送「わかんないよね新型コロナ」において紹介しました。この記事では、放送内容から話題をいくつかピックアップしてお伝えします。

ニコニコ生放送「わかんないよね新型コロナ」
https://www.miraikan.jst.go.jp/resources/COVID-19/nicovideo/index.html
本回では事前インタビューを2021年7月7日に行い、そのようすを動画で放送しました

デマにもいろんな種類がある?

まず、デマにはどのようなものがあるのでしょうか。

「デマによって情報の裏にある意図や目的が違います。その種類によって対応策を変えていかなければなりません。デマという言葉でくくらず、特徴で分けるのが大切です」

たとえば、誇大な表現や目を引く画像を使い、想像とずれた内容へのミスリードを誘うクリックベイトというものがあります。人工知能を利用することで、このクリックベイトを大量にウェブサイトへ埋め込んでいるケースがあります。この場合、いかに人工知能を止めるかが対応策のポイントとなります。デマの特徴や目的を把握することで、的を絞った対応が可能となります。

Claire Wardle氏による分類。分類の方法はいくつかあるが、ここでは騙そうとする意図によって特徴づけをしている
それぞれの特徴を持ったデマの裏にある意図の分類と整理

番組中では他の例もいくつか紹介しました。もともとは風刺サイトで書かれていた情報(間違った情報である、という暗黙の了解がある情報)が、伝言ゲームを繰り返すうちに真実のように書かれてしまうケースがありました。また、記事の内容とそのタイトルがずれており、タイトルだけでは間違った印象を与えそうなケースもありました。

少し違和感がある情報に対して、意図や目的は何だろう、と立ち止まることで冷静に向き合えるかもしれません。

メディアリテラシーを高める方法

メディアリテラシーを高める方法にはどのようなものがあるのでしょうか。

「いくつか方法がありますが、ある情報が本当かどうかわからないとき、まずは情報源を調べるのがおすすめです。その情報を伝えているメディアはちゃんとしたところか、複数のメディアが報じているかなどを調べれば騙されにくくなります」

また、笹原先生はこのようにも付け加えました。

「それでもわからなければ、正しいかどうかの判断を一度保留にするのも大事です」

特に、感情を煽るような情報の場合、反射的に信じ込み、場合によっては拡散する側に回ってしまうこともあります。冷静さを取り戻すためにも、情報源を自分から調べる習慣をつけるのは効果的です。

メディアリテラシー教育プログラム「LESSON PLAN E.S.C.A.P.E. Junk News」のポスター。ニュースやジャーナルに関する話題を扱う博物館「NEWSEUM」より。なお、NEWSEUMは2019年末に閉館。当プログラムは教育コンテンツとして今でもダウンロードの上、使用可能。ESCAPEは、「証拠」「情報源」「背景」「読者」「目的」「完成度」それぞれの英単語の頭文字をとっている。

デマが絡むコミュニケーションで気をつけたいこと

ある情報がデマと気づいても、身近な人がそのデマを信じている場合、コミュニケーションでは注意すべきポイントがあるそうです。

「難しいのは、正しい情報を伝えようとしても逆効果になることがあります。こうした現象をバックファイアー効果とよびます。自分が強く持っている信念や価値観を否定するようなものに出会うと、むしろ自分の考えに固執してしまうことがあります」

バックファイアー効果が見られた実験例。民主党、共和党それぞれの支持者に、反対政党議員のTwitterアカウントを1か月間フォローしてもらい、その後のようすを調べた。結果、もともと支持していた政党の考え方をより強く信じるようになっていた

視聴者からのコメントにもありましたが、バックファイアー効果については私自身も気を付けないといけないなと思いました。確かに、間違った思い込みを指摘されれば少なからず私も傷つきそうです…。これが多くの人に当てはまる感情なのであれば、こうした現象があるということを知っておくことが自分を客観視するのに役立ちそうです。

おわりに

当ブログで紹介しきれなかった内容やメッセージもございます。全編が気になる方はぜひ放送アーカイブをご覧ください。また、当番組は過去回すべてが無料で見られます。皆さまの感染症対策に少しでもお役に立てますと嬉しいです。

また、文末に今回の放送の話題をリストアップします。
こちらを参考にぜひ放送内容をご覧ください。

「わかんないよね新型コロナ 7月17日(土)放送内容」
https://live.nicovideo.jp/watch/lv332697672

2:49 ワクチンが来ない?2回目が打てない?
3:59 ワクチンの接種回数が想定よりも多い
8:54 神戸市の対応
10:19 2回目の接種が遅れたら?
13:00 集団免疫のいい例え話ありませんか?
18:50 免疫の効果は時間と共に下がっていくので短期間で接種率を上げたい
21:30 インフルエンザのワクチンでは集団免疫が期待できない。新型コロナワクチンではどうか?
24:30 デマについて考える
25:55 笹原先生動画① デマの種類
33:04 新型コロナに関する偽ニュースの例
37:41 「感染力」には定義があるのか?
44:18 休憩コンテンツ
1:03:15 笹原先生動画② メディアリテラシー
1:10:00 バックファイアー効果を踏まえて、どうやってコミュニケーション取る?
1:15:00 反対の意見や情報も見る
1:21:00 笹原先生動画③ 偽ニュースの拡散
1:26:03 笹原先生動画④ サイレントマジョリティー

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