デジタル技術の進化が私たちの価値観を更新する? 【後編】常設展示「計算機と自然、計算機の自然」ツアー

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2019年11月に新しくオープンした常設展示「計算機と自然、計算機の自然(https://www.miraikan.jst.go.jp/exhibition/future/innovation/digitallynatural.html)を引き続き、科学コミュニケーターの松谷良佑がご案内します。

『現実世界と計算機の世界があわさった新しい自然とは? 【前編】常設展示「計算機と自然、計算機の自然」ツアー』(https://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/20200327post-901.html)では、展示の前半を見てきましたが、計算機と自然の境界があいまいになる世界観を感じて頂けたでしょうか。
『デジタル技術の進化が私たちの価値観を更新する? 【後編】常設展示「計算機と自然、計算機の自然」ツアー』では、さらに理解を深める手助けとなる展示が配置された鏡の林の奥へとご案内します。


「経験」と「法則」を繰り返す?

未来を考えるために、最先端の技術を知るのも重要ですが、これまで人類と技術がどのように進化してきたか過去を振り返ってみることも一つの手です。

こちらの映像展示「人類は『経験』と『法則』を繰り返す」では過去から現代、そして未来まで、7つの時代を旅する、5つストーリーをご覧いただけます。

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7つのモニターをまたいで物語が進みます

今回は人類と「計算」の歴史をみてみましょう。
(ほかに、「音楽」「画像」「通信」「移動」のストーリーがあります)
この物語の主人公は、手をかたどったキャラクター。僕らは"ごびっと"という愛称で呼んでいます。
(五本指なので5bitです...)

ステップ1
物語は狩猟採集社会から始まります。
この時代、ヒトが使えるのは自分の体と大自然だけです。
数を数えるのも指を折って、両手で10までが限界です!
限界を迎えて、次の時代へ向かいます。
(5bitなら片手でも、2の5乗で0~31まで数えられるというツッコミはなしで)

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マンモスを数えるごびっと

ステップ2
農耕社会に移ります。
この時代、経験と努力によって能力を伸ばせるようになりました。
数字を物に置き換えれば、10よりもっと多く数えられます。最初は小石を並べたりしていましたが、ヒトは経験を積んで、そろばんなどの計算の道具を生み出しました。

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そろばんをはじくごびっと

ステップ3
続いて、工業社会。
この時代、ヒトは法則を見つけることで、解決策を見つけました。
産業革命とそれに先立つ科学の発展により、ヒトは自然法則を見つけたり、ルール化することで効率的に大量生産が可能になったりしました。さまざまな仕事も機械化されました。計算の道具についても、歯車の回転で計算するというアイデアから、機械式計算機が誕生しました。機械はミスもしません。大量の計算をしてくれます。

20200312-2matsuya_4.jpg機械式計算機

ステップ4
4つ目の時代は、情報社会。半導体の登場です。
道具の主役はアナログの機械からデジタルのコンピュータに変わりました。法則によって解決策を見出そうという基本的な考え方は大きく変わりませんでした。

20200312-2matsuya_5.jpg半導体の登場

ステップ5
5つ目の時代、ここは現代です。
人工知能というアイデアが生まれます。人工知能にデータを与え学習させます。すると、法則は分からなくても答えが導き出せるようになりました。つまり、人工知能を使って経験値をつむ時代になりました。
こういったタイプの人工知能は統計的機械学習と呼ばれます。

20200312-2matsuya_6.jpg人工知能にデータを与えるごびっと

ステップ6
ここからは未来の話です。
ヒトが経験を通して解決策を導き出していた時代から、ルール化や自然法則を見つけて解決策を見つけ出す時代に移っていったように。人工知能も経験から法則の時代へと移っていくでしょう。
今の統計的機械学習は、大量のデータを必要としますが、少ないデータからも学習ができるアルゴリズムの研究が進められています。こうした研究が実用化されれば、医療データのようにデータの収集が難しい分野でも最適化された人工知能が活躍するでしょう。

20200312-2matsuya_7.jpg調理用人工知能が登場?!

ステップ7
人工知能が経験をし、法則を見つけたとしても、命令するのはヒトの役目というのが前提でした。
しかし、さらに先の未来。一体どうなるのでしょうか。

20200312-2matsuya_8.jpg勝手にデータを収集して学習する人工知能

ヒトが命令をせずとも、人工知能が先回りをして、さまざまな事が解決・調和されているという世界を想像してみました。何年後か分かりませんが、「経験」と「法則」という二つの解法を繰り返した先に、こうした未来が待っているかもしれません。
そんな世界で、ごびっとはどんな風にふるまっているでしょうか。そのほか4つの分野(「音楽」「画像」「通信」「移動」)でも、それぞれの専門家と一緒に議論を重ねてストーリーを作り上げました。ぜひ、ご覧になってください。


問いを探す

計算機と自然が調和する世界観は分かったけれど、私たちの生活とどんなふうに関係するの? もしかして、そんな疑問をお持ちでしょうか。
まだ訪れていない世界の話なので、ずばりという答えはありません。ですが、最後の展示をご覧いただけるとぼんやりした疑問ももう少しはっきりとしてくるかもしれません。

最後の展示では、技術と社会・文化のかかわりについて5人の先人たちから話を聞くことができます。

そのうちの一人の話をきいてみましょう。
彼女の名前は、「飛鳥美人」。1000年以上前に古墳の壁画として描かれました。1970年代に偶然発見され、その極彩色の美しさから一躍有名になりました。

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語る壁画「飛鳥美人」

残念なことに発掘されて以降、カビなどで劣化が進んでしまいましたが、壁画の修復もすすめられていますし、博物館で再現された壁画が多くの方に鑑賞されています。映像のイラストは、関西大学の研究チームが作成した復元画像をもとにしています。

これからは、デジタル技術が今以上に活用されていくでしょう。人工知能を活用した復元技術も進んでいます。今よりもずっと、デジタルで再現された絵画や彫刻を鑑賞するという行為が当たり前になっていくのではないでしょうか。それも、本物と見分けのつかないくらい高解像度で。

その時、オリジナルの価値とはいったい何なのでしょうか。「飛鳥美人」は私たちに問いかけます。きまった答えはありません。もちろん、オリジナルの価値がなくなるという話でもありません。あなたの考えはいかがでしょう?


さていくつかの展示をご紹介しましたが、松谷の案内はここまでです!
紹介しきれていない展示がまだまだあります。
ぜひ体験をしてみて、みなさんの"問い"を見つけてください。
これからの技術との付き合い方について、考える糸口になれば幸いです。

※展示にあるQRコードからWEB解説(スマホ向け)もご覧になれます。