(後半)漁網でできたカーペット⁈ ~Mirai can ... ビー サステナブル!~

「リユース、リデュース、リサイクル」

サステナビリティの話になると、これはよく聞く言葉ですね。この三つ目の「リサイクル」のことなんですが、ペットボトルからカーペットまで、いろいろなものがリサイクルできます。

え?カーペットのリサイクル?実は、日本科学未来館では今年の12月から来年の1月にかけて7階の多くの部屋のタイルカーペットを貼り替えて、新しいもののほとんどを漁網などでできたリサイクルタイルカーペットにする予定です。そこで、カーペットはいったいどうやってリサイクルできるかを調べてみました。

リサイクルって、限界がある⁉

そもそも「リサイクル」とは何でしょう?リサイクル(英:recycle)という言葉は二つの部分でできています:リ(re)=「改めて」、そしてサイクル(cycle)=「循環」。そう考えると、ものをリサイクルするとは、ものを「改めて循環させる」ということですね。一見、それは何回もできるように見えますよね。

でも実は素材を何回もリサイクルすることはまだ当たり前ではありません。とくにプラスチックの場合はリサイクルできる回数が限られていることが多いです。その理由はリサイクルするときに使われている方法。

私たちが分別して捨てている包装・容器のプラスチックは、よく「マテリアルリサイクル」という方法でリサイクルされます。マテリアルリサイクルの中でもいくつか違う方法がありますが、一般的な方法の一つはプラスチックを温めて、溶かして、新しい形にすることです。これは比較的に低コストでできるというメリットがありますが、デメリットもあります。それは一種類以上のプラスチックをマテリアルリサイクルすると、その様々な種類が混ざってしまって、リサイクルされたプラスチックの質が悪くなってしまうからです。

マテリアルリサイクルする前にできるだけ、まざらないように分別すれば、何回かリサイクルできるはずですが、完璧に分別することはできません。そしてプラスチックを種類ずつ分別せずにマテリアルリサイクルすることもあります。そうすると再リサイクルができなくなるほど質が悪いプラスチックができます。このようなリサイクルは、リサイクルするたびに質が落ちることから「カスケードリサイクル」、あるいは「ダウンサイクル」と呼ばれています。

完全リサイクルなら何回もリサイクルできますが、カスケードリサイクルでは質がだんだん悪くなってリサイクルできなくなります。筆者の母国のオランダでは公園にあるベンチやボラードはよくそういうプラスチックでできています。

期待される「ケミカルリサイクル」

カスケードリサイクルは結局プラスチックが燃やされたり埋め立てられたりするまでの時間を延ばすだけです。リサイクルしないよりましですが、何回でもできる「完全リサイクル」のほうがよりいいですよね。

そこで「ケミカルリサイクル」という方法が期待されます。ケミカルリサイクルはマテリアルリサイクルと違ってプラスチックを溶かして固めなおすだけではなく、分子レベルでバラバラにして組み立てなおす方法です。

プラスチックを分子レベルで見てみると、「ポリマー」という長い鎖のようなものでできていることが分かります。ケミカルリサイクルではその鎖(ポリマー)をばらして、モノマーを作ります。このモノマーはまた新しい「再生ポリマー」に組み立てなおすことができます。再生ポリマーを作らずにモノマーのままで燃料やプラスチック以外のものの原料として使うこともあります。

ケミカルリサイクルではポリマー(廃棄されるプラスチック)をモノマーにして、新しいポリマーか他のものの原料として使う(例えばタイルカーペットにする)

具体的な方法や使われるプラスチックにもよりますが、ケミカルリサイクルではマテリアルリサイクルと違って、直接石油でできたプラスチックと同じ品質のプラスチックができます。ただ、ケミカルリサイクルはマテリアルリサイクルと比べると比較的にコストが高いので、まだ普及していません。

未来館のカーペットは...?

おっと、リサイクルの世界で夢中になって、どうしてこのブログを書いているか忘れるところでした。未来館でリサイクルされたタイルカーペットを使うことになりましたね。では、それは結局どのようなリサイクルだったでしょうか?

メーカーの川島織物セルコンに聞いてみると、表の「パイル」は漁網などをケミカルリサイクルしたナイロン(ECONYL®)でできているので、ほぼ完全リサイクルと言ってもいいです。従来のタイルカーペットも―パイルがナイロンでできている限り―ECONYL®の原料として使われるので、未来館の古いタイルカーペットもリサイクルしてもらいます。そして再リサイクルも可能なので、今の新しいカーペットをまた貼り替える時が来たら、リサイクルできます!

続いては裏の「バッキング材」ですが、これは古いカーペットのバッキング材をマテリアルリサイクルした塩ビでできています。マテリアルリサイクルなので、一応カスケードリサイクルになりますが、川島織物セルコンによると、最大10回リサイクルできるそうです。タイルカーペットの寿命は10年ぐらいとのことなので、もともと10年間しか使われていない物が、リサイクルによって100年間も使えるようになります。完全リサイクルではありませんが、相当な改善です。

ということで、新しいリサイクルタイルカーペットは100%完全リサイクルではありませんが、バッキング材(裏)とパイル(表)は100%リサイクルされたのは間違いありません。現時点で、これは日本のサステナブルタイルカーペットの最先端のようです。これからより多くの床材や家具、日用品、他のもののサステナブル化を楽しみにしています!

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