“Ig Nobel Face-to-Face 2024 in JAPAN”イベントレポート

「人々を笑わせ、考えさせる」イグ・ノーベル賞公式イベントを未来館で実施!

こんにちは、科学コミュニケーターの若林です。

2024年11月17日(日)に、日本科学未来館でイグ・ノーベル賞公式イベント“Ig Nobel Face-to-Face 2024 in JAPAN”が開催されました。このイベントは、2023年にアメリカで始まった“Ig Nobel Face-to-Face”の日本版で、昨年に引き続き2回目の開催となります。

イグ・ノーベル賞は1991年、ユーモア系科学雑誌の編集長を務めるマーク・エイブラハムズ氏によって創設された賞で、「人々を思わず笑わせ、そして考えさせる研究」に贈られます。日本人の受賞は2024年まで18年連続となっており、国内外で大きな注目を集めています。

本イベントでは、「イグおじさん」こと、イグ・ノーベル賞日本担当ディレクター、古澤輝由さんが司会を務めました。また、ゲストとしてイグ・ノーベル賞受賞者の武部貴則先生、宮下芳明先生、松崎元先生、さらにノーベル賞受賞者の梶田隆章先生が登壇し、豪華な顔ぶれとなりました。

今回は、イベントの様子をダイジェストでお届けします。イベントの詳細はYouTubeでもご覧いただけますので、気になる方はぜひチェックしてください!

【オープニング】紙飛行機飛ばし

みなさんは、イグ・ノーベル賞の授賞式を見たことがありますか? イグ・ノーベル賞授賞式は、客席から紙飛行機を飛ばすというユニークな演出で幕を開けます。

今回のイベント会場である未来館ホールにも、たくさんの紙飛行機が飛び交いました!

イグ・ノーベル賞授賞式の恒例、紙飛行機飛ばしでイベントがスタート!

あれ、壇上に人が……?

そうなんです! 紙飛行機を飛ばすときの「的」を務めるのは、なんと人間です。これは、実際のイグ・ノーベル賞授賞式でもおなじみの演出です。

壇上に溜まった紙飛行機は、赤いシマシマシャツにサンタ帽をかぶった「シマシマさん」が現れて、せっせとお掃除してくれました。

ウォーリーみたいな格好のシマシマさんが登場して、紙飛行機をお掃除

続いて開会のご挨拶が始まるはずなのですが……。ここで先ほど紙飛行機の的だった人物が再び登場。実は、的を担当していたのは未来館の高木啓伸副館長でした!

でも、なんだか様子が変です。開会挨拶を書いた原稿をなくしてしまったのでしょうか?

開会のご挨拶をするはずだったのに、原稿が見当たらない様子……

果たして、高木副館長は原稿を無事見つけることができたのでしょうか? 実際の様子は、ぜひ動画でチェックしてみてくださいね。

【第1部】スピーチ

第1部は、武部先生、宮下先生、松崎先生、梶田先生による、1人5分間のスピーチです。各先生にご自身の受賞研究や現在の研究テーマについてお話いただきました。

ちなみに、イグ・ノーベル賞授賞式のスピーチでは、所定の時間をオーバーすると「ミス・スウィーティー・プー」という8歳の女の子がタイムキーパーとして登場し、“Please stop! I’m bored.”(もうやめて!あきちゃった)というセリフを連呼します。

このイベントでは、ミス・スウィーティー・プー役の姉妹が、ドラをもってタイムキーパーをしてくれました。

スピーチで時間をオーバーすると、ミス・スウィーティー・プー姉妹がドラを鳴らしに来ます(かわいい!)

武部 貴則先生

大阪大学 大学院医学系研究科 教授/東京科学大学 総合研究院 教授
イグ・ノーベル賞 生理学賞(2024)「多くの哺乳類にお尻から呼吸する能力があることを発見」

トップバッターは武部先生。ドジョウの絵がプリントされたTシャツで登場すると、今年の受賞研究を紹介しながら、お尻の可能性について熱く語ってくださいました。

今年のイグ・ノーベル賞受賞研究について解説いただきました。ドジョウのTシャツが素敵です……!

