「わかんないよね新型コロナ 2度目のGW、どう過ごしてる?」

ニコ生で放送! 5月4日の振り返り いろいろな立場の人と対策をするには?

みなさんこんにちは。科学コミュニケーター山本です。

地域によって緊急事態宣言やまん延防止等重点措置で自粛要請がでていたり、通常とあまり変わらなかったりしていたゴールデンウィークでしたが、みなさんいかがお過ごしでしたでしょうか。過ごし方も、過ごし方への納得感も、さまざまだったのではないでしょうか。

私はと言いますと、家にこもって新型コロナのオンライン配信をやって、出演者お2人のお話に割り込み損ねて「つまり」「あと」とだけ呟いて沈黙する、残念な仕事ぶりを発揮しておりました…。

2021年5月4日に配信した番組のまとめブログです

ここでは、それでも90分の時間内に収まらなかった内容盛りだくさんのニコニコ生放送「わかんないよね新型コロナ 2度目のGW、どう過ごしてる?」の内容をダイジェストでお伝えします。番組のコラボレーターである感染対策のプロ堀成美さん(国立国際医療研究センター)と、大学の「ホケカン」から潤間励子先生(千葉大学 総合安全衛生管理機構)、視聴者の皆さんと一緒に、社会やコミュニティー全体で対策のレベルを高めるにはどうしたらよいかを考えました。

配信の様子。潤間先生(写真右上)は本当に学生への愛が凄いのです。
※ 画面下側の番組タイトルが古いままですみません(この記事を書くまで、誰も気づいてませんでした)。

動画で見たほうが早いという方は、以下のリンクからアカウント登録不要・無料でご覧いただけます。この記事の末尾に、トピックと配信開始からの経過時間の目安がまとまっておりますので、ご関心に合わせてご利用ください。

はっきりとした答えにはたどり着きませんが、難しくも考える意義のある内容だと思います。

番組URL:https://live.nicovideo.jp/watch/lv331584002

千葉大学の状況と感染対策

学生の皆さんは、対策に関心が薄いように見えてしまったり、部活動などでのクラスターが報道されたりして、一部で悪者のように扱われているように感じます。ですが、実際には学生にもいろんな人がいて、それぞれに事情があるわけです。そんな学生が多く在籍する大学の現状を、潤間先生にホケカンの先生目線でご紹介いただきました。

※あくまでもひとつの大学の事例です。

千葉大学の状況と対策

実は潤間先生には昨年6月にもご出演いただいています。

前回のまとめブログその1:https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20200701-621.html
前回のまとめブログその2:https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20200706post-346.html

昨年春から初夏の新型コロナ第1波の頃にはオンラインで授業が行われ、学生が原則入構できない状況でした。今は、学生が構内に戻ってきていて、オンラインと対面の両方で授業が実施されています。

右の写真、学生さんの自転車がたくさん並んでいるところにご注目。
中央の写真は誰も居なかった第1波の頃の大学構内、左はコロナ禍以前でイベントができていた時期の大学祭の様子。(写真提供:潤間励子氏)

昨年は開催できなかった卒業式と入学式も、今年はできたそうです。参加できる人を最低限に抑えたり、回数を増やして1回あたりの人数を減らしたり、椅子も距離を空けて配置したり、椅子のQRコードを読んでもらうことで感染があった際の濃厚接触者を追跡できるようにしたり、とたくさんの対策の上での実施だったとのこと。

密集対策として複数用意された「卒業式」「入学式」という看板が印象的でした。確かに看板はフォトスポットなので、1ヶ所だけだと過密になりそうです。(写真提供:潤間励子氏)

日常の場面では、対面とオンラインの両方の授業があるので、学生は「大学構内からオンラインの授業に参加しなければいけない」という状況になっているそうです。電波が拾える場所取りが発生したり、晴れた日のベンチから授業に参加する学生がいたりと、新しい状況になっているとのこと。

密対策だけでなく、オンラインで発言しやすいように、という視点も盛り込まれた学生用のオンライン授業ブース。
右の写真の黒い板は、音を吸収するパネルなのだそうです。職場に欲しい。(写真提供:潤間励子氏)

これらの対策は、潤間先生が堀さんと相談しながら進めているのだそうです。堀さん曰く、千葉大学は必要な対策をスピーディに実施するところが素晴らしいとのこと。千葉大学の皆さんが羨ましいですね。

