このブログでは、先日のイベントレポートに引き続き、未来館の中にあるさまざまな研究室と一緒に行ったイベントの様子をお届けします! 今回ご紹介するのは、2024年6月8日に「ミトコンドリア生合成」プロジェクトと行ったイベント「ミトコンドリア・クエスト」です。
「ミトコンドリア生合成」プロジェクトとは?
「ミトコンドリア生合成」プロジェクトが研究しているのは、わたしたち生き物の身体をつくっている細胞の中にある「ミトコンドリア」です。ミトコンドリアは、細胞が活動するために必要なエネルギーをつくり出す、「発電所」のようなもの。このプロジェクトでは、そんな「発電所」がどんな形をしていてどのような働きをもっているのかを解明すべく、日々研究を行っています。
※ミトコンドリアや「ミトコンドリア生合成」プロジェクトの研究内容を詳しく知りたい方は、こちらのブログもご覧ください。
●もう君なしでは生きられない!ミトコンドリアと細胞の不思議な関係
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20181221post-68.html
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20190301post-66.html
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20201029post-386.html
今回行ったイベント「ミトコンドリア・クエスト」では、ミトコンドリアそのものや「ミトコンドリア生合成」プロジェクトが行っている研究について、研究代表者の遠藤斗志也さん(京都産業大学 生命科学部)から直接お話しいただきました。遠藤さんのミトコンドリア愛あふれる熱いトークのおかげもあり、会場は超満員! この熱気を感じてみたい方はぜひアーカイブ映像をご覧ください。
ミトコンドリアや生命科学と“遊べる”場所
遠藤さんのトークの裏では、さまざまな切り口からミトコンドリアや生命科学に触れられるイベントも行いました。
イベント会場に入った来館者にまず渡されたのは、ミトコンドリアに関する10問のクイズ。このクイズは、会場内にあるさまざまな体験を行うと解くことができます。体験してクイズを解き進めることで、ミトコンドリアや生命科学について楽しみながらちょっと詳しくなってもらうためのしかけです。
会場内には、ミトコンドリアや生命科学に関係する模型や装置などをたくさん置きました。たとえば細胞の三次元模型。これを見たり触ったりすると、わたしたち生き物の身体をつくっている細胞の中には何があるのかを知ることができます。
また、顕微鏡が置かれたエリアでは、プロジェクトが研究で使っている酵母(味噌や日本酒を作るときに使われている菌)の観察を行いました。そしてこの顕微鏡の隣に置かれたモニターには、電子顕微鏡で見たミトコンドリアのすがたが! 三次元模型で見たミトコンドリアとは違うすがたに驚いている方も多かったです。
ほかにも、研究者の“相棒”である実験器具を使ってみる体験も行いました。少量の液体をはかり取るマイクロピペットを使って蛍光ペンのインクを薄めてみたり、DNAやタンパク質を分ける実験で使う電気泳動の装置に青い液体を打ち込んでみたり……。慣れない操作で大変そうな方が多かったのですが、その真剣な表情は研究者さながら!
緑色のマットが敷かれたエリアは、靴を脱いで一休みできる場所。そこに置かれているチューブやビーカーをおもちゃのようにして遊んでいる親子もいました。
会場中央のテーブルでは、高校や大学で使う生物の教科書やミトコンドリアに関する論文などを自由に読めるようにしました。さまざまな体験をして気になったことがあったらここに行くといったように、教科書や論文を“相談相手”にしている方が多かったです。
会場を出るときには、「ミトコンドリアの研究者にひとこと!」という問いへの回答をふせんに書いて貼ってもらいました。「面白かったし勉強になった!」という回答が多くの方からあがっていました。
人の数だけ「〇〇したい!」がある。だからこそ、さまざまな入口を
イベントに参加してくれた方々を見ていると、「ミトコンドリアは緑じゃないんだ!」と新たな気づきを得た大人、大学の分厚い教科書を読みこんだり研究者に直接ミトコンドリアの質問をする小学生、ビーカーを積み木のようにして遊ぶ小さな子、彼/彼女を見守りながらちょっと一息ついている保護者など、このイベントへのさまざまなかかわり方が見えました。そして、参加したほとんどの方にとって、自分のやりたいことを実現できる“居場所”を、どこかに見つけることができたイベントだったと感じています。
わたしたちは一人ひとり、知っていることも興味も違います。みんながみんな「ミトコンドリア博士になりたい!」と思ってこのイベントに参加しているわけではありません。生物のことを知りたい、実験を体験したい、研究者と話したい、ちょっと一休みしたい……などなど、人の数だけ「〇〇したい!」があるはずです。そうだとすると、こういったさまざまな「〇〇したい!」を叶えられ、かつ思いもよらぬ「〇〇したい!」が生まれるような場所をつくることが、より多くの人が科学とかかわるうえで大切ではないでしょうか。実は、ミトコンドリアや生命科学に触れるだけでなく、このことを裏テーマとして念頭に置きながらこのイベントを企画していました。
さらに、こういったさまざまな「○○したい!」を受けとめられる場所づくりは、「自分も科学にかかわれるんだ!」という感覚を生むことにもつながっていくと考えています。「科学と自分のかかわりとかよくわからないし、議論とか対話とか言われると尻込みしてしまうなあ……」と感じている方でも、科学館でちょっと一休みするだけなら「まあやってみようかな!」と思えそうではないですか? そして、そこで出会ったひょんなことから、科学と関連した「〇〇したい!」が新たに生まれるかもしれません。
未来館にはみなさんの「〇〇したい!」を受けとめられるさまざまな展示やイベントなどがあります。また、私自身今後もこういった居場所づくりを意識した取り組みを進めていくつもりです。なので、まだ未来館に来たことがない方はぜひふらっと遊びに来てください。きっとあなたにとっての居場所がどこかに見つかるはずですよ!