大本命が来ましたね!今年のノーベル化学賞はフランス生まれのエマニュエル・シャルパンティエ博士と米国のジェニファー・ダウドナ博士が受賞しました。おめでとうございます!
お二人ともまだ50代。女性だけが受賞者となったのは自然科学3賞では初めてではないでしょうか?
お二人の開発した「ゲノム編集」という技術は、いまや生命科学の研究ではなくてはならない技術の1つとなっています。開発はほんの6~7年前ですが、世界中の研究室で使われています。それだけ、手軽に安く使える技術だということもできます。
狙い通りの遺伝子を操作する
遺伝子を操作する技術はこれまでにもありました。「遺伝子組み換え技術」や「遺伝子欠損(ノックアウト)マウス」といった言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。
ですが、遺伝子組み換え技術は、導入したい遺伝子を「入れる」だけ。生き物の遺伝情報は長いヒモ状の分子であるDNAに蓄えられていますが、遺伝子組み換え技術では「どこに」入れるのかをコントロールすることができません。また、「いくつ」入れるかも細胞まかせとなってしまいます。このため、もともとその生物が持っていた遺伝子の中に入り込んでしまうような恐れもありました。
また、ノックアウトマウスをつくる技術は、狙った遺伝子を欠損させる技術ですが、孫マウスの世代になって初めて可能になる、どの生物でも可能になるわけではないといった欠点がありました。
(とはいえ、いうまでもなく、生命科学を大いに進歩させた技術であることには代わりありません)
ゲノム編集技術は、狙ったとおりの遺伝子が働かなくなるようにしたり、少し変えることで機能を変えたり(目の色が黒から青になるなど)することができる技術です。特定の遺伝子が身体のなかでどのように働いているのか、といった基礎研究の分野で大いに使われています。
さらに、野菜や家畜の品種改良や医療にも応用しようという動きも起きています。こうした食品や医療への応用に関しては、慎重にすべきだという議論が起きています。
この技術に関しては以下のブログもご覧ください
2015年ノーベル生理学・医学賞を予想する③ ゲノムの編集するツールCRISPR/Cas9の開発
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/201509242015crisprcas9.html
また、使い方をめぐる議論としては以下のブログもぜひどうぞ
生まれる前の子どもの遺伝子をかえることが可能に?ゲノムを「編集」する時代へ
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20150525post-340.html
ヒト受精卵へのゲノム編集Part1 何ができる?どんな仕組み?科学者の立場から
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20160824part-1.html
ヒト受精卵へのゲノム編集Part2倫理的な課題と世界の動き
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20160912part-2-1.html
ヒト受精卵へのゲノム編集Part3 あなたはどう思う?会場からの声
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20160913part-3.html
ヒト受精卵へのゲノム編集Part4 社会としてどのように使う?ルールを考えてみた
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20161227part4.html
みなさんはどんな野菜を食べたいですか?
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20170817post-77.html
ゲノム編集食品を問うために必要なこと
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20200304post-27.html