宮下 芳明先生

明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 教授
イグ・ノーベル賞 栄養学賞(2023)「電気を流した箸やストローで食品の味を変える実験」

次に登場したのは宮下先生。スピーチ後半、脂質・糖質ゼロのクリームをご紹介いただきましたが、時間がオーバーしてミス・スウィーティー・プー姉妹がやってきました……!

脂肪・糖類ゼロのクリームが実現するかも……!というところで時間切れとなり、ミス・スウィーティー・プー姉妹が登場!

松崎 元先生

千葉工業大学 創造工学部 デザイン科学科 教授
イグ・ノーベル賞 工学賞受賞(2022)「円柱形つまみの回転操作における指の使用状況について」

続いて、松崎先生が登場。私たちがものをつまんだりつかんだりする時の指の使い方に関する研究に加え、無意識に非常時に備えることができる「フェーズフリーデザイン」の考え方を紹介くださいました。

「いつも」と「もしも」の垣根をなくすフェーズフリーデザインの考え方を紹介いただきました

梶田 隆章先生

東京大学 宇宙線研究所 教授
ノーベル賞 物理学賞(2015)「ニュートリノ質量の存在を示すニュートリノ振動の発見」 

最後の登壇者は梶田先生。ニュートリノ振動とはどういうことなのか、どうしてそれがわかったのかなど、ノーベル賞受賞研究についてわかりやすく解説してくださいました。

ニュートリノ振動をどうやって確かめたのか、分かりやすく解説いただきました

【幕間】クロノスプーン体験

スピーチの後には、宮下先生が開発した「クロノスプーン」の体験が行われました。クロノスプーンは、いわば「味のタイムマシン」。なんと食べ物の熟成度合いを自由にコントロールできるのだといいます。

このスプーンには「カレーモード」と「トマトモード」が搭載されているそうですが、今回のイベントでは「トマトモード」の公開体験を世界で初めて実施! 果たして、味のタイムトラベルはうまくいったのでしょうか……?

クロノスプーン「トマトモード」世界初の公開体験の結果はいかに……?

【第2部】対談「ヒトはなぜ科学をするのか?」

第2部では、4名の先生方による対談が行われました。「ヒトはなぜ科学をするのか?」をテーマに、科学に対する考え方をうかがったり、イグ・ノーベル賞の意義についてご意見をいただいたりしました。

当日は私がファシリテーターを務めさせていただきましたが、先生方からうかがうお話はどれも大変貴重で興味深いものばかりで、時間があっという間に過ぎてしまいました! なにより、先生方がユーモアにあふれていて面白いこと……!!! 多くの学びがあると同時に、笑いにも包まれた対談でした。

イグ・ノーベル賞のイベントらしいリラックスした雰囲気の中、先生方の素敵なお人柄にも触れることができ、私自身も大変楽しませていただきました。

登壇者全員で思わず爆笑する一幕も……

【第3部】抽選会

第3部は、アメリカで開催された“Ig Nobel Face-to-Face”イベントの公式グッズのほか、受賞者のサイン入りグッズなどが当たる抽選会です。

実は、オープニングで飛ばした紙飛行機が抽選用紙となっていました。お掃除で集めた紙飛行機の中から登壇者の先生方がくじで当選者を決定。非常に楽しい抽選会となりました。

当選した方々、おめでとうございます!!

幸運な当選者の皆さん、おめでとうございました!

来年のイグ・ノーベル賞もお楽しみに!

今回のイベントを通じて、私はこれからのイグ・ノーベル賞がさらに楽しみになりました。イグ・ノーベル賞は、科学に親しみのある方はもちろん、普段あまり科学に触れる機会がない方にとっても、科学の面白さを再発見するきっかけになると思います。

イグ・ノーベル賞は毎年9月ごろに10部門の受賞者が発表されます。来年はどんなユニークな研究が受賞するのでしょうか。また、日本人研究者が19年連続で受賞するのか、今からとても気になりますね。

これからのイグ・ノーベル賞にも、ぜひ注目してみてください!

グッバイ、グッバイ!

閉会のご挨拶は、「グッバイ、グッバイ!」

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