音でチョコレートの味が変わる?~実証実験のタネ明かしをします!~

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 日本科学未来館の公式サイトでは、7月7日まで実験への参加をお願いする以下のような文を載せていました。


チョコレート好きの方、おいしさの秘密に興味がある方求む!

ベルギーチョコを食べながら、味覚の国際比較研究に参加できる実験イベントです。(中略)20190730moriwaki_01.jpg

参加方法はとても簡単。会場で、"ちょこ"っとだけのチョコレートを食べて、どんな味がしたのかを答えていただくだけ。(中略)だったら、何を調べる実験なの?......など、気になる方もいらっしゃると思いますが、実験の目的は来てみてのお楽しみ!ご参加いただいた方には実験後にお伝えします。おいしいベルギーのチョコレートを食べるだけで、一緒に最先端の研究成果をつくることができるチャンスです。

(オープンラボ「そのチョコレートはどんな味?~味覚の国際比較研究に参加しよう!」告知ページhttps://www.miraikan.jst.go.jp/event/1907031024390.htmlより)


 こんにちは!科学コミュニケーターの森脇です。
2019年7月3日(水)~7月7日(日)の5日間、日本科学未来館では、オープンラボ「そのチョコレートはどんな味?~味覚の国際比較研究に参加しよう!」が行われました。5日間で、なんと、計838名に参加いただきました!! 参加してくださったみなさま、本当にありがとうございました。

 上に掲載したのは、そのイベント告知文です。でも、参加していないみなさんは、もやもやしませんか?「チョコレートを食べる実験なのはわかった」「味覚の国際比較研究とやらをやっていたこともわかった」「え、でも何を調べる研究なの?」「本当にチョコレート食べて味を答えるだけ?」など、疑問に感じるところがたくさんあると思います。

 実験前に詳細をお伝えすると、結果に影響がでてしまうのでお話しできなかったのですが、今ならば、大声でお伝えすることができます!参加者のみなさんはどのような体験をしたのか、オープンラボの実証実験で明らかにしたこととは何なのか。順にお話ししていきます。


会場は、こちら、日本科学未来館の7階です。

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受付を済ませた参加者の方は、入口から実験ブースに入り、東京大学の学生さんの誘導のもと、指定された席に座ります。

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席についたら、手元のタブレットPCの指示に従って、①ヘッドフォンをつけて ②"2種類"あるチョコレートの内、指定されたチョコレートを口に含み ③音楽を聴きながらチョコレートを舌の上で溶かすようにして味わいます。④音楽が終了したら、水を飲みます。

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そして、どんな味がしたのか...例えば、甘さ、苦さ、酸味の程度はどれくらいだったのか、舌触りのクリーミーさ、聞こえてきた音楽の好き嫌いなどの質問に対して、回答します。

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チョコレートはWDとTKの"2種類"あるので、①~⑤を、もう一度繰り返します。ただし、2回目に聞こえてくる音楽は1回目とは違うものです。

2つのチョコレートを食べ終わった、参加者の方は、実験ブースから出てきます。ここで、タネ明かし!!!
森脇:「実は、食べてもらった2つのチョコレートは同じ味だったんですよ。」
参加者:「...え?そうなの!全く違う種類だと思っていた、味が違いました。」

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と、いう反応の方もいれば、
参加者:「んー、音楽を聴きながらだったし、見た目が一緒だったから、きっと同じチョコレートなんだろうな、と思っていました。でも味がわずかに変わった気がして面白かったです。」という反応の方も...。

そう、みなさんお気づきの通り、
実験の目的は、耳で聞いている音楽などの音刺激によって、チョコレートの味が変わるかどうかを調べること。つまり、音が味や食感などのおいしさに与える影響を明らかにすることでした。こちらの研究は、ベルギーやコロンビアですでに同様の実験(1)が行われています。また、チョコレートの代わりにビールを使った実験もされており(2)、それらの研究結果によると、「高くて滑らかな音は甘味やクリーミーさを増し低くて角張った音は苦味を強める」ということが分かっています。

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Sonic Seasoning: 音による味の修飾 
(提供:東京大学大学院 鳴海拓志先生)

しかし、おいしさや味の感じ方は、その国の食文化などにも影響されます。そこで、今回、日本でも同様の研究を実施することにより、ヨーロッパ、南米とアジアで、結果に差があるかどうかも調べていたのです。

参加者の方がチョコレートを食べるときに聞いていた音はこちらのサイトで聞くことができます。

http://tinyurl.com/creaminess-chocolate


Creamy Soundと書かれているのは、高くて滑らかな音で、Rough Soundとかかれているのは低くて角ばった音です。

また、今回の実験では感情にうったえかけるような、2曲も聞いてもらいました。

1曲はピアノで演奏されたポジティブな印象がするクラシック音楽、もう一曲はオペラ歌手が歌う低音のネガティブな印象のする曲です。

さあみなさん、お手元にチョコレートをご用意ください。そして、それぞれの音を聞きながら、口の中にチョコレートを含み、味わってみてください。チョコレートの味や感じ方は変わるでしょうか。

 

ちなみに多くの参加者の方はCreamy Soundとポジティブな曲を聞いていたときは、チョコレートをより甘く感じRough Soundとネガティブな曲を聞いていた時には、苦味を少しだけ強く感じたと話してくれました。また、Rough Soundとネガティブな曲を聞いた方は「聞いていられない程不快な音だったので、味わえるような状況じゃなかった...」という意見もいただきました。一方で、Creamy SoundとRough Soundで、全く味が変わらなかったという方もいました。


みなさんはどう感じましたか? 味の感じ方やどんなチョコレートが好みなのか、また音楽の好みは、国の文化差だけでなく、個人によっても異なります。従って、「この音を聞けば必ず甘さが増す」と言い切ることはできませんが、全体の傾向として甘さを増す音である、ということはできると思います。

参加者のみなさんの回答は、今後解析され、結果は論文として報告されます。日本人の味覚に与える聴覚の影響はどのような傾向があるのでしょうか?他の国とは異なるのでしょうか?解析結果を楽しみに待ちたいと思います。

また、味に与える音の影響を調べるその先に、研究者はどのような未来を想像しているのかも気になりますよね。そのあたりの話については次の記事(https://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/20190806post-869.html)に書きますので、お楽しみに♪

【最後に】
本記事を執筆するにあたり、東京大学情報理工学系研究科 准教授 鳴海拓志先生には、大変お世話になりました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
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鳴海先生、学生のみなさん、世界各国でこの実験を主導しているフェリペ氏、
With未来館オープンラボメンバー


参考文献:
(1)Reinoso Carvalho, F., Wang, Q. (J.), van Ee, R., Persoone, D. and Spence, C. (2017). "Smooth operator": Music modulates the perceived creaminess, sweetness, and bitterness of chocolate, Appetite 108, 383-390.
(2)Reinoso Carvalho, F., Wang, Q. (J.), de Causmaecker, B., Steenhaut, K., van Ee, R. and Spence, C. (2016). Tune that beer! Listening for the pitch of beer, Beverages 2, 31.  

関連リンク:
・東京大学情報理工学系研究科 廣瀬・葛岡・鳴海研究室HP:http://www.cyber.t.u-tokyo.ac.jp/ja/
・フェリペ・レイノーソ・カルバリョ氏HP:http://sonictaste.weebly.com/
・イベント告知ページ:https://www.miraikan.jst.go.jp/event/1907031024390.html