こんにちは!!
科学コミュニケーターの田中 健です。
今年初めて、物理学賞チームの一員として受賞者予想をすることになりました!
先日、科学コミュニケーターの陳はブログ「2014年ノーベル化学賞を予想する! 超伝導のあのお方」で、東京工業大学教授の細野秀雄先生をご紹介いたしました。
まだご覧になっていない方は、こちら←からぜひ!
実は、超伝導分野には、他にも非常に重要な発見をした方がいらっしゃるのです。
今回は、物理学賞チームからご紹介いたします。
こちらのお方!!!
東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 教授の
十倉好紀(とくら・よしのり)先生です!
私の予想するノーベル物理学賞受賞者は、この十倉先生です!
陳がブログに書いたとおり、超伝導体とは、すごく低温にすることで電気をとてもよく流すことのできる物質です。
どれくらいよく流してくれるかというと、電気抵抗がゼロ、つまり発電した電気の100%を途中で失うことなく流すことのできる優れものなのです。
超伝導体が発見されてから、できるだけ高い温度で超伝導になる物質を見つけようと、世界中で研究がされていました。そこに、大きな動きをもたらしたのが銅酸化物系の超伝導体です。それまでに見つかっていた超伝導体はマイナス250℃まで冷やす必要がありました。しかし、銅酸化物系では、より高温で超伝導となるものが次々と見つかり、現在、マイナス138℃まで温度が上がっています。
銅酸化物からなるこれらの超伝導体は「銅酸化物高温超伝導体」と呼ばれます。
十倉先生は、この銅酸化物高温超伝導体の結晶構造に、あるルールを見つけ出しました。
そのルールは十倉先生の名前にちなんで「Tokura Rule」と呼ばれ、高温超伝導体の研究者にとって一つの重要な指針となっています。
ルールに自分の名前が付くなんてかっこいい!!
では、Tokura Ruleとは一体どんなルールなのでしょうか?
銅酸化物高温超伝導体の構造には、、銅(Cu)と酸素(O)からなる平面が含まれています。
この平面は超伝導層と呼ばれ、銅酸化物高温超伝導体における電流はこの超伝導層を流れるといわれています。
そして、超伝導層の上下をサンドするように、他の金属元素や酸素原子からなる層が重なっており、これをブロック層(または絶縁層)と呼びます。
サンドイッチのパンとハムのような感じですね。
ごく簡単に図にすると、下のようなイメージです。
銅酸化物高温超伝導体における電流の正体は、超伝導層の上(つまり銅−酸素の平面上)を移動する電子です。その電子は「キャリア」という運び屋さんとの相互作用によって運ばれます。このキャリアを与えてくれるのがブロック層なのです。
また、キャリアには2種類あり、1つがプラス(+)の性質をもつ「正孔型」、もう1つがマイナス(−)の性質をもつ「電子型」です。
またまたごく簡単に図にすると、下のようなイメージです。
超伝導層の上下から与えられるキャリアの組み合わせは、+と+、+と−、−と−の3通りです。これがTokura Ruleの基本的な考え方です。
十倉先生は、世界で初めてキャリアが−と−である「電子型高温超伝導体」を発見し、そこからTokura Ruleを見つけ出した方なのです!
この発見は、それまで正孔型だけだと思われていた超伝導体分野を大きく前進させるものでした。Tokura Ruleは、それまでに発見された高温超伝導体を分類するだけでなく、新たな高温超伝導体の発見の道しるべにもなったのです。
十倉先生が執筆された電子型高温超伝導体の発見に関する論文は、1989年に科学論文誌Nature誌に掲載され、その後多くの論文に引用されました。2002年には、過去の引用数が非常に多かった論文としてトムソン・ロイター最高引用栄誉賞を受賞されています。
また、2003年には、これまでの物性物理学への功績を讃え、紫綬褒章を受賞。今年は本多記念賞を受賞されるなど、受賞歴も多数あります。もちろん、Tokura Ruleだけでなく多くの研究成果をあげられています。
今回、十倉先生を物理学賞チームからご紹介したのは、銅酸化物高温超伝導体における物理的なルールを発見した方だからなのです。
一方で、同じ超伝導分野で重要な発見をされた細野先生を化学賞チームからご紹介したのは、鉄といろいろな元素を化学的に組み合わせて新しい超伝導体を作り出した方だからです。
多くの成果と功績をあげられた十倉先生に、ぜひともノーベル賞を受賞していただき、日本の科学パワーをどんどん世界に発信していきたいですね!
さて、今年のノーベル物理学賞発表は10月7日(火)の日本時間18時45分発表です!
未来館の受賞者予想とともに、みなさまもぜひお楽しみください!!
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