みんなちがうこたえのカタチ~ 1日科学コミュニケーター体験

こんにちは、今年4月から日本科学未来館で働いている科学コミュニケーターの小玉昂史です。

未来館には青い襟の白いベストを着た、科学コミュニケーターという人たちがいます。

726日と30日に行った「1日科学コミュニケーター体験」ではそんな科学コミュニケーターのお仕事を小学生のみなさんに体験してもらいました。

イベントの詳細はこちら:https://www.miraikan.jst.go.jp/events/202507264103.html

このブログではそのイベントの様子をお届けしようと思います。

このイベントは2日間開催し、計18人が参加してくれました。

参加者の中には、「未来館が大好きで、今まで何回も未来館に来ていたけれど、小学4年生になった今年ようやくこのイベントに参加できた」と話してくれた方や、「人とお話をするのが苦手だから克服したくて初めて未来館に来た」という方もいました。参加者一人ひとりが、それぞれの思いや目的をもってこのイベントに臨んでいるのだと、強く感じました。

 そんな参加者のいろいろな期待を胸にイベントがスタートしました。

未来館や科学コミュニケーターについて知ろう!

午前中は座学の時間です。未来館とはどういう場所なのか、未来館の科学コミュニケーターはどんな仕事をしているのかを勉強します。

私たち科学コミュニケーターも未来館で働き始めた時、まず未来館がどういう場所なのか、何のために生まれた施設なのか学びました。それは、未来館の存在意義や未来館が目指している姿を理解した上で、科学コミュニケーターの仕事をするためです。

科学コミュニケーターのユニフォームを着て体験スタート!

まずは参加者の皆さんに「未来館の科学コミュニケーターは普段どんなお仕事をしていると思いますか?」という質問をしてみたところ

 

「展示の解説をするひと!」

 

「イベントをするひと!」

 

「科学の説明をするひと!」

 

といったこたえが返ってきました。

もちろんそれらも科学コミュニケーターの大切なお仕事ですが、未来館の科学コミュニケーターはもう一つ重要なお仕事があります。それは「さまざまな人と科学の対話を通じて未来のことを語り合う」ことです。

ただ科学のことを説明するだけではなく、多くの人と対話をすることでその人が未来はどんなふうになるのだろう、どんな未来をつくりたいだろうと考えるきっかけをつくるのが未来館の科学コミュニケーターの重要な役割です。

 

このようなお話をして、未来館の科学コミュニケーターとはどんな人たちなのかをしっかりと学んでもらいました。

 

みなさん真剣かつ集中してお話を聞いていて、さながら新入職員の研修のようです……!

座学の時間が終わった後は展示ツアーです。未来館の展示フロアを回り、科学コミュニケーターのガイドに耳を傾けます。未来館に何度も足を運んだ子も初来館の子も、目を輝かせながら見学していました。

展示ツアーの様子

対話の準備をしよう!

展示について勉強した後は、展示フロアで来館者と対話するための準備をしていきます。

自分が担当する展示で来館者と対話する内容を考え、対話用の台本をつくっていきます。

 

「対話するときに大切なことは「伝える」と「問いかける」ということです」と参加者のみなさんにお伝えしました。

自分が考えたことを相手が理解できるように組み立ててわかりやすく「伝える」ことと、相手の意見や考えを引き出せるような「問いかけ」をすることで、来館者が何に興味があるのか、どんなことを考えているのかを知ることができます。対話は決して一方通行ではないのです。

今回の1日科学コミュニケーター体験のテーマは「きみはどう思う? みんなちがう、こたえのカタチ」です。一人ひとり違う考えを持っているということに気づいてもらいたいという思いからこのテーマにしました。

 

問いかけに対する「こたえのカタチ」は自身が考えていたことと同じものが返ってくるでしょうか? もしかしたら、違う「こたえのカタチ」が返ってくるかもしれません。

参加者のみなさんは、どうすれば来館者にわかりやすく解説できるか、どうすれば来館者の考えを引き出す問いかけができるか、一生懸命考えてくれていました。

どんな解説にするか科学コミュニケーターと一緒に考えていきます
ペアになって対話の練習中!

いよいよ来館者との対話の時間!

みなさん対話の練習を一生懸命行いました。その成果を出すため、いよいよフロアで来館者と対話していきます!

見守っている私自身、参加者が来館者とうまく対話できるのか不安でしたが、みなさんは自分から積極的に来館者へ声をかけていました。はじめのうちは緊張してうまく話しかけられなかった子も、頑張って声をかけてみた後は生き生きとした表情になり、自ら来館者に声をかけるまでに急成長しました。中には、来館者の興味に合わせて用意していた台本になかった内容も伝えている子もいて、本物の科学コミュニケーターさながらの対応です!

来館者との対話にチャレンジ!

参加者から来館者に問いかけをすると、いろんなこたえのカタチがあり、自分のこたえとは違うものをたくさん見つけていました。予想外のこたえを聞いて、参加者が驚き、「そんな考え方があるんだ」「そういう表現(言葉のチョイス)があるんだ」と気づきを得た様子でした。

対話実践中、「こんな面白いこたえを聞けました!」と言って私に話しかけてくれた場面がとても心に残っています。さまざまな人との対話を通して、思いもよらなかった新しい考えに出会う楽しさを感じてもらえたことで、このイベントを開催して本当によかったと心から思いました。

ふりかえりの時間

結果として、参加者のみなさんが3名以上の来館者と対話することができました! イベントの最後は、ふりかえりの時間です。来館者にどんな問いかけをしたのか、どんなこたえを聞けたのか、自分が考えていたこたえとの違いをまとめました。さらに、そこから自分は何を感じたのかを考えてもらいました。その内容は発表会形式で参加者全員に共有し、みんなで学びを深めました。

来館者との対話をふりかえってホワイトボードにまとめていきます

発表を聞いた感想として、参加者全員が来館者から得たこたえ一つ一つと向き合っていたことに嬉しく思いました。来館者がなぜそうこたえたのか理由を想像したり、自分の考えた意見とは違っていても否定せずに受け入れたり、相手のこたえから自分のこたえを吟味したり……。まさしく、考え方は一つではないこと、相手の意見を尊重し、理解した上で自身のこたえを顧みることを参加者のみなさんは実践して下さいました。

最後に

今回の1日科学コミュニケーター体験のテーマは「きみはどう思う?みんなちがう、こたえのカタチ」です。

人はそれぞれいろいろな考えをもっています。あることに賛成したり、反対したり、あるものが好きな人もいれば嫌いな人もいます。未来館で紹介している科学技術に関しても、とても期待を寄せてくれる人もいる一方で、私たちの生活が大きく変わってしまうことを不安に思う人もいます。そんないろいろな人の考えを受け止め、一緒に未来について話をするということが、未来の予測が困難な今の時代にとってとても大切なことだと私たち科学コミュニケーターは考えています。そんな私たちの思いが参加者の皆さんに少しでも伝わっていれば幸いです。

 

参加者のみなさん、1日科学コミュニケーター体験に参加していただき本当にありがとうございました! ぜひ、未来館へまた遊びに来てくださいね!

そして、このブログを読んでいただいたみなさんもいろんな問いに対する考えを未来館で対話しませんか? 科学コミュニケーターはいつでもみなさまをお待ちしております!

7/26参加のみなさん
7/30参加のみなさん

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