堀さんからは、「対策のために場所や設備を増やすと、その管理責任も設置者に求められることに注意が必要」というコメントもありました。言われてみれば、ここまでの写真の看板やパネル類だって、安全に設置をするのも大変だし、維持したり保管したりの手間もかかるし、といろいろな要素が裏側にありそうです。利用する立場からは「買って設置するだけだろう」と思ってしまいがちですが、運用面まで含めた現場の負担感と継続性も考えて、現実的な対策を模索することが大切ということですね。

千葉大学の学食の様子。パネルそのものも費用がかかりますが、消毒の手間が増えたり、邪魔にならないか検討したり、運用大変そう。(写真提供:潤間励子氏)

感染対策の効果

対策をしながら対面授業もやっている千葉大学ですが、実際にどのくらい感染が防げているのでしょうか。潤間先生に伺ったところ、感染者は出ているが、大学の授業での感染は今のところ確認されていないとのこと。うまく対策が機能しているところでは感染が広がりにくい、ということだと思います。対策を続けていくモチベーションが高まりますね。

もちろん、気を付けて対策をしていても「100%感染しない」とは言い切れないはずです。感染した人に「対策しなかった人」というレッテルを貼るのはよくないです。そもそも対策してなかったからって、別に犯罪というわけでもないですし。

とはいっても、やはり対策に関心の薄い人、対策どころではない人も含めて、社会全体で感染リスクを下げていきたいわけです。でないと流行が終わらないので。

というわけで、番組の後半では、いろんな立場で感染対策レベルの上げるには、というテーマについて皆さんで考えてみました。

この日の休憩コンテンツは、科学コミュニケーター竹下の趣味全開、楽器のチェロについてでした。
心の中の若き日の人格が「ヴォルフキラー」「魂柱」などの単語に反応した方は、ぜひ番組もご視聴ください。

立場や見方で変わる新型コロナとの関わり

感染と縁がなければ現実感もわきにくい

潤間先生は、大学付属病院の外来を担当する呼吸器内科医でもあります。コロナ病棟には入っていないとのことですが、新型コロナの入院患者のために呼吸器内科の病床を空ける必要があったりして、新型コロナ以外の入院患者の受け入れができずに困ることがあるそうです。
新型コロナかもしれない患者さんを診ることもある街中の開業医が、支援がなくワクチンの接種順位も後回しの状態で大変だ、という話もご紹介くださいました。

医療現場では、報道で流れるICUの状況とはまた違うご苦労もあるようです。

では、医療現場以外の方々はどうでしょうか。
感染した人も重症になった人も身の回りに居ないので、学生の中には現実感がわきにくく、その状況で感染対策を頑張るのは難しい人もいる、と潤間先生。その一方で、身近に基礎疾患のある人がいるなどの理由で、感染を怖がっている学生もいるとのことで、ただ「学生」「若者」といってもそれぞれ違うようです。

この状況は、学生に限らないのではないでしょうか。番組視聴者の皆さんに「濃厚接触者になったことがありますか?」と聞いてみました。

視聴者アンケート結果。
番組視聴者の中で、濃厚接触者になったことがあるのは1割くらいでした。

うまく接触をさけているから、という人も多いでしょうが、まだ新型コロナと直接の関わりがないだけという人も多いのではないでしょうか。私も知り合いに感染した人がいるわけではないので、どこかまだ他人事感がある気がします。

恐怖や危機感ベースのコミュニケーションは長続きしない

新型コロナとの関わり方がバラバラな中で、いろいろな立場の人たちの間で情報発信や意見交換が行われています。

そのときに気を付けた方が良いこととして、堀さんが紹介してくださったのが「恐怖喚起コミュニケーション」というキーワードでした。「感染すると大変なことになる」と恐怖感を与えることによって受け取り手に変化を促すような手法のことで、「効果が長続きしない」「怖い情報を遠ざけられてしまう」などの問題点があるとのこと。「この(コロナ禍での)1年で恐怖喚起コミュニケーションではやはりうまくいかないことが分かった」と堀さんは話します。

「気をつけてるのに何でそんな言われなきゃいけないってのはある」という視聴者コメント。
既に対策している人にも過剰なストレスになるとすると、それも問題点ですね。

確かに、ICUや海外で大変なことになっている、という類の情報を目にするようになって長いですが、日本国内の感染も第4波までしっかり来ています。さらに「これでもか、これでもか」と畳みかけても社会は変わらない気がします。

