(前半)漁網でできたカーペット⁈ ~Mirai can... ビー サステナブル!~

今、足元に何がありますか?フローリング?敷石?アスファルト?畳?カーペット?それとも...漁網? そう、未来館では1月から7階の多くの部屋に漁網でできた床材を使うことになりました。

ちょっと待って! 漁網って、絡んでしまって危ないでしょう?! と思うかもしれませんが、ご安心ください。漁網でできていますが、ちゃんとしたカーペットでもあります。それは一体どういうことか、どうやってこうなったのか皆さんと共有したくてこのブログを書こうと思いました。

足元にある非サステナブルなカーペット

日本科学未来館の7階にはたくさんのコンファレンスルームやホールなどがありますが、床のカーペットの劣化のひどいところがあり、いくつかの部屋にカーペットの張替えが必要だということになりました。例えば「コンファレンスルーム海王星」のタイルカーペットは、浮き上がってしまっているところが目立つようになっています。

「コンファレンスルーム海王星」のタイルカーペット。多くの場所が浮いています。

今までも館内のところどころ、カーペットを貼り替えることがありましたが、今回は未来館で初めて、サステナブルなカーペットにしました! でも、サステナブルなタイルカーペットとは、いったいどのようなもの?

まずは、一般的なタイルカーペットを見てみましょう。これはサステナブルなのでしょうか。実はそうではないです。素材から見てみると、タイルカーペットは裏の「バッキング材」と表の「パイル」でできています。バッキング材は大体プラスチックで、パイルはナイロンなどの化学繊維がつかわれています。この素材はサステナビリティの観点からは三つの問題があります。

タイルカーペットの断面図:パイルとバッキング材がよく見えます。

一つ目は、プラスチックと化学繊維は石油由来の原料だということです。石油は数十年後には、なくなる原料です。なので、将来的には、今のように比較的容易には手に入れられなくなるでしょう。いつまでも使い続けられる原料のほうがサステナブル=持続可能です。

二つ目の問題はプラスチックと化学繊維は生分解がされないということです。つまり、微生物などに食べられて腐敗したり、二酸化炭素と水になるまで分解されたりしません。なので、プラスチックや化学繊維が自然環境に埋め立てられたり流されたりするとずっとそのままに残って、生物に悪影響を及ぼす恐れがあります。例えば動物が食べてしまうと、消化できないため消化管が詰まって危ないですし、海に漂うプラスチックに絡まってしまって溺れたりすることもあります。

そして三つ目は、廃棄物となった化学繊維やプラスチックは、きちんとゴミ回収されて焼却されたとしても、そこで発生する二酸化炭素が地球温暖化を促進してしまうということです。また、燃やしても灰が残ってしまいます。量的にはもともとのプラスチックや化学繊維よりもずっと小さくはなりますが、ゼロにはなりません。その灰は埋め立てるしかないですが、埋め立てられる場所は石油と同じように、いつかなくなります。

カーペットの環境問題:石油はいつかなくなります。ゴミとして燃やすと二酸化炭素が排出されます。ゴミを埋め立てたら、埋め立て地がいつかいっぱいになります。

漁網でカーペットを?

サステナビリティの観点から見ると、カーペットにはこのような課題がありますが、未来館の会議室にはきちんとしたカーペットはどうしても必要です。そこで、今回7階の控室と「コンファレンスルーム海王星」のカーペットを張り替えるにあたって、上記の問題点の全部に対応できる方法を見つけました。それは「カーペットリサイクル」です。

まずは石油についてですが、リサイクルされたカーペットは石油が直接に原料として使われていません。新しいタイルカーペットは川島織物セルコンという会社のトランスレーションⅡというもので、裏の「バッキング材」と表の「パイル」は両方リサイクルされた素材でできています。バッキング材は古いタイルカーペットのバッキング材でできた再生塩ビでできています。そしてパイルは古いカーペットのパイルと他にゴミになったナイロンでできています。そのナイロンゴミの一種類として、漁網も使われています。

実はこのカーペットは、パイルに漁網が使われているおかげで、上記の「自然に残っているプラスチックは動物に危ない」という二つ目の問題点にも対応しています。なぜかというと、使われた漁網はもともと海洋プラスチックだったからです。漁網は海に残されることがありますが、パイルに使われたECONYL®というリサイクル ナイロンを作る会社は海に残された漁網を原料として使うために回収しています。

漁網はカーペットのパイルとして生まれ変われます。

最後に、未来館の古いタイルカーペットももちろんリサイクルしてもらいます。そうすることで燃やされたり埋め立てられたりしないので、二酸化炭素排出の削減にもなって、埋め立て地も必要ないです。

サステナブルなカーペット、そしてそれから...?

未来館は今回、リサイクルされたタイルカーペットに切り替えましたが、他にもサステナビリティに取り組んでいます。例えば未来館の自動販売機ではペットボトルを売っていないことや、使っている電気は再生可能エネルギーだと知っていますか?

2030年を期限とするSDGs、そして世界的に大切とされている2050年へ向かって、私たちはみんなで頑張らないといけません。リサイクルされたカーペットを選ぶのは今、未来館ができることの一つですが、あなたは個人としてまたは会社、学校、近所の一員(それとももしかしたら、政治家)として、何ができますか?

これからより一層サステナブルになるように頑張りましょう! Mirai can... ビー・サステナブル!

(このタイルカーペットのリサイクルはどうやってするか知りたいなら、ぜひこのブログの後半も読んでみてください: https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20221219mirai-can-1.html

「コンファレンスルーム木星」について

今回、7階の「コンファレンスルーム海王星」と控室だけではなく、「コンファレンスルーム木星」もタイルカーペットの貼り替えが必要でした。ただ「コンファレンスルーム木星」ではリサイクルされたタイルカーペットを使わないことになりました。

「コンファレンスルーム木星」はもともとタイルカーペットでしたが、よく飲食スペースとして使われるせいで、カーペットはすぐ汚れてしまうという問題が発生しました。なので、今回はタイルカーペットの代わりに掃除しやすいビニル床タイルを使うことになりました。残念ながら、このような商品ではリサイクルされたものは見つけられませんでした。次貼り替えることになるときにカーペット以外でもリサイクルされたものがあることを期待しています。

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