身近でない問題に現実感がわかない方に、現実感を持ってもらおうと怖い情報を伝えてもうまくいかない。とはいえ危機感を持つ方が冷静に情報を出し続けるのも難しそう。「ではどうしたらいいの」と頭を抱えたくなりますが、大変な状況の中でも努めて冷静な呼びかけを続けている方々の背景には、こういう考え方があるということですね。

コミュニケーションの対象を分けて考える(対策している人の場合)

アプローチを変えて、いろいろな立場でできそうな対策や、コミュニケーションの方法を考えてみることにしました。

まずは、番組の視聴者対象にそれぞれの感染対策を自己採点していただきました。

視聴者アンケート結果。
視聴者の対策レベルの自己採点で、最も多いのが70~99点。自己評価が低め(50点未満)の方は2割程度で少数派でした。

自己採点は自己採点なので、多数派だった高得点側の人たちにも盲点もあったりするのではないでしょうか。感染対策のプロの堀さんにそのあたりを聞いてみました。

「自己採点はあてにならんで」の視聴者コメント。その通りなので、プロにきいてみました。

検査で陽性の結果が出て「対策していたのに不思議」という人と堀さんが話していると、たいていの場合「あ、それもダメだったんですか」という反応があるそうです。
例えば、「会食」という言葉が誤解の元になっているケース。お昼間のお茶会だって、アルコール無しの食事だって、誰かと話しながらであれば感染リスクがあります。
「飛沫感染」という言葉が誤解を招いていることもあるそうです。無言でキスをしても、唾液を介した感染がありえます。
3密」という言葉が「密閉・密接・密集が揃っていなければ大丈夫」という誤解を招いていることもあるようです。「3つの密」にはそれぞれリスクがあるので、野外での(「密閉」空間だけを避けた)会話しながらの飲食にもリスクがあります。

このような誤解を防いでいく意味では、感染の事例集が堀さんのオススメということでした。ここでは事例集として、国立感染症研究所の実地疫学専門家養成コースが出しているレポートのリンクを張っておきます。「こういう誤解が生じるのか」と気づかされる、興味深い資料なのでぜひ覗いてみてください。

・一般的な会食における集団感染事例について
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9910-covid19-25.html

・いわゆる「飲み会」における集団感染事例について
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9941-covid19-26.html

・「趣味など余暇活動」における集団感染事例について
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/10005-covid19-27.html

また、対策ができている人でも、ほかの人の行動に巻き込まれることがあります。上司に誘われて断れなかったり、お客さんの協力が得られなかったり、同居家族と考え方が違ったりと、感染対策は孤軍奮闘するだけではうまくできないこともあります。ということで、あまり対策ができない方も巻き込んでいく方法を番組の最後に考えました。

コミュニケーションの対象を分けて考える(あまり対策できていない人の場合)

感染リスクの高い行動をやめられない人にも、やめたくない人にも、「やめてください」というだけではあまり効果がないことも多そうです。巻き込まれないように自衛しようとしても、例えば部下が上司に、店員が顧客に対して「指導する」というのは無理があります。

堀さんは、「お酒なし、短時間で」などの「(達成できるなら)やって良い条件」を伝える方が効果的なのでは、という考えのようです。また、誘う人に対して「相手が断れないこともあるから、企画している人は会食の延期や中止を検討してください」と要請するなど、社会全体に対してではなく、伝える相手を絞ったコミュニケーションをした方が良いのではないか、とのことでした。

潤間先生も堀さんも、「やって良い条件」を伝えることで、「そこまでしなければいけないならやめておく」という判断につながったり、「その対策を広めたい」といった反応をされたりした経験があるとのことです。具体的に「どうすれば実施できるのか」を考えて伝えるコミュニケーションには意味がありそうです。

「やめられないのであれば、せめて達成してほしい条件」を伝える場合、別途考慮しなければいけない問題が「リスクの高い行動を容認することになるのでは」という指摘です。確かに、「せめて○○」という条件付きでも、「容認された」「推奨された」と受け取ることもできます。きちんと説明がされていないと、「あいつらだけやっていいのか」という不公平感にもつながりそうです。
リスクの高い行動を既に避けることができている人の理解も得ながら、特定のターゲットに絞ってかなり丁寧に情報を伝えていかないと、逆効果にもなりかねません。読んでもらいやすく拡散力もある短文(SNSなど)では丁寧さが犠牲になりやすく、対象も絞りにくい。かといって長文は読んでもらいにくいし、対象を絞って細やかにコミュニケーションをしていくのは時間と人手が必要です。これは非常に難しい問題ではないでしょうか。

堀さんは最近、同窓生などの友人知人に対して、小さく情報提供をするという試行をされているとのこと。確かに個人的なつながりが、丁寧なコミュニケーションのしやすさにつながることもありそうです。

潤間先生の話では、千葉大学には学生発案で実施されている対策があるとのこと。対策をする人が自分で考えた方法やアイデアを活かすことは、取り組みを広めて定着させるのに効果的だという堀さんのコメントもありました。プロと相談しながら主体的に対策を作っていける千葉大学、本当に羨ましい!


以上、やはり説得力のある提案には至れませんでしたが、202154日の生配信のまとめ記事でした。

ウイルスのことも、体内で何が起こっているのかもまだまだ「わかんないよね」なのですが、みなさんで対策していく必要がある関係上、コミュニケーションの「わかんないよね」もたくさん出てきてしまいました。新型コロナに限らず、取り組みの輪を広げるためには「コツコツとした草の根活動」という結論になりがちだなあといつも悩んでいたりもしておりまして。ブログの読者、番組の視聴者のみなさんからのご意見やアイデアも、切にお待ちしております。
この番組では、配信中はニコニコ生放送のコメントで、それ以外でもsli.do(以下のリンク先で、アクセスコード「#97984」を入力してください)から質問やご意見、アイデアなど募集中です。

https://www.sli.do/

番組は毎月第3土曜日の定期配信をする予定で調整中です(終了時期未定です)。草の根活動には抵抗があるという方も、しれっと番組の宣伝(以下のURL)など、周囲の方にしていただけると嬉しいです。

https://www.miraikan.jst.go.jp/resources/COVID-19/nicovideo/

2021年5月4日配信のトピック一覧

オープニング

  • ゲストの潤間先生と"ホケカン"のご紹介(2:20

ワクチン体験談

  • ワクチンを打ってみて、いかがでしたか?(06:40
  • ホケカンの先生はワクチンを打てている?(10:50
  • 地域や大学の事情によって、ワクチンをスムーズに打てるかはさまざま(13:10
  • 新型コロナウイルスワクチン接種の48時間後から、献血が可能になります(14:00)

千葉大学の状況と感染対策は?

  • 1年前と現在の千葉大の様子を比較してみよう(16:40
  • 今年は卒業式と入学式ができました! 感染対策は?(17:55
  • 現在の対面授業は?(21:30
  • 学食での感染対策(24:00
  • 図書館での感染対策(26:30
  • 千葉大で陽性者は?(30:00
  • 授業での感染は、いまのところない(30:42
  • 千葉大の健康観察についての集計(35:10
  • 学生がワクチンを打てるようになったら、ホケカンの看護師さんが打てるようにしたい(40:05
  • 留学のために接種証明が必要になってきている(40:50
  • 部活での感染対策(41:45
  • 改めて3密のお話(45:50
  • 1密でも気を付けましょう(48:55)

視聴者アンケート

  • 濃厚接触者になったことがある?(51:50
  • 感染対策レベルを自己採点すると何点?(53:50

休憩コンテンツ

  • チェロのはなし(55:30

いろいろな立場の人と対策をするには?

  • 医療現場(コロナ病棟やそれ以外の病棟、開業医など)の状況は?(1:12:05
  • 保健所の状況は? うまく業務は回っている?(1:17:015
  • 濃厚接触者になった人も少数派。自分事として捉えるのは難しい(1:23:15
  • 恐怖を喚起するだけでは、逆効果になるかも(1:25:15
  • 「学生」と一括りにしても、人によって危機感はさまざま(1:26:50
  • 堀さんの、身近な人たちへのアクション(1:28:05
  • 感染対策の自己採点が高得点の人にも、ありがちな盲点は?(1:30:00
  • メッセージが本当の意味で伝わっていないと、対策が漏れてしまう(1:32:40
  • 自分は気をつけていても、断れなくて巻き込まれてしまうことも(1:34:50
  • 対策が取りたくても取れない事情は?(1:39:05
  • 対策が難しい人に「せめてこの対策を」というコミュニケーションについて(1:41:45
  • 学生や住民が自分自身の対策としてルールを決めていくとうまくいきやすいかも(1:42:50

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